知財業界での教育ー教育される側と教育する側-弁理士の日記念ブログ企画2024
「知財情報を組織のチカラに®︎」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
また今年も弁理士の日記念ブログのシーズンがやってきました。
今年のテーマは「知財業界での教育」ということですが、私は業界に入って調査・分析など情報関係の業務のみに従事してきたので、特許検索や特許分析に焦点をあてて書いていきたいと思います。
新卒入社当時ー2002年ー
大学院を修了して、日本技術貿易株式会社IP総研に配属されましたが、当時の教育というとOJTが中心でした。
あとはPATOLIS、ジー・サーチ、化学情報協会などのデータベースベンダーさんが開催しているセミナーでした。
といってもデータベースベンダーさんのセミナーは、データベースの使い方の解説が中心なので、検索式の立て方、公報の読み方、特許分析の考え方・テクニックなどを教えてくれるわけではありせんでした。
今のように特許検索や特許分析に関する書籍もほとんどなかったのですが、少なかった書籍の中で思い出に残る1冊、そして私の特許検索・特許調査の基礎を築いてくれたのが「ひとりでできる特許調査」でした。
これで情報科学技術協会(INFOSTA)、OUG特許分科会の存在を知りましたが、当時は社外の活動には参加せずに職場の先輩やクライアントにいろいろと教わっていました。
教育される側から教育する側へ
教育される側から教育する側になったのは2006年、技術情報協会から「Excelによるパテントマップ作成・活用のノウハウ」の通信講座講師を依頼された時が最初です。
2002年入社なので4年目でしたが、2005年7月にイーパテントの社名の由来ともなった e-PatentMap.net というサイトを立ち上げたことで、技術情報協会の方からコンタクトいただきました。
この通信講座「Excelによるパテントマップ作成・活用のノウハウ」のテキストがベースとなって、セミナーもやるようになり、(一般書店には並びませんが)書籍を出版させていただき、そして赤本出版へとつながっていきます。
教育する側になって
上述の通り、私が新卒で入社した際はほとんど特許検索や特許調査などのテキストはありませんでした。OJTといえば聞こえは良いですが、ついた先輩によってやり方はそれぞれ異なります。
自分が教育する側になって意識しているのは
可能な限り形式知化しよう
という点です。
MBAで学ぶフレームワークとまではいきませんが、たとえば、特許検索式の作成の仕方を構造化して、誰でも一定の品質の検索式を作成できるようにする、そのために特許検索マトリックス🄬や関連性マトリックス🄬などを作成して商標出願したりしています。
大学院での教育
あと教育という点では、大学院での教育という点についても触れておきたいと思います。
実は私は20歳ぐらいの時から、ぼんやりとした夢を持っていました。
1つ目はコンサルタントとして独立すること
2つ目は大学で教える立場になること
3つ目は書籍を執筆すること
実は3つとも実現したのですが、この2つ目の「大学で教える立場になること」というのも偶然が重なってのことでした。
私が大学院で教鞭をとらせていただいたのは東京理科大学工学部の非常勤講師でした。その次の年から東京理科大学院知的財産戦略専攻(MIP)の非常勤講師を務めさせていただきました。
ちょうど東京理科大学院知的財産戦略専攻(MIP)がなくなってしまう頃にお声がけいただいたのがKIT虎ノ門大学院です。
実はこの2つの大学院での客員教員のポジションに指名いただいたのは、前任のご都合に関係していて、ホント偶然としか言いようがありません。
セミナー・講演や論考執筆なども好きなのですが、大学院での授業、特にKIT虎ノ門大学院で担当している「特許情報実務特論」は、院生の方の熱意・熱量がすごいので、私の方も大変学びになっています。
学ぶことは・・・
よく
学ぶとは真似ぶ
と言ったりします。学ぶことはやはり他者の模倣から始まるというのは昔から変わらぬ真理だと思います。とはいえ、最近では生成AIをうまく使いこなすことで学びのスピードを飛躍的に早くすることができますが。
もう1つ、学びについて思うのが、
教えることが最大の学び
ということです。
私は幸い、20代のころから、教育される側だけではなく、教育する側の経験をすることができました。
教育する側になって思ったのは、学んだことをアウトプットして伝えるためには、自分の頭の中にある経験・知識などを再構成して、伝えやすいカタチに整えなければいけないということです。
これこそ教えることによる自らの学びだと思います。
今はソーシャルメディア、TikTok、Youtubeなどの各種媒体で気軽に情報発信することができます。またUdemyのようなプラットフォームを利用して、自ら積極的に教える立場に立つことも可能です。
私としてはぜひとも知財業界での教育において、教育される側にいる方も自ら積極的に教育する側に立つことで、より学びが加速することを強調したいと思います。
ちなみに、上記で教育する側の話を中心にしてしまいましたが、プロフェッショナルとして日々常に学びだと思っていますので、日々教育される側の立場でもあるという点は最後に述べておきたいと思います。