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トップガン マーヴェリックにてトムクルーズが着用したクロノグラフ

2022年10月8日追記
映画トップガンの公開が影響してか上映以降でパイロットウォッチが人気です。当店のWEBサイト:セラーアンティグランデにて、IWCはもちろん、航空機との関係が深いブライトリングのクロノグラフや、カルティエのサントスなどを中心にピックアップいたしました。
https://seller.antiegrande-watch.jp/c-fpage?fp=pilotwatch


36年前と変わらない腕時計

今年5月に公開されて以来、記録的な大ヒットを継続中の映画、「トップガン マーヴェリック」。

画像:topgunmovie.jp

今回教官として「トップガン」に戻ってきた,トム・クルーズが演じるピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐 の腕上にある腕時計が、36年前の初作で使用された時計と同一の個体であったことが、様々なメディアで取り上げられ、話題になっています。

画像:topgunmovie.jp

マーヴェリックが愛用するのは、ポルシェデザイン・バイ・オルフィナのクロノグラフ1という時計で、PVD加工によって全面がブラックで染められた精悍な印象のモデルです。

画像:www.christies.com

ここでは、これまであまり語られることの無かったこの「隠れた名作」、ポルシェデザインのクロノグラフ1について少々深堀りしてみましょう。

ポルシェデザインについて

ポルシェデザインと自動車メーカーのポルシェはしばしば同じものとして混同されてきましたが、両者が実際に統合され、デザインスタジオが自動車メーカーの一部となったのは意外な程に最近の事です。

画像:www.christies.com

ポルシェデザインの歴史は、1972年にまで遡ります。

このデザインスタジオの創業者は自動車メーカーのポルシェを創業したフェルディナント・ポルシェの孫であるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(F.A.ポルシェ)。

画像:www.porsche.com

F.A.ポルシェは1962年に家業の自動車メーカーに入り、1964年には名車中の名車、ポルシェ911を世に送り出し、カーデザイナーとして一躍その名を知られるようになりましたが、その後巻き起こった社内の混乱により、1971年には創業家の人々の全てが管理職から外される事態となりました。

画像:www.porsche.com

職を失ったF.A.ポルシェは独立を決意、1972年にポルシェゆかりの地であるドイツのシュトゥットガルトにデザインスタジオを設立したのです。

クロノグラフ1

このF.A.ポルシェのスタジオから生まれた最初の製品のひとつが、1972年に発表され、1973年に発売されたこのクロノグラフ1であったのです。

画像:www.porsche.com

PVD加工によって全面的にブラックで仕上げられたケースとブレスレット、そしてブラックの文字盤で構成されるこの時計には、あらゆる光の反射を排除する狙いがありました。

そしてブラックを基調としてホワイトとオレンジの差し色を採用したダイヤルは、F.A.ポルシェ自らが生み出した名車、ポルシェ911のダッシュボードにインスピレーションを得てデザインされたといわれています。

採用された二種類のムーブメント

この時計の製作を担当したのは、1922年にスイスのグレンヘンに創業した歴史を持つオルフィナ社でした。

当初は当時の最新鋭であったバルジューの7750を搭載していましたが、この時計の発表後、僅か2年でバルジュー社が生産を中止したことで7750が入手できなくなり、以後レマニアのキャリバー5100に積み替えたといわれています。

左cal.7750搭載機と右cal.5100搭載機 画像:www.christies.com www.artcurial.com

これら7750と5100は文字盤上のレイアウトを見れば簡単に判別可能です。

すなわち7750は12時位置のインダイヤルに30分積算計を備えているのに対して、レマニア5100は60分積算計が文字盤中央、すなわち長短針およびクロノグラフ秒針と同軸に配置されており、12時位置のインダイヤルには長短針と連動する24時間針が置かれています。

画像:www.artcurial.com

レマニア5100は、オメガのCal.1045として、1970年代後半から1980年代にかけてスピードマスターやシーマスターのクロノグラフに多用されたほか、軍用パイロットウォッチ等にも多数採用され、7Gもの衝撃に耐えうる高い基礎体力によって抜群の信頼性を発揮しましたが、1999年にレマニアがスウォッチグループに吸収されると、グループの方針によって間もなく生産を終了しました。

画像:www.artcurial.com

その後1978年には、F.A.ポルシェが温めていたコンパスウォッチのアイディアを実現可能なメーカーを求めて多数のメーカーと交渉を重ねる中で、IWCとの歴史的な出会いを果たし、クロノグラフ1を含むオルフィナとの時計製作を終了しています。

画像:www.iwc.com

マーベリックのクロノグラフ1はどちらか?

画像:topgunmovie.jp

現在のところインターネット上で発見できるこの映画のスチール画像には、マーベリックが愛用する時計が7750と5100のどちらのモデルなのかを明確に判断できるものが見当たっていませんが、
どの画像にも60分積算計らしきものが見られないこと、また12時位置のインダイヤル針が24時間針とすると明らかに指す方向が違う画像が多い事から、恐らくは1975年位までに製造された、7750搭載機ではないかと思われます。

腕時計は使い手のキャラクターを象徴するものなのか

この作品の中でマーベリックは常にエネルギーに満ち溢れ、常に若者たちを統率して無謀なまでに危険なミッションを成功に導いており、そこに前作からの36年という長い歳月を感じさせることはありません。

画像:topgunmovie.jp

しかしマーベリックの腕上にあるクロノグラフ1には、長年の使用によるPVDコーティングの剥がれが全体に見られ、訓練生たちが揃って着用しているIWCによるセラミック製の新しいパイロットウォッチと、見事なまでのコントラストを成しているように見えます。

画像:topgunmovie.jp

そのコントラストが意味するものは何なのか、考えながら鑑賞するのも楽しいかも知れませんね。

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