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特許情報分析とパテントマップ作成入門 第3版の発刊に当たり

「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

最近M-1グランプリ予選にも出場したので、知財情報コンサルタント兼お笑い芸人と称すこともあります。

とうとう拙著『特許情報分析とパテントマップ作成入門 第3版』が9月8日に発行されます。

発行直前ですが、第3版の概要等を知っていただくために、第3版の発刊に当たり(はじめに)を公開させていただきます。

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 本書の初版が2011年、改訂版が2016年に発行され、既に初版から10年以上の歳月が経過した。その間、数多くの読者に恵まれ、特許情報分析を企業の知財活動だけではなく、経営・事業や研究開発戦略策定に活用していただけたことは著者として望外の喜びである。

 この10年ほどの間で特許情報分析を取り巻く環境は大きく変化した。その中でもとりわけ大きな変化は、2017年4月に発表された知財人材スキル標準(version2.0)において、知財人材が持つべき戦略レベルのスキルとして「IPランドスケープ」が導入されたことと、2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されて「知的財産への投資」に関する情報開示・発信が盛り込まれたことであろう。この影響もあり、特許情報をはじめとした知財情報分析を研究開発戦略だけではなく、事業戦略やマーケティング戦略、そしてIR戦略へ活用しようという機運が高まっている。

 そのほかにもこの10年ほどの間に、第三次人工知能ブームを背景に機械学習を活用したツールをはじめ、機能性に優れたさまざまな特許分析ツールがリリースされた。また、直近ではChatGPTをはじめ、生成AIブームの今後の動向も注目である。

 著者が日本技術貿易株式会社(現在のNGB株式会社)に入社した2002年は、小泉純一郎首相(当時)が内閣施政方針演説において憲政史上初めて知的財産に言及した年である。知財立国宣言を受けて特許庁が提唱したコンセプトが、本書のサブタイトルにもなっている「経営戦略の三位一体」である。特許情報、広義にいえば知財情報を経営戦略や事業戦略へ活用するという試みは決して新しいものではなく、知財部門にとって長年の課題であった。その課題達成が容易ではなく、さらにはさまざまな製品・サービスがコモディティ化してしまった現在だからこそ、特許情報も積極的に活用してデータドリブン・データ駆動型で自社オリジナルの戦略を策定する重要性がより一層増しているといえるであろう。

 第3版では、初版からの特徴であるMS Excel を用いた特許情報分析・パテントマップ作成のテクニックについて詳述する点は変えていないが、経営・事業に活用することを意識して、記載等を充実させた。特許情報分析・パテントマップを事業に活用するためには、ビジネス的な視点で特許情報を料理しなければならない。そこで必要になるのが仮説・分析ストーリー構築からの戦略策定である。今回の改訂では最近の分析・コンサルティングプロジェクトでのご相談が多いこの点についても解説を加えている。

 さらに、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)の機能改善や、無料で利用可能なテキストマイニングツールの登場により、高価な分析ツールを導入しなくても、J-PlatPatとMS Excelだけで事業に活用するための特許情報分析を実施できる環境が整ってきた。この点を踏まえてJ-PlatPatとMSExcel・無料ツールだけでも十分な特許情報分析から戦略立案を行うことができるように改訂した。今回の主な改訂のポイントは以下のとおりである。

  • 知財人材スキル標準(version2.0)を受けて、IPランドスケープに関する記載や事例を追加(例:序章、第7 章、COLUMN など)

  • 特許情報分析プロジェクト・パテントマップ作成の流れを全面的に修正し、課題の見極め、仮説・分析ストーリーの構築について説明を拡充(2.5)

  • 改訂版ではCOLUMNで説明していたJ-PlatPat を用いた特許リストの作成方法を、第3 章内へ移動し、J-PlatPat とMS Excel だけで特許分析・パテントマップを作成することが可能なことを強調

  • ピボットテーブルだけではなく、関数を活用した特許情報分析・パテントマップ作成についても追加(3.6)

  • 第5章と第6章を入れ替えて、特許および特許以外の情報収集・分析を行った上で、総合的に特許情報分析結果・パテントマップの解釈を行い、戦略策定につなげる流れへ変更

  • 第7章の「特許情報分析・パテントマップの組織への定着」については全面的に内容を変更

  • 読者サポートウェブサイトを開設し、本書で引用・紹介している文献のみならず、参考になると思われる「800件超」の文献(書籍、論文等)の詳細な書誌情報を「引用文献・参考文献リスト」として公開 

 ぜひ本書を読んで、特許情報分析を実践することで「知財情報を組織の力に」を実現していただきたい。

 最後に、IP ランドスケープに積極的に取り組んでいる旭化成株式会社知財インテリジェンス室シニアフェローの中村栄様にはご多忙の中、原稿を読んでいただき、帯文を寄せていただいた点に感謝申し上げたい。また、第3版の出版に当たり多大なご協力をいただいた発明推進協会の原澤様をはじめとした皆さま方に心から感謝の意を表したい。

2023年8月 野崎 篤志

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今回は読者サポートウェブサイトを開設させていただきますが、こちらは発売日前日の9月7日よりアクセスできるようにする予定です。

なお、9月13日から15日までビッグサイトで開催される2023特許・情報フェア&コンファレンスに当社イーパテントも出展しております。フェアにお越しの際はぜひお立ち寄りください。


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