平成生まれが「ボキャブラ天国」を鑑賞する
バラエティ番組との出会い
僕は平成元年生まれである。物心がついて、内容を理解しながらテレビを見始めたのはきっと平成9年(1997)頃だと思う。
学校で話題になった面白いバラエティ番組は、「笑う犬の冒険」「電波少年」「爆笑オンエアバトル」「エンタの神様」など、あげればキリがない。前日見たテレビを友達とモノマネして、げらげらと笑い合っていたことを覚えている。
昭和のキッズたちの心を掴んだ伝説的番組
しかし、僕らがテレビの世界にどっぷり浸かる前に世の中を席巻していた番組があったそうだ。※以下敬称略 タモリが総合司会で、パネラーにはヒロミや谷村新司、糸井重里、川合俊一、大島渚など錚々たるメンバーが名を連ねる「ボキャブラ天国」である。
この伝説的番組を、今やYoutubeで自由に視聴することができる。VHSなしに無料で見られるのはすごいことだ。昭和を「いい時代」と表現する人は多いけれど、それに対して平成は「すごい時代」だと思う。令和を表現する言葉は…まだ3年なので思いつかない。
感想が、出てこない
さておき、この番組で毎年恒例となっていた「ボキャブラ大賞」を観ての、正直な感想だが投稿ネタは、ワードセンスが弱すぎて、聞くに耐えない。
ダジャレのようでいてきちんと韻も踏んでいないし、テロップの助けを借りてようやく説明がつくものばかり。その中で、爆笑問題だけがしっかりと的を得たボケかたをしていたのが印象的だった。
一例を挙げると、1993年の第一回ボキャブラ大賞受賞ネタは下記である。
https://www.youtube.com/watch?v=jQIRRyV__VQ
「雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう」
→「兄は夜更け過ぎにユキエに変わるだろう」
映像をぜひ見てもらいたい。まるで感想が出てこないはずだ。
多くのおじさんの話にセンスを感じない理由が判明
「ボキャブラ天国」のネタは、落ちがなくても良い。決してうまいことを言うわけでもない。なんだか上から目線というやつだけれど、少し同情してしまう。ダウンタウンやとんねるず(並びに、その影響を受けた後輩芸人たち)の笑いを知っている平成生まれとの間には、はっきりと埋めがたい溝があると感じる。
ひたすらダジャレと下ネタの連続で、1時間ものあいだ一度も笑わずに画面を見つめているのは面白い体験だった。
90年代のテレビCMって、スゴイ
それよりも、合間に入るCMの見応えがすごい。
内田裕也が演じるBIG JOHNのジーンズのCM「シェキナB・J」。
カール・ルイスが真面目な表情でコーヒー缶へ叫ぶ「Mr.」。
「おお〜」といちいち感嘆が漏れ、CMタイムが待ち遠しくなった。
「ネタへの感度」のギャップは大きい
文芸や映画などのカルチャーは、知れば知るほど過去の名作を遡って鑑賞したくなるものだと思う。ことバラエティに関しては特に、自分の青春時代に見たものが共感のピークなのかもしれない。
僕たちがひとまわり上の世代の笑いを理解できないように、下の世代からも同じような疑問を持たれることは必至であろう。それでも普遍的な笑いのセオリーは確かにある。それはネタの賞レースや大喜利大会のような競技化されたもので磨かれていくと思う。
昭和生まれ世代との付き合いかた
何も知らない一般視聴者が、つらつらと愚痴をこぼしてしまった。逆の見方をすると、「ボキャブラ天国」を通して、おじさんたちの青春時代を想像して同情するといういい体験になった。彼らの笑いに共感して、楽しくコミュニケーションを取るためには良い教材となるのではないだろうか。