「私はこうして夢を学んだ」(その10)
夢に興味を持ち始め、みた夢を憶えているようになり、夢日記もつけ始めたりすると、たいていの人がある疑問を抱くのではないかと思います。
それは、夢に登場する人物です。
自分の身近な人、ご縁の深い人が夢に登場するならまだしも、映画やテレビで観るだけの俳優やタレントなど、しかも自分がその人の大ファンでもない人まで、あるいは歴史上の人物、神話やおとぎ話に登場するような架空のキャラクターまでが夢に現れるのはなぜなのか?
いや、そればかりか、まったく見知らぬ人(外国人を含む)までが夢に登場し、まるで生身の人間のようにそこに存在し、自分と怪しげな関わりを持とうとするのはなぜなのか?
私も、ありとあらゆる年齢・性別、人種、肌の色の人物を夢でみせられてきました。そういう人物たちは、どこかもの言いたげで、私にとってVIPであるかのような雰囲気を醸し出しているのです。あるいは、はっきりと私に攻撃を仕掛けてくるような人物もいました。
私は、そういう人物たちと、あるときは恋に落ち、あるときは逃げまどい、あるときは真っ向対峙する、という具合いでした。
夢に登場する人物の正体として、いちばん納得できる答えを出したのがユングかもしれません。ユングの夢解釈の中心的概念に「元型(アーキタイプ)」というのがあります。この言葉の意味を正確に定義すると、「集合無意識の中で仮定される、無意識における力動の作用点であり、意識と自我に対しリビドー(心的エネルギー)を介して作用するもの」といったチンプンカンプンなものになってしまうようです。元型は、人物として夢に現れるとは限らないので、このような定義になるのでしょう。
煩雑になるので、人物に限って言うと、一人の人間の中には、様ざまな「下位人格(サブパーソナリティ)」といったものが眠っていて、「上位人格(普段自分が「これぞ自分の人格」と認識しているもの)」にいずれ統合されるべく、具体的な人格イメージとして夢に現れる、ということのようです。つまり、夢に登場する人物はすべて「あなたが知らない自分の人格の一部」ということになりそうです。
あなたが成熟するにつれ、そうした下位人格をTPOに合わせて自在に操れるようになる、ということかもしれません。
ユングの言う6つの代表的な元型を以下に挙げておきます。
●アニマ:男性の中の女性原理
●アニムス:女性の中の男性原理
この二つはすでに何度も取り上げたので、これ以上の説明は不要でしょう。
夢では通常、自分と同年代の異性として登場します。
●太母(グレートマザー):男性・女性どちらの中にもある「母性」が極まったかたち。
母親、年長の女性、老婆などの姿で登場します。
●老賢人(オールドワイズマン):男性・女性どちらの中にもある「父性」が極まったかたち。
●仮面(ペルソナ):普段社会的・対外的に見せている自分の顔(地位、肩書、職業、考え方の癖、習慣など)。
人物として夢に登場するのではなく、主に身に着けるもの(服、帽子、靴、アクセサリーなど)、あるいは身体の一部として表れます。
●影(シャドー):無意識の中に眠っているあなたの未発達の可能性。
得体の知れない黒い影、見知らぬ人、顔色が暗い人、黒人、性格の違う友人、陰険な人、などの姿で現われます。
仮面と影は、あなたが抱いているまったく相反する二つの自己イメージと考えればいいでしょう。
以上6つの元型を意識するだけでも、あなたのドリーミング・ライフは豊かなものになるはずです。これらの隠れた自己イメージはどれも、自分の人格としていかに統合していくかがライフテーマとなっていきます。