
心のキレイな、いとこの話
ブログ書く主婦のANSYです。
今回は私のいとこの話を書く。
思い出話。
★
私は兄と妹がいて、姉はいない。
だから、私をかわいがってくれた、いとこのヒサコちゃんは、仮の姉みたいな感じだった。大好きだった。
ヒサコちゃんは私よりかなり年上で、オシャレで、ボーイフレンドが何人かいたけど、それで遊ぶようなものでもなく、少女マンガ読んで、お菓子作って、エレクトーンを弾くような、普通の女の子だった。
私をよくカフェとかオシャレなお店に連れて行ってくれて、キラキラしてた。
パステルカラーのワンピースを何着ももっていて、お姫様みたいだった。
ヒサコちゃんは、シンプルな絵の「小さな恋のものがたり」が大好きだった。
チッチとサリーの日常話。ちょっとしたジェラシーや、男の子と女の子のおしゃべり。
「かわいいよね。このマンガお気に入りなの」
と言って、ずっと読んでいた。私にもオススメしてくれたんだけど……。
しかし当時の私は、兄のおさがりの「少年ジャンプ」「少年サンデー」を、読み浸っていた。
だから、バトル!努力!根性!みたいな方に価値を置いてしまい、
ガーリーな「シンプルに愛されるわたし」という世界観が、ぜんぜん理解できなかった。
そんなわけで、チッチとサリーの、ふんわりした絵とか、日常会話が、よくわからなくて、当時子供だった私は「大人は不思議なマンガ読むんだな」くらいの認識だった。
こういう感性の違いが、ヒサコちゃんと私の「差」だったと思う。
言ってしまえば、女子としての素直さが、きちんと形成されたか、そうでないか、というもの。
少女マンガって、基本的に、やっぱり「シンプルに愛されるわたし」というのが軸になってるんですよ。いろいろ種類はあろうけど、根底はそこなんだよね。
そのお話に、きちんと共感して、素直に「こういう子、かわいいね、楽しいね」と言える感性が、恋愛とかに重要なんだと思う。
そこに、普通の男は「あ、このコいいな、ステキだな」って惹かれるわけです。
いろいろ恋愛テクニックはあろうけど、普通の男は、素直な女が好きですよ。
★
ヒサコちゃんは、優しかった。
パンケーキを焼いてくれたことがあった。ふんわりして、お日様みたいなの。
エレクトーンをサっと弾く姿はかっこよかった。
私はピアノを習わされていたが、ぜんぜん演奏できなかったので、すごいなあと感心した。
そしてヒサコちゃんは、なぜか数学が得意で、進学校に入学した。
もうパーフェクトだよね。
だからモテた。
「彼氏ができると、ママに紹介するの」言った。
えー。自由な家庭。うちは保守的なので、男女交際をオープンになんかできなかった。羨ましかった。
でもヒサコちゃんは、彼氏とすぐ別れてしまうのが謎だった。
ママに紹介できるくらい、自由な恋愛ができて、どうしてすぐ別れちゃうんだろう?
そしてだんだん私も成長し、お互い疎遠になり、気づいたらヒサコちゃんはメンタルを激しく病むようになった。
胃潰瘍を患ったり、肉体面でも厳しくなった。そして仕事に悩むようになった。
ある日、ヒサコちゃんの母親が亡くなった。
その後、何年かして、ヒサコちゃんも、若くして血管の病気で亡くなってしまった。
結婚はできなかった。
★
私はつらつらと、ヒサコちゃんの人生を考えた。そして彼女の母親についても。
母親(私にとっては伯母にあたる)は、結婚至上主義者だった気がする。
私が何かを相談したとき、叔母は「そういうの、結婚したら全部解決するわよ!」と言った。何度か言われた気がする。
え?そうなの?
しかし伯母の予言は、まったく外れ、私の場合、結婚後もトラブルとか意見の相違とか、家庭環境に悩まされるとか、いろいろであんまり解決しないんですが……。
だから、私の予想なんだけど、ヒサコちゃんが彼氏をいちいち母親に紹介して、すぐ別れちゃったのは、その母親が彼氏を選別していたんじゃないか。
娘に完璧な結婚を望むあまり、男を高望みしたんじゃないか。
という疑問が拭えない。
伯母は結婚して子供に恵まれたけど、夫婦仲は冷え切っていたと、後で知った。
伯父も早くに亡くなり、あまり恵まれた家族ではなかった。
だから、叔母は自分の人生をやり直すような、完璧な結婚願望を娘に託した、気がする。
もしヒサコちゃんが、好きな男性と適当な落としどころで結婚したら、もう少しマシな人生だったんじゃないかな。
母親を憎んででも振り切る勇気やズルさがあれば、もっと自由な精神でいられたかもしれない。
長生きもできたかもしれない。
かもしれない、とか、タラレバで人生は逆走できないけど、純粋な表情で「小さな恋のものがたり」を読んでいた、ヒサコちゃんの、あの姿を思い出すと、なんだかなあ、とうなだれる私だった。