"DIE HAUT"の事。
ドイツはベルリンで結成されたバンドDie Hautは、映像作家であるChristoph Dreherを核としたプロジェクトとして始まり、Remo Park、Martin Peter、Rainer Berson、Thomas Wydlerを加えた5人組として1980年に結成。バンド名は、イタリアの作家であるクルツィオ・マラパルテの小説「皮」から。結成後しばらくは前衛音楽のセッションを行い、1982年に自主カセット「DIE HAUT」、同年のミニ・アルバム「Schnelles Leben」でデビューします。初期は、何曲かヴォーカル入りの曲があるものの、基本的には実験的なインストゥルメンタルが中心でした。映像作家であるというバックボーンがあってか、陰影のあるドイツ流のフィルム・ノワールのサウンドトラックという趣の渋いサウンドで、最後までその路線は貫きました。1982年にレコーディングされ、1983年にリリースされた本格的なデビュー・アルバム「Burnin'The Ice」は、Nick Caveがヴォーカリストとして4曲にフィーチャーされています。このコラボレーションに至った経緯は不明ですが、ちょうど同じ頃にBirthday Partyが内部分裂による解散に至ったのを考えると、Nickが放浪の末に出会ったのかも知れません。
このアルバムをリリースした直後にバンドは活動休止状態になり、Thomasは1985年からNick Cave & The Bad Seedsに加入し、長らく在籍しています。元々映像作家として活動していたChristophは、その間に、拠点をドイツに移したNick Cave & The Band SeedsのPVの監督などをしており、その時に何らかのインスピレーションを受けたのではと想像され、5年後の1988年にChristophと、Bad Seedsと兼任のThomasを中心に活動を再開し、再び Nickとのコラボも実現、アルバム「Headless Body in Topless Bar」をリリースします。この作品のヴォーカル・トラックには、Nickはもちろん、Mick Harvey、Kid Congo Powers、Anita LaneというNick Cave & The Bad Seedsのメンバーや人脈が参加しており、彼がバンドの活動再開に一役買ったのは明白でしょう。
1989年の「Die Hard」ではArto Lindsayがヴォーカルで参加、1992年の「Head On」と翌年のライヴ・アルバム「Sweat」からは完全にヴォーカリストとのコラボレーション・プロジェクトとなり、Nickに加え、Kid Congo Powers、Anita Lane、Lydia LunchやBlixa Bargeldと、Nick人脈が揃い、Kim Gordon(Sonic Youth)、Alan Vega(Suicide)、Jeffrey Lee Pierce(Gun Club)、Debbie Harry(Blondie)までが参加しています。
1997年のアルバム「Spring」でレコーディング活動を終了し、翌年のリミックス・アルバム「Springer」を最後にバンド活動を終了しました。バンド解散後、Christoph Dreherは映像作家として活動、その他のメンバーは、ソロや、Einstürzende Neubautenへ加入するなどしています。常に映像感覚のある骨太で重厚感のあるハードボイルド映画のサウンドトラックの様なクールなサウンドを作り続け、ルックスも非常にハードボイルドな、強面でカッコいいバンドでした。インストゥルメンタルもヴォーカル入りも非常にイケてます。
今回は、彼らの活動再開1枚目のアルバム「Headless Body in Topless Bar」から、敢えてインストゥルメンタル、DJ活動時にはOP曲に幾度となく使用していた思い出深いこの曲を。
"Wheels Over Me" / Die Haut
#忘れられちゃったっぽい名曲