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名作を訪ねる(15)

第15回

第15回はセルフメイトを紹介します。

セルフメイトは白キングのチェックメイトを強制するということで、白キングのメイトの形がどうしても似てしまうという問題があります。たとえば、R+BのバッテリーあるいはB+Rのバッテリー、黒がツークツワンクになってPを突く、といったものが常道です。
そのぶん、メイトの形が特殊なセルフメイトは新鮮さと驚きがあります。現代ウクライナの作家より、

Borodavkin, S. 4th Place 19th Team Championship of Ukraine, 2020-21

S#9 (9+6)

黒の手はかなり制限されていますが、白Kがどのようにメイトされるか全くわからない形になっています。
しかし、黒のQh8の意味を考えると、おぼろげながらメイト形が見えてきます。
まずはTry(Main plan)から。
1.Ba5? Kxe7 2.Qe6+ Kf8 3.Bb4+ Re7 4.Qf6+ Qxf6で白キングがメイトのようですが、白に5.Sf3があるので失敗します。
そのため、白は先にナイトを対処しなければいけません(Foreplanといいます)。しかし、たとえば1.Se2? a5 2.Sc1??(hideaway)のようにしてしまうと、次に3.Ba5からMain planが実行できますが、その時点で黒はステイルメイトになってしまっています。失敗。もう少しほかの対処方法を考える必要があります。
1.Sf3!とすれば、黒は1…a5しかありませんが2.Re6! Kf7 3.Se5+ Kf8 4.Sf7!とすると、黒はこのナイトを取るしかなくなっています。
4…Kxf7 5.Re7+ Kf8と戻して、最初の形からナイトが消えた形(a6-a5も入っていますが、あまり大きな違いではありません)になります。これでさきほどのMain planが実行でき、6.Bxa5! Kxe7 7.Qe6+ Kf8 8.Bb4+ Re7 9.Qf6+ Qxf6#でメイトになります。
メイト形はあまり見たことのない形ですが、どちらかというとその形に至る手順も含めて楽しい作品です。さらに、白のRe7が取られるだけの駒ではなく、Foreplanにおいてアクティブに動くのもよいところです。

次回予告

次回はプルーフゲームを予定しています。

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