第1回 IPランドスケープとは?|IPランドスケープ、パテントマップ、知財情報分析・・・
2017年4月に知財人材スキル標準(version 2.0)が発表されました。Version1.0は発表されたのは2006年だったので、実に10年ぶりの改定になります。
Version1.0の戦略機能の企画・プロデュース(1.1.1)としては、
が定義されていましたが、知財人材スキル標準(version 2.0)になって、企画・プロデュース(1.1.1)が戦略(1.1.1)となり、その下位に位置づけられるスキルとして、
の4つに修正されました。
知財情報分析・コンサルティング界隈で仕事をしているので、4月以降知人・友人やお客様から「IPランドスケープとは何?」とか「IPランドスケープって新しいの?」等、質問を受ける機会が増えました。
以下がIPランドスケープのスキル標準の本体カードの内容です。
以下について、事業部門/知的財産部門/研究開発部門と連携し、業務を行うことができる。
簡単に言えば、特許情報などの知財情報だけではなく、それ以外のマーケット情報・企業情報なども加味して、分析・解析した上で、自社事業(既存・新規両面で)に貢献するスキル、になるかと思います。
IPランドスケープというのが新しいのか?という点では、
知財分析を経営の中枢に
「IPランドスケープ」注目集まる M&A戦略に生かす
のような形で注目されること自体は良いと思いますが、ランドスケープという言葉自体はそれほどユニークな言葉ではありません。
2012年にランドンIPに転職した際に、欧米ではパテントマップ(patent map または patent mapping)という言葉はほとんど使わず、パテントランドスケープ(patent landscape)と読んでいました。
例えばGoogleトレンドで「patent landscape」と「IP landscape」の検索ボリュームを比較してみると下記のようになります。
またWIPOはPLRsというPatent Landscape Reportsという、日本の特許出願動向調査報告に似たようなレポーティングを2011年から行っています。
日本語でいえば、Patent Landscapeといえば、特許情報分析や知財情報分析、またはパテントマップ、特許マップというような意味合いになります。
ただ、既に特許情報分析と言いながら特許情報だけで分析できると主張する方もいないと思いますので、「特許」情報分析や「知財」情報分析と言いながらも、実際のところは「特許+特許以外の」情報分析だったり、「知財+知財以外の」情報分析だったわけです(もちろん、特許情報・知財情報が主であり、特許・知財以外の情報が従ではありますが)。
そのため、最初にIPランドスケープという言葉を見たときに、特に新しさを感じたわけでもないですし、特許情報分析とか知財情報分析という言い方を少し洗練させたらこうなるのかな、という印象でした。
そもそも、Landscapeは辞書での意味が示すように
俯瞰を含意していますので、知財人材スキル標準(version 2.0)でIPランドスケープというスキルを新設したのは言葉の持つ意味とマッチしていると思います。
経営戦略の三位一体が唱えられて早15年。
経営戦略の三位一体を実現するためには知財情報分析、知財人材スキル標準(version 2.0)でいうところのIPランドスケープというスキルが必要となります。
この15年でデータベース・ツールなどのシステム面でのインフラもかなり整いましたし(15年前に比べると分析ツールはかなり充実してきています。その一例は「知財情報の有効活用のための効果的な分析方法に関する調査研究」を参照)。また知的財産協会(JIPA)のマネジメント委員会や情報検索委員会や3i研究会、パテントマップ研究会、PAT-LIST研究会を始めとした委員会や研究会活動、知的財産アナリストなどの資格制度など人材育成面でのインフラもかなり整ってきました。
新設されたIPランドスケープというスキル自体は、日本の企業でも(全部とまでは言えなくても一部)既に実施している企業もあると感じていますし、欧米企業の方が進んでいるという感じも受けません。
あえて言えば、知財人材以外の方(=知財部門以外の方、特にマネージャー以上の層)の知財に対する理解が欧米企業・金融機関やVCの方が圧倒的に進んでいる、知財を企業・事業戦略の一手段としてしっかりと認識している、と感じます。
欧米企業はこういう分析手法を使っている、こういう分析ツールで良い結果が出ているというのは1つのベンチマークとして必要かもしれませんが、その前になぜ知財情報分析や、ここでいうIPランドスケープがその組織で根付いているのか?、活用されているのか?というところにこそ注目すべきかと思います。
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