眼が悪いと保険に入れない?!
眼の病気
眼の病気には、白内障、緑内障、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎などさまざまな病気があります。また全身性疾患の部分症状として眼症状が起こることも。眼が悪くなると直ちに日常生活に支障を来たすことになるので、眼科疾患はとても重要です。
日本眼科学会(https://www.nichigan.or.jp/)が一般人向けに「目の病気」を優しくまとめてくれています。代表的な44の眼科疾患を解説してくれていますから、参考にしてみてください。糖尿病、ベーチェット病、サルコイドーシスなどの全身性疾患でも眼の障害を起こすことが分かります。
生命保険会社は眼について五月蠅い
さらに、生命保険会社は眼疾患について特に敏感です。というのも両眼を失明すると高度障害状態となり、死亡保険金相当額の高度障害保険金を支払うことになるからです。普通保険約款には、7つの高度障害状態の1つとして「両眼の視力を全く永久に失ったもの」と条項の一番目に定義されています。
対象となる高度障害状態
高度障害状態とは、つぎのいずれかの状態をいいます。
(1) 両眼の視力を全く永久に失ったもの
(2) 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
(3) 中枢神経系、精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し
終身常に介護を要するもの
(4)両上肢とも、手関節以上で失ったか、またはその用を
全く永久に失ったもの
(5)両下肢とも、足関節以上で失ったか、またはその用を
全く永久に失ったもの
(6)1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、
またはその用を全く永久に失ったもの
(7)1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で
失ったもの
白内障
さて、白内障は高齢者の病気として良く知られていますが、目がかすむ、明るいところへ出るとまぶしい、物が二重に見える、飛蚊症などの症状がでてきて、眼の水晶体とよばれるレンズが曇れば白内障の手術(水晶体超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術)を受けることになります。水晶体が白くなることから、白内障は昔からしろそこひ(白底翳)とよばれていました。白内障の手術は、眼科手術の8割を占めるほどにポピュラーな手術となり、安全に眼内レンズを交換することができます。したがって白内障になって両眼の視力を失ったとしても、手術適応がある限り高度障害とは認定されません。
多焦点眼内レンズによる白内障手術
しかし白内障の手術は、医療保険において手術給付金の支払対象です。さらに、眼内レンズとして遠近両用の多焦点眼内レンズを使用すると先進医療特約の支払対象となりました。「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が先進医療の適応となったのは、2008年7月1日からです。高齢者人口の増加により白内障の手術も増加傾向にあり、手術給付金の請求もうなぎのぼりとなり、先進医療の中で支払件数と金額とも1位となりました。2020年4月から多焦点レンズを用いた白内障手術は、先進医療から外れ、選定療養となりました。
緑内障
白内障に対して、昔からあおそこひ(青底翳)とよばれていた緑内障は、もっと危険です。一般に人間ドックなどの眼圧検査で、眼圧が高いと緑内障の疑いがあるということで眼科専門医による精密検査を受けるように推奨されます。しかし眼圧が正常な緑内障が実は緑内障患者の6割を占めます。これを正常眼圧緑内障と呼びます。一般的に緑内障では、自覚症状がほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多いです。視神経の障害はゆっくりと起こり視野も少しずつ狭くなっていくため、目に異常を感じることはありません。逆にいえば、視野欠損の自覚つまり視野が陰って暗いことに気付いたのなら、緑内障はかなり進行していて重症です。
したがって緑内障の早期発見のためには、眼圧検査だけでなく眼底検査や視野検査を受けることが大事でしょう。特に眼底検査では、視神経の状態を見るために視神経乳頭を観察します。この視神経乳頭の陥凹が拡大していると緑内障の可能性があります。
近年、低侵襲緑内障手術(micro invasive glaucoma surgery; MIGS)なるものが提唱され、その1つとしてステントを使って眼圧を下げる治療があります。
失明の原因
失明の原因として第2位を占める眼疾患に糖尿病網膜症があります。これは糖尿病が原因で網膜剥離や硝子体出血などを起こす疾患です。視力の低下から失明にいたります。眼底検査所見の軽度な順から次のように進行していきます。
単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症
糖尿病治療中であれば、HbA1cが少なくとも6.5%以下にコントロールされていないと細小血管合併症を起こし易いと考えられています。
失明の原因疾患
1.緑内障(21.0%)
2.糖尿病網膜症(15.6%)
3.網膜色素変性症(12.0%)
4.黄斑変性症(9.5%)
視力の告知
ところで普通保険約款の失明状態つまり「両眼の視力を全く永久に失ったもの」は、「視力が0.02以下になって回復の見込みのない場合」と定義されています。これは矯正視力について測定します。ふつうの近視は、強度近視(-6D、一般に裸眼視力0.04未満)でもなければ眼の障害でもなく保険加入時の告知対象にはなりません。しかしこの近視が保険会社の支払い場面で、20数年前から問題となってきました。というのも屈折矯正手術(近視矯正手術)のレーシックが開発されて手術給付金の請求が始まったからです。レーシックは角膜にフラップを作って角膜切開を行います。当初は、角膜潰瘍という診断名で請求されていたことが多かったです。このレーシック手術件数が急増するようになったため、生命保険会社は医療保険普通保険約款の対象となる手術を変更し、感覚器・視器の手術の項に「視力矯正を目的とする手術を除く」と但し書を付して不支払とした経緯があります。レーシック手術の普及が保険会社にとって想定外であったわけですね。
まとめ
以上のように、生命保険契約の高度障害保険金や医療保険の手術給付金の観点から、眼の疾病や視力障害がとても重要視されていることが分かると思います。したがって強度近視や眼科疾患を罹患していると生命保険や医療保険への加入が困難なことがあります。告知事項に該当しないふつうの近視は問題ないでしょう。
なお、2009年に銀座眼科のレーシック手術を受けた67人が感染性角膜炎を発症した事件がありましたが、レーシック手術直後は合併症の危険があるため、新規の医療保険の申込では眼球の部位不担保という特別条件が付く可能性があります。ご注意ください。