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大切なバラ

小惑星なんとか番に、星の渡り鳥の糞に種でも入っていたのか、小さなバラが生えて花を咲かせた。

すると星の住人の王子様が飛んできて、語り入れるは、囲い者にするは、もう大変なことになった。何しろ、ぼっちなのだ。ヒマなのだ。

まんざらでもないバラの花だったが、ふと彼女は気付いた。

「あっ。一番外の花びらに、シミが。。。」

そう花の命は短い。バラは長い方だがせいぜい頑張っても二週間くらいか。今せっせと水やりに来てくれる王子だけれど、もし花が散ったら枯れたら、、、

そんなわけで不安から思わずバラは王子と大喧嘩。王子は心折れて星を出ていくという。星の渡り鳥到着まであとン日。

バラは結構マジで考えた。この小さな星。水やってくれる人居なくなったら。雨って降るの? 今のところ虫いないけど、星の渡り鳥の糞に虫いたらもう大変! どうする、アイフル?

そんなとき、この星の唯一の娯楽、テレビを眺めていたら、地杞憂おっと地球という惑星のクリスマスとかいう大イベントのニュースが。なんか九州か北海道かという濃いー顔の奴が赤バラ抱えて「いやークリスマスのバラは高いですねー足元見られましたよ、前は600いくらだったのに今一本930円!」

バラの脳がフル回転した。そうかクリスマスには私の価値が上がるのねざっくりみても三割増し! そうよこの手しかないわ!

王子が水やりに来るとバラは仕掛けた。

「ねえ、クリスマスって知ってる?」
「さあ、なにそれ」
「あなたが行く地球という惑星のこれからじきにくる大イベントらしいわよ。地球では私(バラ)は大人気で手に入らないそうよ」
「ふーん。手に入るもなにも、この星には君一本しかいないけど」
「だーかーらー! 私はとーっても、貴重でレアでプレシャスなのよ!」
そして初めて、戦略的にバラは言った。
「いつも美味しいお水を有難う」そして精一杯花びら広げて微笑んで見せた。
立ち去る王子にトドメの一撃いや一言、
「私、あなただけを、待ってるから。。。」女の武器、涙も三発、使用した。攻撃は集中的でなければ効果的ではないのだ。そしてどのみちたった一人でも、あなただけ、オンリーと言われれば、大体男は舞い上がるのだ。

そして星の渡り鳥がやってきた。が、王子は乗らなかった。
「ちょっと野暮用ができたんだ、ごめんね寄ってくれたのに」
「あなたが逝きたくなったら、いつでもまた言ってください。あっという間です」
いわくありげに長い首を蛇のようにくねらせて言うと、渡り鳥は行ってしまった。

 そして小さな小惑星なんとか番には、また王子とバラが残された。

 そしてバラの花は散るわけで、、、

 その後どうなったかは、マルチエンディングらしい。

1、「なんだこのバラ、枯れちゃったじゃないか」王子踏んづけて終了。実は短気だった、いや、まさに愛憎。
2、「君との想い出を大切に僕は生きていくよ」残りの花びらをドライフラワーにした王子だった。案外ロマンチストだった。あれ、残った本体は?
3、「枯れちゃダメだ枯れちゃダメだ枯れちゃダメだ」と水をやりすぎ、根腐れアウト。凝り性はときに逆効果。
4、花が散ったら興味もなくなり、でも葉っぱが出てるのでたまに水をやっていたら、そのうち沢山花が咲いてハーレム状態。程よい距離感が長持ちの秘訣。
5)星の渡り鳥の糞にアブラムシが居た。取り付かれて、最初は嫌がっていたが、そのうちなんかコチョコチョされるみたいな快感に溺れて王子様どころではなくなったバラの花でした。

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