GAITAS 2022 ⚡
昨年に引き続き、2022年リリースの音源のみでGaitaのプレイリストを作成した(Apple Musicはこちら)。
自分のDigスキル向上もあり、今年はプレイリストに60曲以上が収録された。全曲は難しいが、とりあえず特筆すべき30曲ぐらいにコメントをつけて、2022年の締めくくりとしたい。
Jorge Luis Chacin - La Voy a Tocar a Pie
ここ数年、クリスマス時期にガイタ動画のYouTubeアップが慣例になっていた元GuacoのJorge Luis Chacinが、満を持してリリースしたガイタ・アルバム『Alegria』より。アルバムの内容はスタンダード曲のカバー集だが、流石はChacinでクオリティに安心感あり。本曲はVHGが2008年に発表した大ヒット曲のカバー。
Gaiteando con Nano - En San Juan de Dios
アメリカはテキサス州を拠点とする、ガイタでは珍しい2人組ユニットによるTamborera作品。Nano Silvaが曲作り、Ale Silvaがボーカルを担当しており、恐らく兄弟と思われる。ソフィスティケイテッドなTamboreraにはまだまだ可能性がある。
Los Chiquinquireños - Rosario de Amores
1998年にレコードデビューしたLos Chiquinquireñosは、商業音楽として発展したガイタの世界においては特異な、チキンキラの信仰を広めることだけを目的とする「制度的」グループである。故に彼らの本分は厳かな楽曲なのだが、私は軽めの曲が好きなので……PVはないけどこの曲をチョイス。
Alitasia - Los 5 Negros
こちらも1998年に結成し、今年24年目を迎えたAlitasiaの最新EPより。本曲はカバーで、Gaiteros del Viejo Victorが1979年に発表したヒット曲をAlitasia流にアレンジしている。
Jorge Polanco & Jerry Sánchez - Mix Jerry Sánchez
Huáscar Barradas率いるMaracaiboのメンバーとしても知られるクアトロ奏者:Jorge Polancoによるアルバム『Mi Cuatro Gaitero』より。各曲にガイタ界のレジェンドを招き、彼らの代表曲をクアトロと歌(と最低限の楽器)のみで聴かせている。私はBirimbaoが好きなので、ここではJerry Sánchezのメドレーをチョイス。
Rafael "Pollo" Brito y Astolfo Daniel Romero - La Parranda del Parroquiano
押しも押されもせぬ人気シンガー:Rafael "Pollo" Britoと、ガイタ界の偉人:Astolfo Romeroの息子であるAstolfo Daniel Romeroがタッグを組んだメドレー楽曲。その死から22年を経てなお、ベネズエラ人のEl Parroquiano(Astolfo Romeroの愛称)信仰は揺るぎなく、毎年多数の関連動画がリリースされるが、やはり息子自らが出てくるのは一味違う感じがする。
Gaiteritos de Lucía - Gaita Mía
ズリア州マラカイボにある18の教区の1つ:Santa Lucíaの子ども達によるキッズ・ユースグループであり、今年で創立17年目を迎えるGaiteritos de Lucíaによる新譜。ガイタと子供の声の愛称の良さは言わずもがな。
German Avila Jr. y Rafael "Pollo" Brito - La Arruchaita
1曲挟んで再登場のRafael "Pollo" Britoをボーカルに迎えた、German Avila Jr.プロデュースの新曲。昨年、総勢150人参加の大作を作ったGerman Avila Jr.だが、本作は最低限の人数でコンパクトながら意欲的な作品を仕上げている。
Añoranza Gaitera - Paraguaná
2000年に結成されたグループ、Añoranza Gaiteraの新曲。彼らはベネズエラ北部のFalcón州Punto Fijoを本拠地としており、ズリア州が本場のガイタにおいて「ファルコニア」であることを大切にしているグループである。
Team Gaitero - Venezolanos en Houston
アメリカはテキサス州ヒューストンで活動するTeam Gaiteroの新曲。「Onda Gaitera」の活動でも知られるJavier Agostiniと、「La Típica Gaita Vieja」を率いていたJaime Romeroによる共作曲となっている。
LAG la Buena Gaita - La Que Le Gusta a Mi Pueblo
数年前に結成された新興グループながら、今年は数々のアワードで入賞するなど勢いに乗るLAG la Buena Gaitaの新曲。「Reymusik」ことReynier Villasmilが作詞作曲を手掛けており、編曲面でもソプラノサックスを取り入れた、意外となかったタイプの楽曲である。
