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中立駒入門(3)

第3回は中立フェアリー駒を扱います。

Locust

LocustはQのラインに従って駒を飛び越える駒で、飛び越えられた駒が取られます。着地地点は飛び越えた駒のすぐ次のマスです。駒を飛び越えられないときは動けません。また、着地地点に駒があるときは駒取りができません。

Bedoni, R. Rex Multiplex, 1986

H#2, f7: Locust

1.nPc1=nL nPg8=nL 2.nLxf7-e6 nPd8=nL#

最終形は3つの中立Locustでのメイトです。チェックをかけているnLd8が動けないことに注目ください。

Lion

LionはQのラインに沿って駒を一つ飛び越えて動きます。飛び越えた先に駒があれば1つ取ることができます。飛び越えられた駒は取られません。

Bartel, E. feenschach 1989

H#2, e7: Lion

1.nPe1=nLI nLIe8 2.nLIh7+ nPf8=nLI#

2.nLIg7+?だと、2…nPf8=nLIのときにnLIf8-h6!と解除されることに注意ください。nLIの動きを奪っておくためのh7への限定移動です。

Mao/Moa

Maoはシャンチーの馬(Ma)で、直交方向に1マス動いてから斜めに1マス動きます(基本的にはナイトと同じ動きですが、直交方向のマスに駒があるとその駒を飛び越えることはできません)。Moaは斜めに1マス動いてから直交方向に1マス動きます。

Maeshima, H. The Problemist 2024

H#2 (2 sols), g1:Moa, d5:Mao

1.g2 nMOf3 2.nMAe4+ nMAg3#
1.Re5 nMAf5 2.nMOe2+ nMOf4#

Mao/Moaは、あるマスに移動してから元のマスに戻るとき、経路が異なるという特徴があります。その特徴を使うと、このように比較的軽い形で中立駒によるチェックメイトを成立させることができます。

Rose

Roseはナイトの動きを円形に連鎖させてできる駒です。文章で説明するのは大変なので以下を参照ください。
https://www.chessvariants.com/piececlopedia.dir/rose.html

Borst, D. 2nd Prize Franz Pachl 70 JT, 2020

HS#3.5 (2 solutions), f8:Rose

1...nBh6 2.Bf4 Sxf4 3.Rf2 nROa6 4.Rxf4+ nBxf4,nROxf4#
1...nRc8 2.Rc5 Sxc5 3.Bb4 nROh3 4.Bxc5+ nRxc5,nROxc5#

同一場所(f4,c5)で駒を取れる2つの中立駒がありますが、取った後にもう一つの中立駒によりピンされるという極めて特殊な状況です。つまり、一つめの解ではnBxf4とするとnBf4がnROa6によりピンされ(a6-c7-e6-f4-d2-c1というルート)、nROxf4とするとnROf4がnBh6によりピンされている、という状況になります。


組み合わせ

これまでの駒の組み合わせも可能です。

Vysotska, J. The Problemist 2012

H#2.5*, a1,b6:Locust, d6:Moa, e4:Mao

1... ... 2.Qf4 nMOxe4+ 3.Kf5 nMOg3#
1...Ka4 2.Qe7 nMAxd6+ 3.Kf6 nMAe8#

Mao/Moaの特性とLocustの特性を使って、最終手のチェックに対して1手前の局面に戻せないようにしています。

次回はフェアリー条件との組み合わせについて書きます。

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