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名作を訪ねる(12)

第12回

第12回はスタディを取り上げます。スタディは最もOTBに近い分野であり、実戦の訓練として用いられることもありますが、もちろんそこに芸術性が込められた作品もあります。

Loyd, S. The Chess Monthly, 1860

Draw

視点は白番です。白番で、この局面からドローにします。
なお、チェスのエンドゲームには勝ち/ドローが決まるような駒の残り方があり、エンドゲームではそれらの結論を知っていることが求められます。(例えば、KQ対KやKR対Kは勝ち、KB対KやKS対Kはドロー、KBS対Kは勝ち、KSS対Kは特殊な局面以外ドローなど。KSS対KPはポーンの位置によりKSS側の勝ちかドローかが変わりますが、その知識自体が求められることはないはずです)
このスタディは、黒はポーンをクイーンにできれば勝ち、K対KSはドローということがわかれば解けます。(黒はナイト1つでは白キングをメイトにできない)

さて、簡単に見えるのは、白ビショップで黒ポーンを取れるとドローになるということです。そのため初手は1.Bd7!が簡単に見えます。黒の1…h2も強制。
さて、次に2…h1=Qを許しては負けですので、2.Bc6+も見えるところです。これに対して、2…Kg3は3.Bh1でドローにできるため(詳細は割愛しますが、白ビショップがh1から追い出されてもh1に効きを残し続けられるため)、2…Kg1と黒は指します。
さて、ここからがおもしろいところですが、これでも3.Bh1! Kxh1とします。エンドゲームの知識がある方であれば、黒Kh1、Ph2、白Kf1(f2)でドローにする形(黒キングがh1から抜け出せない)をご存知の方もいると思います。それでは、4.Kf1と4.Kf2のどちらが正しいでしょうか?

3…Kxh1まで

この後の局面のことを考えると、白はKf1-f2を繰り返すことができれば黒は進展させられず、ドローです。ですので、白Kf1の状態で黒ナイトが例えばg4(f2に効きがある位置)に来られると白は負けます。
ここでナイトの特性を考えましょう。ナイトは移動のときに必ずマス目の色を変えますので、現在黒のナイトは白マスにしか移動できません。
白が4.Kxxと指した後に黒が4…Sxxと指すことを考えます。そのとき黒のナイトは白マスにいるため、効きは黒マスにあります。ですから、その時に白キングが黒マスにいれば、白マスへの効きをつぶされることはありません。
ですので、4.Kf2!!が唯一のドローへの手で、4.Kf1?は負けます。

このように、ナイトが移動する際に必ずマス目の色を変えることを専門用語でParityといいます。通信に詳しい方であれば誤り訂正符号などを思い出す方もいらっしゃるかもしれませんが、語源は同じです。

次回予告

次回はダイレクトメイトを紹介します。3手メイトの予定です。

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