優良顧客をCPM分析して利益率を改善
CPM分析は、ECサイトの購入状況、クリニックの診察状況、人材マッチングサイトの求人/求職者の利用状況などを確認、分析するための顧客分析の手法のことです。
事業戦略で「新規顧客の獲得には、既存顧客の3~5倍以上のコストがかかる」と言われるように、新規顧客を獲得した後の継続的な利用とLTV向上を考えるうえで、重要な概念であり対策を行う企業も増えています。
ロイヤル(優良)顧客の重要性
あらゆる事業において、発展していくためにはロイヤル(優良)顧客を見つけて個別の対応を事業戦略に組み込むことは、LTV最大化や事業存続のためには不可欠でしょう。
このロイヤル顧客の定義があるとすれば、その企業やブランドの熱狂的なファンで信頼を寄せている、継続的な購入、課金などの利用をしてくれる顧客のことです。
全体売上への貢献度が高く、他の顧客層と比較して顧客単価、購入回数が多い顧客を指します。
CRM分析に取り組んだ結果の改善例
例えば、ある事業者でCPM分析に取り組んで重要指標が改善した数値感のイメージはこちらです。
「売上」「購入数」はともに落ちているものの、「顧客単価」が伸びており、全体的な利益率は改善されています。
これは、新規顧客の獲得に回していた広告費とスタッフの稼働時間分を、「優良客」の購入後相談に費やす方向にシフトした結果です。
もちろん新規顧客の獲得強化と両立できれば良いのですが、リソースが限られている場合は優先度を付ける必要があり、このようにCRM分析によって「優良客」を見極めてその顧客群だけに集中した結果、業績が改善されたという結果です。
CPM分析の前段の考え
CPM分析を考えるうえで、関連する前段の法則と分析手法も記載します。
・パレートの法則
ロイヤル顧客の重要性を考えるうえで、「パレートの法則」を意識することも重要です。これもどのビジネスや事業にも当てはまる法則ですが、「8割の成果は、特定の2割が生み出している」ということで、「上位約20%の優良顧客が売上の約80%を占める」と言い換えることができます。実際に程度の差はあるものの多くの事業でこれは当てはまっており、頻繁にサービスを利用している優良顧客を重点的に継続フォローすることに時間を使うほうが、生産性も良く最終的な利益も残りやすくなります。
・RFM分析
RFM分析では、顧客の購買行動を以下の3つの基準で判断します。
Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)
顧客ごとにこのような記録を付けて、そのデータを元に「新規客」「優良客」「休眠顧客」などに分類します。
CPM分析との違いは短期的か長期的かであり、シンプルに上記の3つに分けて対策していく場合に、それぞれ異なる施策を行っていくことで、一律で行うよりもROASなどの費用対効果が良くなります。
しかしRFM分析だけでは、常に入れ替わる顧客の情報を管理することに限界が出てくるので、長期的に「顧客情報が変わった」「長期間離れていたが、再度復帰したので新規客とは分けて管理したい」などの場合にCPM分析が用いられます。
CPM分析のセグメント分類
CPM分析は「やずや」が考案した方式が有名で、セグメント分類の数はRFMよりも多くなっています。
ここまでは、「最終利用日からあまり時間が経っていない顧客」の分類でしたが、逆に長く利用していない(=離脱)の分類ステージも用意します。
これによって10セグメントに分類された顧客層が、どのような割合で推移しているかを見極めることがCPM分析では大事になります。
例えば、現役の層が厚くなっているのであれば、利用者/利用回数が増えて発展の方向に進んでいるといえますが、離脱層が増加していたり優良離脱客が増えたりしている場合はてこ入れが必要です。
CPM顧客別集計表の作成
CPM分析を行おうとしてもノウハウや過去の経験がないと、実現どころか何をすれば良いかも分からないかもしれません。利用ツールで分けると例えば次の3つが考えられます。
1.Excelで手動作成
