特許調査・分析を行う際は特許分類の改定(新設・廃止)を確認しよう
先日Twitterでも書いたのですが、日本経済新聞の「車載電池の市場規模は13倍も 入り組む企業相関図」というニュースを見つけて、
車載電池について調べる際には
のようなFI・Fタームを使うと良いが、これで網羅できるわけではないとツイートしました。念のためにCPCも調べたのですが、
なんと、電池の構造系特許分類であるH01M2/00がない!ということに気づき、今後より一層重要になるバッテリー分野におけるH01M2/00が2021年1月にH01M50/00に移行していることが分かりました。
特許調査を行う上でも、特許分析を行う上でも特許分類(IPC・FI・FタームおよびCPC)を適切に選択することは非常に重要です。
今回は特許分類の改定状況についてどのように確認するか記事にまとめます。
1. 特許分類改定のタイミング
特許分類(IPC)は第7版まで、2006年以前は5年に1回だったのですが、2006年のIPC第8版以降は不定期に改定されるようになりました。
第1版:1968年9月1日から1974年6月30日まで
第2版:1974年7月1日から1979年12月31日まで
第3版:1980年1月1日から1984年12月31日まで
第4版:1985年1月1日から1989年12月31日まで
第5版:1990年1月1日から1994年12月31日まで
第6版:1995年1月1日から1999年12月31日まで
第7版:2000年1月1日から2005年12月31日まで
出所:ウィキペディア
2006年1月以降の第8版は、”版”という言葉が含まれていますが、第8版の後ろにある(YYYY.MM)の年・月が改定されたタイミングを示しています。
2. J-PlatPatで特許分類の改定状況を確認する
J-PlatPatで新しい特許分類の設定状況や特許分類の廃止状況について確認するためには、特許・実用新案分類照会(PMGS)の
の
改廃情報に関しては、FI改正情報、テーマ改廃情報、テーマコード表、IPC改正表、IPC指針、IPC旧版を参照ください。
を参照します。たとえばIPC改正表をクリックすると、
のようなおそろしく洗練されていないページが表示され、2015.01~2020.01をクリックすると
のような対比表が表示されます。あくまでも対比表だけであって、分類定義は別途確認しなければいけません。
さらに厄介なのは特許分類が新設・廃止されると旧分類の定義はJ-PlatPatの特許・実用新案分類照会(PMGS)から閲覧することができなくなってしまいます。そのため、よく利用する特許分類についてはExcel等へコピペして保存しておくことをおススメします。
それ以外には、FI廃止分類、Fターム廃止分類、CPC廃止分類などが収録されている有料ツールであるClassEye2020 Pro(DJSOFT)を利用する方法があります。
3. J-PlatPatのPMGSは更新が遅い!?
上述の通り、J-PlatPatの特許・実用新案分類照会(PMGS)で特許分類の改定状況を確認することができるのですが、こちらは最新の状況が反映されていません。
冒頭にご紹介した2021年1月1日に新規設定されたH01M50/00は、2021年2月11日現在
のようにIPC・FIとも収録されていません(H01M50/00が設定されてから1か月以上も経過しているのに)。
それでは、なぜ私はH01M2/00からH01M50/00へ移行したことが分かったのか?というと、特許・実用新案分類照会(PMGS)とは別に分類照会ツールを確認したからです。
左がIPC、中央がFI、右がCPCとなります。IPCとCPCにはH01M2/00がないことが分かります。
こういう場合は、「あ、H01M2/00は別の分類に移動したんだろうな」と思いましたので、下の方を見ていったら
H01M50/00があり、分類定義をH01M2/00と比較すると
H01M2/00 発電要素以外の部分の構造の細部またはその製造方法[2]
H01M50/00 燃料電池以外の電気化学的電池,例.混成電池,の発電要素以外の部分の構造の細部またはその製造方法[2021.01]
ほぼ同じ内容なので、H01M2/00からH01M50/00へ移行したのだと分かりました。
4. WIPO・IPCウェブサイトで改定状況を確認
H01M2/00からH01M50/00へ移行したことはほぼ間違いないのですが、ちゃんと確認するためにはWIPOのIPC検索ページを見ます。
こちらの、タブメニューから[RCL]をクリックすると、
左側に2021.01 Versionとありますので、2021年1月に改訂されたIPCにH01Mが含まれていることが確認できます。さらにH01Mをクリックすると、
のようにH01Mの中で2021年1月に新規に設定された特許分類と旧分類の対応表が表示されます。これでH01M2/00がH01M50/00 - 50/77へ移行したことがしっかりと確認できました。
左側のラジオボタンをデフォルトの[Old-to-New]から[New-to-Old]にすると、新分類に対応する旧分類を確認することができます(その際はVersionも選択しなおしてください)。
なお、WIPOのIPCウェブサイトでは
今後改定予定の特許分類(IPC)についてのニュースが掲載されています。
2006年以降の第8版では不定期に特許分類が改定されるといいましたが、毎月改定されているわけではないので半年に1回程度はこちらのニュースを確認して、今後改定される予定の特許分類について確認しておくと良いでしょう。
5. まとめ-特許分類が改定されたら新分類だけを利用すれば良いの?
以上、特許分類の改定状況の確認方法についてIPCを中心に説明してきました。
最後に自分が今まで調べてきた技術分野の特許分類が改定された際の対応方法について触れておきます。
新しい特許分類が設定されると、以後の特許公報(公開特許公報・登録公報)には新分類が付与されます。一方で、過去の古い公報は数年かけて新しい特許分類が再付与されます。
新しい特許分類が設定されたからといって、旧分類は全く利用しなくて良いのではなく、新しい特許分類と併用すると良いでしょう。また、旧分類が必ずしも新分類に再付与されるわけではないので、旧分類も併用しておかないと検索モレが生じてしまう可能性がある点にも注意が必要です。
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