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【サブスクで聴くGaita Zuliana:vol.6】Luis Fernando Borjas & D'Total Zulianidad『Una Misma Historia』(2021)

D'Total Zulianidadは2012年に結成されたガイタのグループ。比較的新興のグループではあるが、メンバーはCardenales del ÉxitoやGran Coquivacoa、Maracaibo 15等の伝統あるグループに在籍経験のあるミュージシャン達で構成されている。

彼らは2019年頃からサブスクでの配信を始めるようになったが、リリースされたシングルがいずれも良曲であり、(私の中で)アルバムへの期待が高まっていた。特に女性ボーカリストMarisela Rubioをフィーチャリングした「No necesito saber」(2019)は後世に語り継がれるべき名曲であろう。

そんな期待の中で2021年5月にリリースされた本作は、GuacoのLuis Fernando Borjasをメインボーカルに迎えた、非常に意欲的かつソフィスティケイテッドなアルバムである。

一般的にガイタというのは土着的な伝統音楽である。近年リリースされるグループのアルバムであっても、伝統的なアッパー系やマイナー系の楽曲が大半なことが多い。様式美というやつである。
しかし本作はそうしたガイタにありがちな楽曲が無く、たゆたうようなミドルテンポの楽曲が並んでいる。Vol.1で紹介したGuaco『Sin Peligro de Extinción』(2018)もそうだったが、こうした既存の様式美を打ち破るアルバムの登場により、ガイタのフロンティアはますます拡大している印象だ。

『Una Misma Historia』=「One Same Story」というアルバムタイトルが示すように、アルバム全体での統一感が強いため、どの楽曲を紹介しても良いのだが、ひとまずはビデオの制作されている4曲目「Te Vas」をお聴きいただきたい。

アルバムの最後にはシングル「Solo Quiero Eso feat. Guaco」のリマスタリング版も収録。唯一と言っていいアップテンポの楽曲だが、それも一般的なガイタの尺度から言えば存分にソフィスティケイテッドである。

今作は間違いなく2021年のガイタ界における最優秀アルバムの1つであろう(もともとの競り合う母数が少ないという問題はさておき…)。
D'Total Zulianidadの今後の活動にますます目が離せない。

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