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私の婚活思い出話その2 シャンソン(?)好きな男

ブログ書く主婦のANSYです。
しばらく私の婚活の思い出話を書きます。
10年以上前の話ではありますが、こんなこともありますよと、参考にしていただければ幸いです。


 
私は、婚活サイトで、何人かの男性とやり取りし、そのうちの一人と話が合った(気がした)。
彼は東京の近県に住む年上で、シャンソンが好きです、と書いていた。
私もフランスの音楽が好きだった時期があり、そしてそういう高尚な趣味を持つ男性なら、なんとなくうまく行く気がした。

そして(ちょっと強引に)彼と会う約束をした。
「あんまり女性とお会いしたことがないんですよねー(汗)」
みたいな返事があったので、彼はシャイなのかな?これは……イケるのでは?と、私は期待した。


 
待ち合わせは、小さなカフェだった。
彼はカジュアルスーツに、帽子を合わせ、ポケットチーフのような小物も差し色にして、オシャレだった!
わ!いいじゃん!と私はときめいた。
そこまでだった。
 
「はじめまして……」
と、つぶやくように私に言った彼の表情は……暗かった……。
 
緊張してるのかな?と、私は自分に言い聞かせた。
 
私は挨拶をし、彼の向かいに座った。
趣味も近いし、きっとうまくいく、と、私は妙な自信に後押しされ、多弁になった。
しかし彼は……あまり反応しなかった。
ずっと無表情で、うつむきがちで、だんだん雲行きが怪しくなった。

「シャンソンがお好きなんですよね?どんな歌手の曲を聴くんですか?私も実はフランスの音楽が好きで……今日はとても嬉しいです」
と言ってみた。

そうしたら彼は「僕は普通のシャンソンは知らないんです」と……。
え???
普通のシャンソンではない????
じゃあ何を聴くんだろう?

彼は小さなモバイルのようなものを取り出し、そこで音を出した。
※ここはカフェの店内です。

「僕が好きなのは、楳図かずおの歌うシャンソンです」

と、言い切った。

モバイルから小さな音で、しかしハッキリ聴こえる楳図かずおのシャンソン……は、確かに普通ではなかった。
声を高く張り上げて歌われたそれは、どこか……奇妙で……でも笑えなかった。
なぜならば、彼はそれにウットリと聴き入り、ここで何か私が変なことを言ったら、彼は怒るだろうとすぐ予想できた。

私が「楳図かずおのホラー漫画はよく読みました。歌も歌われるんですね!」
とかなんとか言った気がするが、彼はもう、私との間に壁を作っていた。

「僕は5人の女性と、婚活サイトを通じて、メール交換をしているんです」
と、唐突に言われた。
え?と私は首をかしげた。

婚活で複数の異性を掛け持ちするのは、よくある話なんだけど、それを目の前の私に申告するのは、やや失礼ではなかろうか?
私は少し不快になったが「そうですか……」としか言えなかった。
「でもあんまり会わないんですけどね」
「婚活してるのに?」
「メール交換だけでいいんです。家に帰って、誰かから出されたメールを読むのが、楽しみなんですよ」
「……それじゃあ別に婚活サイトじゃなくてもいいんじゃないですか?というか、普通のSNSでやることですよね?」
と問いてしまったら、彼は黙り込んでしまった。

そんな私たちの間に流れる、楳図かずおのシャンソン……。

でも私は、がんばればもう少しなんとかなるんじゃないか、彼を引っ張れば、うまく交際に行けるんじゃないか、と考えてしまった。

そのまま、彼と一緒に、割烹亭みたいな居酒屋に行った。
せまい店内で、下町のオヤジらしい人が、なんやかんやと話していて、そこで彼は初めてリラックスした表情になった。

「僕、人の話を聞くのが好きなんですよね」ですってよ。
私の話はぜんぜん聞いてなさそうでしたが……。

彼とはそれきりになった。
私はあれ以来返事をしなかったし、彼からも音沙汰なしになった。

あれは何だったのだろう……。

でも「婚活しているから、いつか結婚できるだろうと希望を持って、そのまま独身年数が加算されるタイプ」を、私はよく見かけるようになった。

彼もそんな感じ。
シャイで、変わった趣味だったし、女慣れしていなさそうだったけど、5人の女性と、結婚を匂わせたメール交換で、将来への希望を繋いでいたのかもしれない。


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