スポットを当てる目線が優しすぎるよ『いい人すぎるよ美術館+切ないすぎるよ博物館』
名古屋パルコで開催された『いい人すぎるよ美術館+切ないすぎるよ博物館』を観に行ってきた。
以前、東京で開催された『いい人すぎるよ展』を噂に聞いて興味津々だったから、名古屋にも来ると知って楽しみにしていた。というわけで、いざ名古屋パルコへ!
『いい人すぎるよ美術館+切ないすぎるよ博物館』
東京で開催された『いい人すぎるよ展』がパワーアップして、各地のパルコで巡回開催されているというのが『いい人すぎるよ美術館+切ないすぎるよ博物館』だ。『友達がやってるカフェ/バー』など話題の企画を手掛けるクリエイティブチーム「entaku」とPARCOが共同企画したという展覧会である。
まずは『いい人すぎるよ美術館』から
その展覧会名を聞いた時から「いい人すぎるエピソード」に共感しすぎて、もしかしたら私泣くかも・・・と思っていたのだが、その予感はちょっとだけ当たった。会場を見ている間ほぼ笑い、時に爆笑、共感しながら笑いすぎて涙が浮かんだ。
会場はまず『いい人すぎるよ美術館』を観てその後『切ないすぎるよ博物館』へと進む。
『いい人すぎるよ美術館』へ足を踏み入れるとすぐ、モノトーンのイラストと共に「いい人すぎる」エピソードが額に入れられて展示。その名の通り美術館の趣である。進んでいくと、イラストではなくその場面を再現した画像と共に展示されているもの、文字だけの作品もあった。
「そういう人、いるよね」としみじみしてしまうような”あるある”や、「奇特な人だ」と感心してしまうもの、「それ、私だ」と思い当たるもの、「ん?それは普通じゃないかい?」と思うもの、「それは逆にあざとくないかい?」と突っ込みたくなるもの、様々な場面でのいい人すぎるエピソードが続く。一緒に行った娘といちいち頷きつつコメントを囁きつつ、作品一つ一つを噛みしめるように進んだ。こみ上げる笑いがこらえきれずに。
後半のほうで、実際の物が置かれて、それにまつわるエピソードが添えられているエリアがあった。「いい人すぎるよ」しばりの物ボケといった感じだろうか。
私はここがどうにも好きで、制作された方のセンスを感じずにはいられなかった。一番好きだったのがお玉の作品。「シメのことを考えて、鍋のスープをなるべく入れないよう心がけている人」である。やられた。
最後に、お客さんが大きな額の中に入って撮影できるスポットがあった。順番待ちをする人を気にして早めに切り上げる人も、撮影の邪魔にならないように立ち位置をちょいちょい変えるスタッフの方も、なんだか作品の延長のようで微笑ましかった。
続いて『切ないすぎるよ博物館』へ
その後、『切ないすぎるよ博物館』へと進むのだが、エピソードを「いい人すぎる」から「切なすぎる」に切り替えるのが難しく、少々混乱。でも慣れてくるとこちらも共感エピソード多数で、私だけじゃないのねと救われることもあり。場面を想像して胸が痛くなることもあり。こちらも、とにかく笑った。
会場は、エリアごとに壁が一面、緑、赤、オレンジなどではっきりと色分けされていて、シンプルでいながらスタイリッシュで見やすい。周りは若いお嬢さん方や初々しいカップルばかりで、パルコ自体が眩しく感じるほどの私のようなおばちゃんはちょっと浮いていたかもしれない。でも、普段は踏み入れることのない雰囲気も存分に味わわせていただいた。
開場からすぐの時間帯に行ったにもかかわらず会場はとても賑わっていたし、帰るころ入り口にはさらに列が増えていた。SNSなどで話題になったとはいえ、若い世代がこんなにも展覧会というものにお金を払って観に来ることに、正直驚いた。時代を読んでるなぁ。本格的なアートも大好きだけど、若者に混ざってたまにはこんな感じのライトな美術館も楽しい。
優しい目線の展覧会
はっきり言ってしまえば、ただ、いい人すぎるエピソード、切ないエピソードを並べただけの展覧会である。でも、短い文章でしっかりと伝わるように考えられているのをとても感じた。本当に上手く言い当てているなぁと感心もすれば、「そうきたか!」と意表を突かれる。エピソードの力だけに頼ることなく、文章、展示の仕方、表現の仕方のセンスも好きだった。一緒に行った人と分かち合えるという楽しみ方もできるのも新鮮。巡りながらオリジナルの”いい人すぎるよエピソード”や”切ないすぎるよエピソード”を思いついたり、自分のことの延長にある展覧会である。
そして、「いい人すぎるよ」も「切ないすぎるよ」もどちらもエピソードを掬い取る目線は、優しい。そんなところが刺さった一番のポイントかもしれない。気の弱さも手伝って私自身いい人すぎるよエピソードに事欠かないが、そこにクリエイティブにスポットを当てるというこの時代、面白くて優しいなと思うのだ。
観終わって、確信したこと。
「いい人すぎるよ」エピソードに気が付いた人が、一番、いい人すぎるよ!
『開運マツケン堂』!
同じ日パルコで、ハッピー感溢れる『開運マツケン堂』という期間限定ショップがやっていた。別にグッズを買うわけでもないのに引き寄せられる。キラッキラに輝くマツケンを見たいという気持ちに、理由などない。