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未来会計であるべき姿へ自走する組織を作る【事例紹介】
未来会計の導入と継続的な管理によって、組織はどのように成長し、自走する力を身につけたのか。本記事では、税理士法人シン中央会計の篠塚啓三氏にあんしん経営をサポートする会主催のイベントにてお話しいただいた内容をレポートにまとめました。具体的な取り組みや課題の克服、そして先見経営・先行管理を取り入れた結果、組織全体が自発的に目標に向かって動く力を身につけた事例をご紹介します。
プロフィール
税理士法人シン中央会計は、埼玉県所沢市に本社を置き、埼玉県入間市にも支店を持つ事務所です。創業は1992年で、創業者の篠塚啓三氏が個人事業として開始し、2010年に法人化されました。現在、従業員数は約50名に達し、事業承継を経て、篠塚氏が事務所の運営を担っています。篠塚氏は大学卒業後、1年半の企業勤務を経て家業に入り、税理士として事務所の成長を導いてきました。
経営計画の重要性
これまでも「経営計画」という言葉は知っていたのですが、作成することを決断した背景には、法人として組織成長していきたいという気持ちがありました。2012年に中期経営計画についてのセミナーに参加したのが、経営計画との出会いです。そのときに経営計画の重要性を実感したのですが、「なるほど」と思っても、いざ作成となると簡単にはいかなかったんです。
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たとえば、来月の売上の数字も契約で決まっているはずなのに経理の社員も僕自身も把握できていませんでした。売上や経費の見通しすら立てられず、数字を基にした経営の方向性を描くことができなかったんです。
なので、経費の管理をしていき、データを整理していくところから自社分析を行いました。売上や採用しなければならない社員の数などがある程度見える化されたのが、セミナーから2年後の2014年です。当時、業界に入ってきていた製販分離を自社でも導入していこうと思っていたこともあり、製販分離をもとにした経営計画を全社員に向けて発表しました。
計画を実行するためには管理が必要
経営計画を作成し発表会を行ったものの、当初はそれがゴールになっていました。2015年にも発表会を行いましたが、それだけではなにも起こらなかったんです。成果を出すためには、計画を実行し、予実管理が不可欠ということをまだ理解できていませんでした。
この状況を改善するためにあんしん経営をサポートする会を運営するMAP経営さんにご支援いただくことにしました。そこから単年度計画の作成にも取り組みましたが、最初は苦戦しましたね。今考えると、情報不足が大きな原因だったと思います。当時は顧客との契約情報や売上の予測が十分に管理されておらず、単年度の計画を正確に立てることができませんでした。
そこで予実管理を始めました。ただ、製販分離の体制を導入したばかりだったので、現場が混乱していてなかなかスムーズには進みませんでした。会議の場でも経営課題に対する議論が優先され、数字を追うことが後回しになることが多々あったと思います。それでも、MAP経営さんのご支援で徐々に会議の進め方や管理の方法が改善されていきました。計画づくりの定例化、発表会の恒例化を通して予実管理を少しずつ形にしていきました。
我々が現在MAS会議と呼んでいる予実管理の場は、単なる進捗確認の場から、目標達成のための戦略的な会議へと変わり、参加者も成長していきました。
元々は意見が出にくく、受け身な会議になっていたのですが、目標の決め方や方法についての裁量をメンバーに持たせるようにしたことで意見が積極的に出るようになりました。各部門の責任者が、目標に対するアプローチ方法を考える場として毎月定例化され、目標管理を行うための重要な場となっています。
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10年間の取り組みを通じて、計画と管理が一体となった経営スタイルを確立できました。このプロセスの中で、数字に基づいた軌道修正や戦略立案が当たり前のものとなったのです。
今では、MAS会議を毎月必ず開催し、どんなに忙しくても計画の進捗を確認し、目標達成に向けて必要なアクションを話し合うことが組織の基本的な運営スタイルになっています。
自走する組織への成長
経営計画の策定と管理を進める中で、組織全体が目標に向かって自走する力を身につけていきました。特に、目標管理を売上だけでなく、粗利管理を中心とした管理会計的なアプローチにシフトしたことが大きな転機となりました。
以前は、単に売上の目標を掲げるだけでしたが、それだけでは不十分でした。人員増加で売上は達成しても利益が出ないケースがあって。そこで、1人当たりの生産性や経費コントロールも含めた粗利管理に移行しました。
具体的には、人件費や外部委託費などの原価を含めた計画粗利を設定し、実績との差を埋める方式を採用しています。さらに、各部門が自らコントロールできる経費項目を明確にし、目標粗利を上回った場合はその一部を決算賞与として還元する仕組みも導入しました。
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また、リーダーの選定に関しては、強制的に任命するのではなく、挙手制を採用しています。特に、若手メンバーがリーダーシップを発揮し、部門運営に積極的に関与することで、組織全体の活性化が進んでいます。さらに、部門ごとに2人体制での会議参加を促すことで、リーダーと部門のメンバーが協力して問題に対処し、より広い視野での意思決定が行えるようになりました。
オープン経営の実践も自走する組織を作る上で重要な役割を果たしました。経営情報を可能な限りオープンにすることで、社員全員が経営者目線で考えられるようになりました。売上や利益の目標、粗利の達成状況など、重要な経営指標を全社員が把握することで、自分たちの努力が組織全体の成果にどう繋がるのかを具体的に理解し、一人ひとりが経営に参画しているという意識を持つようになりました。
おわりに
今回は、未来会計による先見経営・先行管理を通じて、組織がどのように成長し、目標に向けて自走する力を得たかをご紹介しました。計画を立てるだけでなく、それを実行し、管理し続けることで、組織全体が目標達成に向けて自発的に動き出す文化が醸成されます。今回紹介した事例では、経営計画の重要性を認識し、予実管理を徹底することで、組織は確実に成長しました。数字に基づいた戦略立案や軌道修正が当たり前のものとなり、社員全員が経営に参画する意識を持つことで、より強固で柔軟な経営スタイルが確立されました。未来会計の導入と実行は、自走する組織へと導く有効な手段であることがわかります。