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ぼくだってやりたいんだ
最近の算数の授業は、習熟度に応じて4つのコースに分かれて実施しています。
私は、算数が苦手で「じっくり、ゆっくりとやりたい!」という子たちが集まったAコースの担当になりました。
普段のクラスは37人ですが、今回は15人という半分以下の人数になり、細かく声をかけることができます。「普段からこのくらいの人数の方が絶対いいよな。」と思いながら「でも、運動会での一体感は生まれにくいのかな。」とも思いました。
単元は「かけ算の筆算」。Aコースでは、かけ算に自信がない、まだ九九を覚えていないという子たちがほとんどでした。
とにかく、明るい雰囲気で学びたい
九九が苦手な子が集まったからこそ、分からないに共感し助け合いたい
そんな狙いと願いと念頭に置きながら
・九九の歌
・九九でチームバトル
・九九100マス計算タイムアタック
などをやってみました。もちろん、できない子への配慮を十分に準備した上で。
すると、良い意味で想像を裏切られました。九九チームバトルでは、楽しそうに取り組みながら友だちを助けて活躍する子が増えました。タイムアタックでは、どんどんタイムを縮めて、自信をつけています。
そして、特に感じた良さというのが
同じ境遇の子たちで一つの課題に向かうこと
です。
できないに対して、とても優しいのです。できないという経験を多くしてきたからでしょう。
話は少し飛びますが、私のクラスでは、
「学びの階段 みんなでのぼる」
をテーマにしていてます。
「自分の得意なことは、苦手な人に教えよう。それをクラスみんなができれば、きっと安心感と自分らしさが溢れる素敵なクラスになるから。」と何度も伝えています。
なので、算数のまとめの時は、算数のプロたちがいち早く問題を解いて、困っている人を見つけては教えるということをしてくれています。以前来てくれた教育実習生が「みんな本当にすごいですね。」と言ってくれたほど、教え合いをしてくれています。
話はAコースに戻ります。
普段はどちらかと言えば友だちに教えてもらっている子がいるのですが、Aコースではいち早く問題を解き終わりました。成長著しく、本当に別人のようです。
すると、
「先生、困っている人に教えてもいい?」
と声をかけてくれました。
「そうか。あの子も教えたかったんだ。」
「自分の立ち位置を考えて、行動してくれたんだな。」
「自信をつけてくれたんだな。」
と、とても嬉しく思いました。
他にも、九九が4の段から分からないという子もいるのですが、それが少しずつできるようになってきました。表情も明るくなり、私とはクラスが違うのですが廊下で会うと「九九の問題出して!」と声をかけてくれます。
この子が前向きに取り組めるようになったのは、
算数が苦手な仲間のおかげ
だと思うのです。
この子のこれまでの背景を想像してみると、
「算数が分からない。」
という一次的な問題から
「周りのみんなはできるのに、なぜぼくはできない。」
「ぼくと友達は何が違うんだ。」
という二次的な問題に進み、
「どうせぼくはだめなんだ。やっても無駄だ。」
という三次的な問題、つまりは自己否定にまで発展したように感じます。
だからこそ、九九が分からなくて自己否定にまで進んでいる子に対して
「九九を練習しよう!」と声をかけても、
「どうせぼくはだめなんだ」と思っていたら、そりゃできないなって思います。アプローチするポイントも方法もズレてますから。
ここを間違えちゃいけないと本当に思いました。私は、算数が苦手な子に一緒に問題を解くこと、ポイントを伝えてそれを技能化することしか考えてなかったように思います。
これは、高学年になればなるほど深刻化すると感じています。
この子は、算数が苦手な仲間がいるからこそ、
「自分はだめじゃないのかもしれない。」
「ぼくだけじゃない。みんな同じなんだ。」
「なら、やってみようかな。」
という一連の過程があったように思います。もちろん想像なのですが。
なので、算数が苦手で自己否定まで進んでいる子に対して、
「計算を練習しよう!」は地獄の言葉
なのだと、今までの自分を猛省しました。
これからは
「だめなんかじゃない。きっとできるようになる。」
「得意や苦手があるけど、みんな同じだよ。」
「先生も苦手だよ。今でも苦手なことばがりだよ。」
無責任かもしれないけれど、このような言葉かけは忘れずにかけていきたいです。
そして、
一緒に進む仲間をつくる
ということ、そこで心理的安全性が確保された上で、算数の話ができるのかなと思いました。
「苦手なことがあるのは、みんな同じだよ。」
「置いてかないよ。」
という姿勢と関係性を教師だけでなく子ども同士で積み重ねていきたいです。
とても勉強になりました。算数を習熟度別のコースに分けて本当に良かったです。