家出のススメ_後編
その後、野暮用を一つ終え、姉夫妻と会う。
「おしゃれカフェに行くぞー」と義兄が言い、車で15分。
最近できたカフェに着く。とくにおしゃれではない。
姉と私はビールを、義兄はクリームソーダを注文する。
ぽつぽつと心の中のかけらを吐き出す。
姉は昔からこうやってわたしのどうしようもないぐるぐるした悩みや愚痴をきいてくれる。文句を言いながら。ビールをのんで煙草を吸いながら。
気の利いた言葉など言わない。励ましなどない。
その後公園っぽいとこに行ってコンビニで買ったビールを飲み、カルパスを食い、あーだこーだ、やだやだ、もうだめだと言いたいことを吐きだす。怒られながら笑いながら泣きながら。
その後、姉夫妻のアパートに移動。
二人はたわいもないことを話しながらさささーと夕食を作ってくれた。
姉が作った栗ご飯と玉こんにゃくと義兄が作った茄子の和え物。
最近ずっと食べたいものがなく、栄養のために食べていた。おいしいけどそこに喜びがなくなっていた。
姉夫婦が作ってくれたものはほんとにおいしくて、ずっとこんなごはんが食べたかったんだと思った。心がうまい~って喜んでる。
二人のアパートは漫画や写真やレコード変なフィギュアなどなど、二人の好きなものや大切にしているものがたくさんある。
煙草とお香か香水の甘いにおいとアパートの古い匂い。
ものすごく落ち着く。とても懐かしい空気。
ふと思ったのは、みえないロープみたいなもので、自分をぐるぐるまいて、へんな鎧とか身動き取れなくなってたんだな。ということ。
家に帰るころにはずっと体中にたまっていた不安や押しつぶされそうなもやもやが消え去っていた。
それでも明日はまた不安になるかもしれない。
でもまたそん時考えよう。
泣いて疲れたし酔っぱらってるし今日はお風呂に入ってゆっくり寝る。
家出のポイントは遠くに行くことではなく、違う世界に行くこと
時間の流れ、空気、見ている世界が違う人と会って話すことだな
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?