<読切シリーズ>私の婚活思い出話その8 サギだったかな?みたいな男
※このシリーズは、全話読み切りなので、どの話から読んでもオッケーです。
ブログ書く主婦のANSYです。
しばらく私の婚活の思い出話を書きます。
10年以上前の話ではありますが、こんなこともありますよと、参考にしていただければ幸いです。
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こうやって書き連ねると、私はたいへん「打率の良い女」と思われそうだけど、そうでもなかった。
様々な婚活サイトをめぐり、メッセージを出しまくり、なんとかいくつかの出会いにこぎつけた、そんな感じ。
合コンとか紹介もあったけど、もう三十路過ぎたら知人の紹介はアテにできない。周囲も良い条件の男性は、他人なんかに紹介しない。自分のキープにする。また、既婚者が独身男性を紹介する時も同様だった。良い条件の男性は、さらに良い条件の女性のもとへ連れていくことが多いので、アラフォーくらいで彷徨っていたような私には、自力で探すしかなかった。
たまに来る男性の紹介といえば「家賃3年滞納したクリエイター志望」とかだった。
私がその人を断ると、紹介者は散々文句を言い「あんたは理想が高いからモテないんだ」
と、捨て台詞を吐いた。そう言いつつ、彼女は会社経営者とか雑誌編集者とかと交際していたから、なんだかね……。
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いろいろあって、私は某婚活サイトで、まあまあかな、という条件の男性を見つけ、メール交換した。彼は文章を書く仕事をしていて、インテリっぽい印象だった。
会社員ではあるけど、夜勤もあったりして、仕事はなかなかキツイですねえ、みたいな話をしていた。
彼は「銀座が好きです。オシャレなお店に行きたいです」とプロフィールに書いてあった。
うんうん。こういう、銀座とか知ってる男性、ちょっとステキだなあと思った。
でも銀座で会ってみると、彼は別に、お店に詳しいわけでもなくて、ただ街を歩くだけだった……。
服装も普通で、すごいカッコイイという訳でもなく……。
私は若干肩すかしをくらった気持ちになったけど、温厚そうな印象があって、そんなに悪くないかなあと、気を持ち直した。
(当時)チョコレート専門店があり、そこのカフェを私が選んだ。
ホットチョコレートとか頼んだり、おみやげ用にアソートチョコセットを選んだりして、
私は「こういうかわいいお店、大好きなんです!女子ウケって感じなんですけど、やっぱりいいですよね!」
などとはしゃいだフリをした。いやせっかく銀座まで来たし……ここで盛り上げないと、彼も気まずくなるんじゃないかと思ったし。
そんな私を気に入ってくれたのか、彼とはなんとなく良い雰囲気になった。
優しく会話をしてくれて、一緒に歩きながら、心が温まるような気がした。
何度かお会いして、ああ、こういう「落ち着いた感じ」って大切よね!と、盛り上がった。
彼はよく笑顔になり、私に安心感を与えることができた。
良い感じ!
と、思って、当時の婚活仲間に彼との交際を話した。
「えー、いいじゃん、その人!よかったね!」
なんてほめられて、私も「本当にいい人に巡り合えたって気がする」などと、婚活卒業みないな気分になり、ルンルン(死語)していた。
そして婚活仲間が「じゃあさ、彼に名刺もらいなよ。結婚前提だったら、彼の仕事について知っておいたほうがいいよ」
とアドバイスをしてくれた。
……それもそうだな。彼は「会社員で文章を書いていて、記者のような仕事」と、説明はしてくれたものの、具体的な社名や肩書きはまだ教えてくれなかった。
私は、彼に「今度お会いする時、名刺交換ってできますか?」とメールで聞いてみた。
……そして話が暗転する。
彼は「名刺なんてどうするの?そんなものいらないよね!だって、名刺って偽造もできるんだよ。きみはそんなのを信じるの?」
という謎返事を返してきた。
私は混乱した。え?名刺くれないの?私たち結婚を意識した交際じゃなかったっけ?
偽造できるって、何?よくわからない!
あ、でも彼はもしかして、元カノとかに名刺を渡して、職場にまでストーカーされたとか?
そんな経験があるのかもしれない!
それなら名刺なんか渡したくないよね……。
などと考えをめぐらせた。そう、彼はきっと何か事情があるのかもしれない。
私はずっとその「事情」を想像した。というか、むりやり「名刺を渡せない事情を捏造して、なんとか納得しようとした」のである。
でもここで、婚活仲間は冷静だった。
「そんな人怪しいに決まってる!なんであなたに名刺を渡せないの?おかしいよ!」
と、私に忠告した。
そんな、でも、彼は温厚で紳士的で、そういう印象だったから、私には「彼がおかしな人」とは思いたくなかった。
このあたりで私も変だった。
なんか、心の中でやたら彼をかばうのだった。
そして次に会った時も「名刺は渡せないんだ」と言い切る彼だった。
私も、あんまりしつこくしたら失礼なんだろうな、とか、そんな感情に陥った。
彼は相変わらず優しくて、不器用なそぶりすらあった。
……こんな人がやましいことを考えるなんて、あり得ないよね!私は心の中で否定した。
しかし、数日後に私は素早く別れを決意することになる。
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彼からメールが届いた。その内容が……。
「こんばんは!僕たちの関係もだんだん近づいてきましたね」というような前フリ。
そこまではいい。次だ。
「今度、あなたのご実家に遊びに行きたいな!あなたのお父さん、野球好きなんですよね?僕もです。一緒にビールでも飲みながら、野球観戦したい!」
……はあ?
なぜいきなり私の実家に来るの?ていうか、お父さんと野球観戦ってなに?
私はだんだん自分の心が曇っていくのを感じた。
この妙な急展開。何?
彼はそれから何度も「あなたのご実家に行きたい」「ご家族にお会いしたい」と、繰り返しメールを送ってきた。
しかし自分の職業も住所も、具体的には私に教えてくれなかった。
私は……さすがに疑うよね、これ。
彼は名刺は渡さない、職業(会社名)も明かさない。もちろん自宅にも私を招かない。
なのに執拗に私の家に来たがるのは、もう、100%ヤバイだろ!!!
なんか犯罪の匂いも薄っすら感じて、早々に別れた。
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でも後で振り返ると、彼は不思議なくらい「言葉巧みだった」と思う。
優しい雰囲気を出して、女性(私)を安心させて、本交際寸前まで持ち込んだのは見事だとすら思う。
いやー。
婚活サギとかあるけど、こんな感じかな。
よくニュースサイトとかで、婚活サギをバカにするコメントを読むけど、実際彼らは巧妙に話をしてくる。不器用なそぶりで相手を洗脳状態に陥らせるので、危険だよ。