中立駒入門(1)
中立駒は私が最も好きなフェアリー駒であり、これまでの自作のうち10作品ほどに用いています。しかし、その使われかたはあまり知られていないものでもあるので、この機会に「中立駒入門」を書きます。中立駒の基本的な使い方から、フェアリー条件と組み合わせた場合の使い方までを書く予定ですのでご期待ください。
第1回は、中立駒とは何かを書いていきます。
中立駒とは何か
中立駒とは、「白の駒としても黒の駒としても扱われる駒」のことです。実は、それ以上でもそれ以下でもありません。
しかし、これだけだとよくわからないと思いますので、実例を挙げます。
(なお、「白番には白の駒、黒番には黒の駒として扱われる駒」ではありません。これについては、読んでいただければわかると思います)
括弧内に駒数を示すときは、中立駒の数は一番最後に書きます(白と黒の間ではないことに注意)。
例1の局面、中立駒はnSc3、nPd2とnPf3です。この局面で白、黒の手番であると仮定したとき、それぞれが指せる手を考えましょう。
さて、チェスにおいて白が白の手番にできることは
白の駒を動かす
ただし、自分にチェックをかける手はillegal
です。二つめをより厳密に定義すると、「白が自分の駒を動かしたとき、それによって黒の駒が白のキングにチェックをかけている状態にする手はillegal」です。
このルールは、たとえ中立駒が盤上にあっても変わりません。
そのことを踏まえて、白の可能な手を考えていきましょう。
まず、白の駒であるKを動かす手です。利きは8か所ありますが、そのうち1か所のみillegalになる場所があります。
その場所はc6です。ここは、中立駒である(つまり、黒の駒でもある)Bf3が効いているので、自分のキングにチェックをかける手となってしまいます。
次に、中立駒を動かす手があります。
nSc3は8か所すべてに動かすことができます。
nPd2を動かす手ですが、この場合は白の初期位置にいるポーンなので、2マス動くことも可能です(なお、これはこのポーンが動いたことがあるかどうかには無関係です)。つまり、d4、d3に動けます。
また、c3にあるナイトを取ることもできます。nSc3は中立駒である(つまり、黒の駒でもある)ので、問題なく取れます。
nBf3を動かす手で、illegalな手が2つだけあります。それはnBc6??とnBg4+??で、これは「白が自分の駒を動かしたとき、それによって黒の駒が白のキングにチェックをかけている状態にする手はillegal」というルールに従って不可となります。
さて、それでは黒の手も考えてみましょう。キング、ナイトとビショップの詳細は省きますが、ポーンについてはd1=nQ(R,B,S)という手が可能です。黒のポーンが1段目に到達しているので、プロモーションできるのです。プロモーションしたあとも中立駒であり続けるという決まりになっています。
中立駒とチェック
中立駒は、当然のことながらチェックをかける能力があります。ただし、通常の駒によるチェックと異なった解除方法が増えます。
例2は白の手番。チェックがかかっているので解除する必要があります。通常の解除方法Ka7とKb8のほかに、中立駒が白の駒でもあることから、たとえばnBa2という解除方法もあります。
a8-h1のラインから外れない、nBf3+??のような解除方法は不可能であることにご注意ください。
このことを考えると、中立駒によるチェックメイトは一見不可能のように見えます。しかし、それを成立させる方法はいくつか知られています(そのためにそれらは中立駒を使った作品のテーマとなりえます)。
中立駒によるチェックメイトの紹介は次回。