Los Mismos 15 - Aguinaldos Sinfónicos
今年最も力の入った楽曲と言って間違いない、Los Mismos 15による約14分におよぶメドレー大作。オーケストレーションを大胆に取り入れたサウンドで、新境地を見出した音楽監督のEri Quirozには拍手を贈りたい。
もともとMaracaibo 15で活動していたミュージシャンが分裂して結成したグループであり、今回のメドレーも全曲Maracaibo 15の楽曲だが、アレンジの妙で本家に引けをとらないクオリティとなっている(というか、本家の今年の新譜は割と微妙だったので…)。
Las Chiquinquireñas - Cantón Zulia
昨年のnoteで、Las Sensacionalesを「現時点でほぼ唯一の女性ガイタグループ」と書いてしまったが、実際は他にも存在していた女性グループであるLas Chiquinquireñasの新曲。2015年頃に結成され、今年で7周年を迎えるとのこと。どうしても男声に偏りがちなガイタ界において、女声の果たす役割は大きい。
Así Suena Maracaibo Ft. Ricardo Portillo - Hablando Con Ricardo Portillo
チリの首都サンティアゴを拠点に活動するAsí Suena Maracaiboが、ガイタ・レジェンド:Ricardo Portilloを迎えて制作したメドレー。安定した演奏と良アレンジで聴き応えがある。Ricardo Portilloはすっかりおじいちゃんだが、彼の書いた楽曲は色褪せない(90年代にGaita del añoを4回獲得しているのとか、よくよく考えると凄いことである)。
CX, Chuchito Ibarra, Jess LPZ, Lebel & Alitasia - Que Sea Eterna
普段はラテンポップ畑で活動しているCX、Jess LPZ、Lebelの3組と、Chuchito Ibarra、Alitasiaというガイタ界のベテラン陣が参加した、AMMA Recordsのクリスマス企画より。例年こういう企画モノは良曲の確率が高い(気がする)。
Roberto González & Nelson Arrieta - Mix Gaitero
Roberto González - Que Bonita Es Ésta Vida
1991年生まれ、米マイアミにて妻と共に会社「Miami Sound and Entertainment Inc」を立ち上げ、近年精力的に活動しているRoberto Gonzálezの関連作が2曲連続で登場。
1曲目は元GuacoのNelson Arrieta(彼も現在マイアミを拠点にしている)と共演したMix Gaiteroでクオリティに文句なし。2曲目はオリジナル楽曲だが、こちらもソフィスティケイテッドなモダン・ガイタで心地よい。
Agrupación Swing Latino - Volver a la Esencia
もともとBirimbaoなどで活動していたGilberto Daguinが音楽監督を務めるグループ:Agrupación Swing Latinoの新曲より。ネットにあまり情報がない(もしくはInstagramの画像情報のみで、翻訳が面倒くさい)。
Talentos de Dios - Padre, Hijo y Espíritu Santo
11人のシンガーによる宗教色の強いプロジェクト:Talentos de Dios。参加メンバーはLuis Angel Aguirre、Adolfo Ochoa、Alejandro Huerta、Carlos Delgado、Danelo Badell、Dionel Gutierrez、Eroy Chacin、Marvin Gonzalez、Nelson Romero、Wilfredo Delgado、Ozias Acostaと、錚々たる面々である。本曲はスペイン語で「父、息子、精霊」つまりは「三位一体」を表すタイトルのとおり、荘厳な楽曲となっている。
Monumentales de la Gaita - Monumentales 60
ベネズエラの中央に位置するAragua州Maracayで1962年に結成されたMonumentales de la Gaitaの60周年記念曲。Germán Ávila Jr.が作詞作曲を手掛けており、制作も彼のプロダクションであるGA Music Productionsが行っている(そのせいで、各種サブスクだとアーティスト名がGermanになってしまっているが…)。
EXILIO - EL DARIÉN
米アトランタを拠点とするEXILIOの新曲より。コミカルな楽曲でPVも寸劇ありの内容だが、タイトルのDariénがダリエン地峡(北アメリカと南アメリカの境にある、21世紀初頭においても開発の手があまり及んでいない沼地や熱帯雨林が残る地帯)を指していたり、PVの最後に「これは、より良い未来を求め、命を賭けることを決意した人たちへのオマージュです。」と掲げるあたり、「亡命者」というバンド名にふさわしい楽曲である。
La Gaita de Otrora - Oyela Como Suena
