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月刊アルバムレビュー 2022年4月号

①Wet Leg / Wet Leg

昨年から世界的に注目されてきたUKワイト島出身のロックバンドWet Leg待望のデビューアルバム。その期待値の高さを裏切ることのない傑作。普遍的なロックンロールだけど初めて聴くような感覚になるのは彼女たちの歌い方やサウンドがいい意味で斜に構えた感じがするからだろうか。(ジャケットはちょっと微妙。)来年の来日公演が待ち遠しい。

②Melody's Echo Chamber / Emotional Eternal

フランスのドリーミーサイケデリック・ポップ・プロジェクトの3rdアルバム。サイケ/アート色の強かった前作をマイルドにして1stの頃のドリームポップが戻ってきた感じ。しかしところどころ土着的フォーキーな楽曲が出てくるなど新境地な感じも見られる。

③Fontaines D.C. / Skinty Fia

今やアイルランドを代表するポストパンクバンドの3rdだが、ちゃんと聴くのは今作が初めて。"Jackie Down The Line"はもはや何回聴いたか分からない。ボーカルはもちろんだけど精神性とかがThe Smithsに1番近いバンドな気がしている。

④The Linda Lindas / Growing Up

LAの図書館でのパフォーマンスがSNSでバズり名門エピタフからデビューアルバムをリリースしたメンバーのほとんどがローティーンのガールズパンクバンド。てっきりパンク一辺倒なアルバムになると思っていたのだが、ギターポップやボッサ調などガールズポップ好きを喜ばせるようなナンバーが散りばめられていて思わずときめいた。ラモーンズ風の王道パンクももちろん良い。

⑤Tomberlin / i don't know who needs to hear this…

Big Thiefも輩出したインディフォークの名門Saddle Creekの才媛Tomberlinの2nd。デビュー作ではアコギの弾き語りが中心だったが今作ではバンドサウンドがメイン。アルバムタイトルから察するにかなり内向的な雰囲気が漂うが、バンドアンサンブルのスケール感やそれにつられてか力強い彼女の歌声から希望を見出せそうな感じもある。

⑥Predawn / The Gaze

リリースを重ねるごとに開かれた音楽になっていくPredawn。思えば私が女性SSWを聴くようになった発端は彼女の音楽にあるのかもしれない、と10年前の新代田FEVERに思いを馳せる。初期のDIYアコースティックなサウンドも好きだが、前述のTomberlin同様、バンドで演奏されることによる説得力や開放感といったものが実は今の時代が求めているものなのではないかという気がしている。出産と育児で活動休止するそうだが、またこの音の続きが聴けることを楽しみにしている。

⑦Night Palace / Diving Rings

NYの妖艶インディポップバンドのデビュー作。ドリーミーな歌声にシンセやストリングスも効果的に使用した雰囲気が良い。後半にかけてのアンビエント・フォークな感じの曲たちもオススメ。

⑧Noon Garden / Beulah Spa

このジャケに期待した通りの不健康エキゾチック・サイケなデビューアルバム。アフログルーヴ、ディスコ、サイケ、エキゾの要素が前面に押し出され、坂本慎太郎にも影響を受けているというワールドワイド・サウンドはサイケ・辺境グルーヴ好きなら必聴。

⑨Toro y Moi / MAHAL

60~70年代サイケへの強い愛と現代R&Bを融合させたToro y Moiの新作。ヴィンテージな音像、アナログシンセっぽいフレーズの多幸感が堪らん。エリオット・スミスばりのメロディメイカーっぷりも発揮しつつ遊び心満載なアルバム構成はベテランの余裕を感じる。

⑩My Idea / CRY MFER

私の中だけかもしれないが昨年あたりからインディシーンの中で頭角を現しているLily Konigsbergと、こちらも昨年作に大ハマりしたWater From Your EyesのNate Amosによるプロジェクトのデビュー作。基本エレクトロニックでたまにサンシャインポップを入れ込むWater From Your Eyesの雰囲気と奔放だが確実にポップなメロディを紡ぐLily Konigsbergの化学反応。

⑪Jeanines / Don't Wait for a Sign

バーズからパステルズなどジャングリー・ギターポップやネオアコ好きには間違いなしなサウンド。13曲をたった20分で一気に駆け抜ける閃光のローファイギターポップ。

⑫Kate Bollinger / Look at it in the light

またEPかよ!という文句も聴いてしまえば溜飲が下がる、どころか上機嫌。またさらにメロウさを上げ、サイケ度も上がった珠玉の6曲でございました。でもいい加減フルアルバム出してほしい。とんでもないものが出来そう。

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