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ライブレポート:1月29日(月)西川口ハーツ

「時間の速さは一定じゃない」って、聞いたことありますか? それはアインシュタインの相対性理論で有名な話。たとえば宇宙船の中では時間の流れが遅くなる。じゃあ、その日のAnti-Trenchライブはスローモーションのように時間が流れていた、なんて言ったら信じてもらえます…?

2018年1月29日(月)西川口ハーツ、groundbreaker presents 「加速する世界」。Anti-Trenchの出番はこのイベントのトリ。まずステージに上がった熊谷がギターソロを弾き始めると、会場の空気がフッと変わった。さっきまでおしゃべりをしていた人たちが顔をあげる。

やがてくじらが登場したときには、何がはじまるか、そこにいるみんなが耳をすましていた。ステージの一番前、くじらはまっすぐに立ってフロアを見渡し、それから静かに手話でパフォーマンスを始める。タイトルは『穴のあいた水差し』。

続いてライブで定番の『ラブレター』。マイクには深いリバーブがかかって、しんとしたフロアにリップノイズさえはっきりと響く。いつもはパワフルでロックなアレンジが多いけれど、この日はミドルテンポでゆったりとした調子だ。深くゆっくりと揺れる、風のない日の海のようなギター。

ライブ後にくじらは「今日は、熊谷にゆだねようと思ってました」と話してくれたのだけど、あとで思い返してもそれがよくわかる。ふたりの信頼感がこちらにも伝わってくるようなパフォーマンスだった。


「この中にひとりいたらいいな、というそんなあなたのために書きました」

「でもそのたったひとりに会うために朗読を続けています」

そんなMCを挟んで『これ以上願わなくてもいいように』がはじまる。比較的新しい作品だ。

熊谷のギターはいよいよ深みを増して、言葉を包み込むように響く。時間が引き伸ばされて行くような感覚になる。それはただ1秒でも長く聴いていたいという、こちらの願望の表れかもしれないのだけど。詩の行と行、フレーズとフレーズの間にいくつもの物語があるのを感じる。朗読の途中でくじらがテキストの紙を手離す。紙が、まるでスローモーションのようにゆっくりと床に落ちていくように見えた。

ふたりが長い長いお辞儀をして、ライブが終わる。ステージの照明が落ち、楽器やマイクを置いて、いつものくじらと熊谷に戻っていく。

この日のくじらはけして体調が良くなかったのだけど、それを全く感じさせないどころか新しい魅力をみせてくれた。それこそAnti-Trenchというユニットの魔法にほかのならないのだろう。そう、時間の法則さえ変えてしまうほどの。

Anti-Trench 【今後のライブ情報】
■2月17日(土)  胎動 Poetry Lab0. vol.11
開場:17時半 / 会場:西荻窪ALOHA LOCO CAFE
■2月25日(日)  O More Step (ex One More Step)
開場:15時 / 会場:横浜Grassroots

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