ネクタイが結べない

ネットで「ネクタイ 結び方」と調べれば、動画やイラスト付きの説明が出てくる。一番無難な結び方を選択し、姿見の前に立って鏡像を脳内でさらに反転させ、ぎこちない手つきで真似てみる。4、5回と繰り返す。完成までの時間が短くなる。次は説明を見ずにやってみる。2、3回と繰り返す。
これができない。初めにやろうとしたのは8年前だったか、その時は父親に頼んだような気がする。大学生になっても先輩に頼んで結んでもらった。そのネクタイは今も結んだままの状態で保管されている。スニーカーの紐よりも先にネクタイを自動で結ぶ技術をつくって欲しい。
できないと言ったが正確にはやろうとしない。「できない」と「やろうとしない」の間には深い溝があって、これは人類共通の問題なのだろうがそんなことよりも映画を「ながら観」しかできない人が多いらしい。映画を流しながら、しかし画面はほとんど観ることなくスマホをイジり、他人の感想や考察、解説なんかを読んで満足し、素晴らしい映像表現の数々に自力で気付くことなく「つまらなかった」と言う。映画をどう観るのか知らなければ、ネットで調べれば出てくるし、映画評論家の本もたくさんあるのに。身近なところに落ちている未経験を拾わないのはめちゃめちゃアホだなと思う。

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