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中立駒入門(4)

中立駒入門はこの第4回をもって最終回とします。最終回はフェアリー条件と中立駒の組み合わせです。第3回と同様、このパターンは大量に考えられるため、一部を紹介するのみに留めます。

まずはCirceから。

Caillaud, M. 1st Pr Phenix, 1990

H#3 (2 solutions), Circe

1.nPa1=nS Kf5 2.nPbxa1=nQ[+nSg1] nSf3 3.nQe5+ nSxe5[+nQd8]#
1.nPb1=nB Kf6 2.nPaxb1=nR[+nBf1] nRb5 3.Ke8 nBxb5[+nRa8]#

Circe+中立駒の細則ですが、白が中立駒を取った場合の再生位置は、取られた駒が黒の駒であるとみなした再生位置になります。逆も同様。
AUWとnP/nPのreciprocal capture、中立駒によるチェックメイトで頻出するダブルチェックをCirceの再生により実現していること、それらが奇跡的にわずか4駒で実現されています。

この作品は1991年のWenigsteiner Jahrespreisの2等を獲得しています(なぜ1990年でないのかはわかりません。結果稿にはNachtrag(補遺)と書いてあるのみです)

次はMadrasi。

Rittirsch, M. 1st Pr harmonie, 2004

H#2 (2 solutions), Madrasi

1.nPa1=nR nPd8=nR 2.Kxg4 nRdd1#
1.nPa1=nB nPd8=nB 2.Kxf4 nBdf6#

Madrasiのルールは、「相手の同種駒の利きにある駒は動けなくなる」です。これを中立駒と組み合わせたときの細則は、例えば白番で「黒Rの効きにあるnR」を動かすことはできませんが、黒番で「黒Rの効きにあるnR」を動かすことはできるというものになります。中立駒どうしが向かい合っている場合は、どちらも動かすことができません。
これを踏まえて解を見ていくと、最終手はecto-batteryを開く手になっています。(たとえば最初の解では、nRd8によってRg8が動けなくなっているが、それをRg8に当たらない場所に動かすことでRg8が黒Kにチェックになるようになっている)
しかし、ランダムな場所に動かすと最終手を元に戻す手でチェックが解除されるため、黒が最終手を元に戻せないように、白Rを作っておきます。これが黒の初手の意味です。
残る白の1手目→黒の2手目→白の2手目は、「存在していたバッテリーをピン+別のバッテリーに変換」→「ピンされていたバッテリーの前衛駒を取る」→「バッテリー解放」です。

次はPatrolです。

Kochulov, I. 2nd Prize 9th FIDE World Cup, 2021

#2, Patrol

Patrolは「自分の駒で紐が付いているときのみ、駒取りやチェックができる」というルールです。中立駒は、白の駒かつ黒の駒とみなされるので、黒Kは中立Sで紐が付いていますが、中立Sは白の駒で紐が付いていないので黒Kにチェックをかけていません。

1…Kxc5 2.Rh4# (nSe4が動くとwSa4でチェックされるため、ピンされています)
1.Re1+? nS~ 2.Be5# but 1…nSg3! (2. Be5+ nSe2!)
1.Bb1+? nS~ 2.Sf5# but 1…nSf2! (2. Sf5+ nSd3!)
1.Se8? (2.Re1#) nS~ 2.Rh8 but 1…Sd6!
1.Sf5! (2.Bb1#) nSf2/Kxc5 2.Rh5/Rh4#

最後にTake&Makeを。

Barth, M. and Pachl, F. 1st Pr Gaudium, 2015

H#2 (3 solutions), Take&Make Chess
g4: Zebra, g3: Camel

1.Rd5 nCAd2 2.Qc6 nZxd2-a3#
1.Rd4 nZd2 2.Qa8 nLIxd2-a4#
1.Rd3 nLId2 2.Qb5 nCAxd2-a2#

Take&Make Chessは、駒を取ったあと、取った駒は追加で取られた駒の動きをする必要がある、という条件です。
テーマは中立駒を用いたヘルプメイトではよく出てくる、Cyclic Zilahiです。Zebraは(2,3)-Leaper、Camelは(1,3)-Leaperです。Lionは前回を参照ください。
黒の2手はどちらも、最終手で中立駒が動いたときに中立駒を動かしてチェックメイトを回避する手を防いでいます。このように、中立駒が元いた場所から本来動けない場所に動いてチェックメイトする、というのは中立駒を用いた作品で頻出するメイト形です。

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