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人間の成長・発達に関する最新理論

■横綱が幕下にアドバイスを求める

何年か前になるが、わが師、大高ゆうこ氏はある悩みをかかえていた。もちろん、通俗的なレベルの低い悩みではない。言うなれば実存的、存在論的、形而上的な悩みとも呼ぶべきものだろう。しかし、周りに相談できる相手がいない。そんな折、たまたまある公的な機関で、カウンセラーに気軽にお悩み相談ができる窓口を見つけた。「ものは試し」とばかり、氏はさっそく申し込んで、カウンセラーと会ってみた。そもそも同業者に悩みを打ち明けるなど、初めての経験である。そのカウンセラーが自分のような悩みに対して、どのような助言をするのか興味もあった。
対応してくれたのは、自分よりうんと若い女性のカウンセラーだった。自分がどのようなキャリアの持ち主か、詳しくは言わないでおいた。自分の悩みを話すと、案の定「カウンセリングの教科書通りの助言」だった。氏は、「よく勉強していますね。感心感心」とばかり内心パチパチと拍手を送ったという。
この話を聞いた私は言ったものだ。
「それは、横綱が幕下力士に相撲の取り方をアドバイスしてもらうという話ではないですか!」
私はそのカウンセラーが気の毒になってしまった。そう、カウンセラーがクライアントにすべてを見透かされていたのだ。どちらがカウンセリングされたのやら・・・。
横綱に相撲の取り方を助言できる人間といえば、横綱を引退した親方クラスの人間だけだろう。
実は、一般に年下のカウンセラーが年長のクライアントを相手にする難しさがここにある。まだ人生経験の浅いカウンセラーが、人生経験豊富なクライアントの年長者ならではの悩みを聞かされても、いったい何が問題なのかすら理解できないかもしれない。
この事情は、ドリームワークにも言える。
たとえば「犬」が夢に出てきたとしても、夢主が犬を飼っていて可愛がっているのか、それとも過去に犬に噛まれた経験があるのかで、犬の意味は変わってくる。また、子どもがペットとして犬を可愛がっているのと、犬を可愛がっている子どもも可愛がり、その子の親も可愛がっている祖父母の世代とでは、やはり夢の中の犬の意味は違ってくるだろう。
犬という象徴の意味は、もちろん最終的にはクライアント自らが答えを出すのだが、カウンセラー側には、「あたり(感触)」のようなものがあった方がいい。そのときに役立つのは、人がどのような段階を踏んで意識(心)を成長・発達させるかの全体的な「地図」である。これに関する大まかな地図を持っていれば、カウンセラーはそのクライアントが、その地図のどのあたりにいるのか、大体の「あたり」をつけることができる。もちろん、カーナビと同じで最新の地図でないと、かえって道に迷ってしまう。残念ながら、夢学にそうした発達心理学の視点を持ち込んだ試みはまだない。これから私はそれをやろうとしている。

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