月刊アルバムレビュー 2022年2月
①Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe In You
Big Thiefの新作は年間ベストには余裕で入りそう。Neil Youngのような緊張感のあるフォークやJoni Mitchellの優しくも独創性のあるフォークとオルタナ、ベッドルームなどの要素をコロコロと入れ替えながら展開し、2枚組という大作ながらも親しみやすいアルバムになっている。”Simulation Swarm”を絶賛する声を多々見かけて、自分も大好きだが”No Reason”の暖かなメロディやコーラスワーク、フルートも素晴らしいと思う。
②Holodram / Holodrum
EPとはいえこれの話題があまりなかったのが意外だった。1月のデビュー作で話題になったばかりのYard ActやDrahlaのメンバーも在籍してるので現行ポストパンク好きは必聴だし、80’sディスコ、Talking Heads(Tom Tom Clubも)らへんの雰囲気もあって踊り出したくなる楽曲ばかり。
③SPINN / Outside of the Blue
リヴァプールのギターポップバンドの2nd。「これぞギターポップ」と言わんばかりの王道キラキラ・アルペジオな切なくも爽やかな楽曲が並ぶ。リアルに若い青春バンドが出てきてしまってはおっさんたちの擬似青春バンドは立つ瀬がないな。
④Partner Look / By the Book
ジャケが全く聴く気が起きないデザインで残念。
中身はいかにもTrouble in Mind RecordsなLo-fiひねくれポップ。遊び心溢れるフレーズやアレンジが聴いてて楽しいし、かと思えばしっかりギターポップな曲もあったりでインディ好きのニーズに応える姿勢に好感が持てる。
⑤Los Bitchos / Let the Festivities Begin!
Khruangbinの登場以来すっかり市民権を得た多(無)国籍グルーヴ。Los Bitchosはロンドンのバンドだが、トルコや南米、アジアの音楽をごちゃ混ぜにしてグルーヴィに仕上げた楽曲で注目され、これが待望のデビューアルバム。強めの酒とエスニックなつまみで聴きたいアルバム。
(どうでもいいけどキーボードの人めっちゃ美人)
⑥Methyl Ethel / Are You Haunted?
4ADからFUTURE CLASSICへ移籍後第一弾となる4thアルバム。特徴的なハイトーンボイスでニューウェーブ、ポストパンク、モダンソウルが色濃い彼らの音楽にはいつも上品な印象を持つ。リードトラックである”Proof”ではStella Donnellyをフィーチャリング。意外な組み合わせと思ったがフロントマンJake Webbの別バンドでギタリストだった過去があるらしい。知らなかった。
⑦Modern Studies / We Are There
スコットランドのチェンバーポップバンド。哀愁のあるメロディとそれに拍車をかける男女ツインボーカルの響き、Still Cornersにも通ずるような荒野感のあるサイケ・フォークなアルバム。
⑧caroline / caroline
ロンドンの8人組即興音楽集団デビューアルバム。何か圧倒的なパワーを持った作品。ミニマルだけど壮大、複雑だけど優しいフォーク〜ポストロック。
⑨Buzzard Buzzard Buzzard / Backhand Deals
ラズベリーズやパイロットなどのパワーポップを正統に継承するバンドが現れたな、と思わず安堵してしまったOP曲”New Age Millennial Magic”を筆頭に突き抜けたボーカル、クラシカルで華やかなコーラスワーク、多幸感のあるギターリフやメロディが70’sロック好きの琴線を震わすこと間違いなしなアルバム。
⑩Duquette Johnston / The Social Animals
シンプルながら深みのあるUSオルタナサウンドに、そっと心に寄り添ってくれるような(こういう表現は好きじゃないけど実際こういう気分になったから仕方ない)繊細で丁寧なメロディライン。声も渋くて好き。
⑪Bakar / Nobody's Home
Apple MusicでALTERNATIVEと表示されていて、いや絶対HIP HOPでしょ、と思って聴きながら、やはりオルタナティブだなと思った。HIP HOPとオルタナティブどちらにとってもオルタナティブでジャンルレスなサウンド。
⑫Spoon / Lucifer On The Sofa
思わずニヤニヤしてしまう最高のロックンロール。20年以上ものキャリアの貫禄とともに、それを凌駕する瑞々しさすら感じるかっこよさに特化したアルバム。
⑬NewDad / Banshee
アイルランド発シューゲイザー/ドリームポップバンドの新作EP。王道シューゲイザーの文脈に忠実なサウンドにアートワーク。本作が2枚目のEPで実力も知名度も右肩上がりな彼ら。今からフルアルバムが楽しみ。
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