「数十年歩き続けた道で事故に遭う」とは
今日、同じ職場の高齢の人が交通事故に遭った。幸い大ごとにはならなかったが。
出勤途中、駅を出て交差点の横断歩道を渡っていた時に、歩行者が渡りきる前に曲がってきたトラックと接触して転倒したとのこと。
その様子を数メートル後ろから目撃したらしい別の同僚が教えてくれた。
朝の道で気が急いたのだろうが、なぜ高齢者が渡りきるまで待てなかったのか。
そう責めたくなる事故であるが、一応トラックの運転手はきちんと救急車を呼び、誠意ある対応をしてくれているようなのでよかった。
その人も一旦は救急車で運ばれたものの、昼頃に一度職場に顔を出して、手元にある仕事の資料を上司に手渡し、「もう初めてのことで、痛いとかよりもびっくりしたわ。擦り傷くらいで全然平気なんやけど、今日はこのあとも休みもらいますわ」と言って帰っていった。
(数分後、一度フロアに戻ってきて「そういえば、お弁当どうしたか記憶にないんやわ」と言っていたのに対し、先述の同僚が「あ、言い忘れてましたすみません、私拾ったので給湯室の冷蔵庫に入れました!」と立ち上がった。その人は「助かったわぁ。でも中身はもうひっくりかえっとるやろなぁ」と再び階段を下りていった。トラックに巻き込まれかけたというのに、妙に和やかな1幕であった)
昼休みにその同僚から話を聞いたら、どうやら接触の瞬間、その人が「仕事の資料が入った手提げ袋」を胸に抱えて庇ったために、かえってバランスを崩したんじゃないか、とのことだった。
なんというプロの鑑……いや、どう考えても命のほうが大事だが。
その人は定年を迎えて以降なお勤めて久しく、もうすぐ本当の退職予定の日が来るのだが、そんな時に数十年歩いてきた通勤路で事故に遭うとは、どんな気持ちがするものなんだろうか。
ご本人は至って気丈に振る舞っていたが、実際はものすごくショックが大きかったりはしないだろうかと少々心配である。
いやとにかく、「命は本当に戻ってこないものだ」ということを実感するような出来事が先週からあちこちで聞こえてくるものだから、ひやっとした。
(画像はたまに人間入ってそうな実家猫・麻呂)