"Papupapa"ことJose Alberto Rodriguezがディレクターを務める多世代グループ:La Gaita de Otroraの新曲。Neguito Borjasが作詞作曲を担当しており、相変わらずの安定感がある。
Cadencia Gaitera - Agradecido
2008年にズリア州Santa Bárbaraで結成されたグループ:Cadencia Gaiteraの新曲。あまりネットに情報がないが、いい曲だと思う。
Luis Alfonso Aguirre - Madre Buena
Gaiteros del Pozónなどで活動していたLuis Alfonso Aguirreによる初のソロ作品。Renato Aguirre Gonzálezが作曲し、その息子のRicardo “Pelón” Aguirreが編曲した、Aguirre尽くしの1曲。宗教色が強めながら、それなりに聴ける1曲。
Caballeros De Gaiteros - Ofrenda De Gaiteros
あまりに情報がなさすぎて本当に2022年リリースかはかなり怪しいが、プレイリストの流れ的にここへ持ってきたかったCaballeros De Gaiterosの楽曲。
Del Sur Del Lago - Tierra Ideal
こちらは2022年リリースなのは間違いないが、同様に情報が少ないグループ:Del Sur Del Lagoの新曲。本曲を作編曲しているElías Hernándezは、3曲前のCadencia Gaitera - Agradecidoも作編曲しており、こういう曲調をやらせると一級品といった感がある。
Koquimba - Duelale A Quien Le Duela
結成36年目。パワー系で押していく、Koquimbaだよね〜としか言いようのない新曲。この曲に全然関係ない余談だが、今年はKoquimbaの過去音源が全てサブスク解禁となり、初期のフレッシュな楽曲の良さに気付いた年でもあった。
Maragaita - La Vuelta al Mundo
こちらも最近過去作のサブスク解禁が進んでいて嬉しい(2015年の30周年アルバムがとても良かった)結成37年となるMaragaitaの新曲。PVはベネズエラの航空会社とタッグを組み、“La Chinita”国際空港で15時間ぶっ続けで撮影されたとのこと。
Sentir Zuliano - La Ética Pelética
昨年のnoteで「比較的新興?のグループ」と書いてしまったが、実際には1978年にマラカイボで結成され、2018年からカラカスに本拠地を映したグループであるらしいSetir Zulianoの新曲。昨年までアレンジを担当していたEri QuirozはLos Mismos 15に注力するため?か脱退してしまったが、それでもクオリティは健在である。
La Nueva Conga - El Sombrero Vueltiao
忘れた頃にやってくるGaita TamboreraはLa Nueva Congaによる新曲。昨年非常にソフィスティケイテッドな作品をリリースした彼らだが、本作も耳馴染みのよい作品になっている。
Parranderos de la Paz - RUMBO A ORIENTE
カリブ海に浮かぶNueva Esparta州のMargarita島で結成され、2005年にレコードデビューしたグループ:Parranderos de la Pazによる、同じくMargarita島出身のシンガーソングライター:Jesús Ávilaの楽曲のカバー。
Los Cardenales del Éxitos - Se Adelantó la Navidad
今年結成60周年を迎え、記念アルバムもリリースしたCardenales del Éxitosによる新曲。4つ打ちでデカいカウベルの鳴る感じが近年のカルデナレスといった感じで気持ちよい。
La Trilogía Perfecta - Cuando Vuelva
Carlos Mendez、Javier Leon、Luis German Briceñoというベテラン3人が「パーフェクト・トリロジー」を構成すべく結成したユニットの新曲。こういう裏を突くタイプのアレンジに自分は弱い。
Neguito Borjas Ft. Betsayda Machado y Francisco Pacheco - De Parranda
最後はNeguito Borjasによる、お祭り騒ぎとしか言いようがない17分超えのParranda大作で〆。パワフルな歌声でワールドミュージック方面からも注目を集める女声パランダ・シンガー:Betsayda Machadoと、1976年に結成された最も有名なパランダグループ:Un Solo Puebloの創設者であるFrancisco Pachecoの客演も素晴らしい。
以上、34曲のレビューを書いた時点で2022年12月31日の3時となり、筆者の体力に限界が訪れたため本記事はここでおしまい。来年もきっと良いガイタに巡り会えるはずだ。良いお年を!
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