一番簡単な方法としては、Excelで顧客×月別に利用記録や支払額を記録する方法です。分類する際は「HubSpot」でメールアドレスとやり取りの記録を元に顧客ステージを分類して、それを元にExcelなどの形式にまとめます。在籍日数や利用金額なども記入します。
これなら事務作業として誰でもできる初心者向きの方法ではありますが、毎回の更新が必要なことと顧客数が膨大に増えた場合にある程度まとまった状態で数式など使ってExcelを加工するにしても稼働時間も膨大になってしまいます。また、どうしても入力ミスが起きてしまうこともあるかもしれません。
2.市販ツールで連携
Excelの限界をカバーして管理しやすくでいるツールとして、ベンダーが開発して提供している市販の連携ツールがあります。
どれが良いかは業種、目的、要望によって千差万別ですが、いくつか記載します。
■Clinic Board:クリニック/診療所の経営指標を瞬時に定量化
■Simplex:通販・EC向けのCRMツール
この他にもたくさんあり、Google、Amazon、Shopifyなど主要なツール間で連携するものあるので、Java Scriptなどのコードを使わなくても扱えるものもあります。
しかし、CPM分析で上述した10ステージの顧客分類ができなかったり、見たいグラフや表がそのツールに搭載されていない場合は、別で用意する必要があります。
導入する場合は、事前に機能や設定内容などを入念に確認する必要があるでしょう。
特にセグメントの分類は、定義自体も複雑であったり、製品によって境界の日数を変えたほうが良いのですが、これらを柔軟に対応しているツールは少ないようです。
「商品が複数あって、別々に境界値を設定したい」「分類方法などカスタマイズ要件が複数ある」という場合は、BIツールのTableau、Power BIなどを使って設定に応じたグラフや表を作る必要があります。
3.BIツールTableauでオリジナル作成
個別の設定を細かく施して、オリジナルのダッシュボードやパラメーターの設定を反映できるのがBIツールです。ここではTableauに絞って解説します。
まず、顧客別の利用記録(購入データ、診察データなど)を用意しますが、月ごとの売上やセグメント別の人数と利用額など複数のデータを表示したい時に、社内でそれまで使っていたデータベース(例:Big Query、AWS)のデータだけでは図表に可視化できない場合もあります。
例えば、顧客の利用記録を使って利用していない月も顧客セグメントのどれか(例:優良現役)に分類したくても分類されません。
つまり、カウントされるのが「利用日」ごとであって、それ以外はカウントされない=顧客ステージの分類を記録できない、ということが起きます。
そこでデータソースの用意のための下準備が必要になってきます。Tableauの場合は手動で調整する代わりに「Tableau Prep」というツールで加工してピポット機能や除外、追加などが行えます。これによって顧客データを引き伸ばしたり、結合したりすることができます。詳しくはこちら。
このようなデータ整理の下準備を行えば、望みどおりのグラフや表を作成することができます
前提としてTableauやBIツールは、扱えるようになるために数年の訓練期間が必要ですが、他にもフィルタがうまく適用されないことや、設定上一筋縄ではできないことがあります。その場合は、BIツールの熟練者に頼むか提供会社のカスタマーサポートに聞いてみることをお勧めします。
まとめ
このようにCPM分析は事業の優良顧客を特定して、LTV(顧客生涯価値)や利益率を改善させるための有力な分析手法で、分析するためにいくつかの方法があります。
顧客をセグメント化して、それぞれの人数や利用金額を把握することで、「誰が優良客か」「どのような対応をすれば良いか」が見えてきます。
そうすることで、企業は最も利益をもたらす顧客群にリソースを集中させることができて、利益改善に繋がります。また、CPM分析をさらに有効活用し続けることで、顧客満足度とLTVの向上が図れます。
CPM分析は、製品やサービスを持つ事業者のリピート戦略のための重要な分析手法なので、本記事が参考になれば幸いです。