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けん玉に関する日本最古の出願は?-古い特許・実用新案は分類ベースで探す-
「知財情報を組織の力に🄬」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
2022年8月5日(金)から池袋HUMAXシネマで映画「知的財産村の財宝」の劇場公開が開始しました。私も8月6日に家族で見に行きましたが、8月14日までに上映なので、ご都合合う方はぜひとも劇場まで足を運んでいただければと思います。
さて、映画「知的財産村の財宝」には悪役としてけん玉を操る海賊の船長が登場するのですが
面白かった‼️
— トーゴ@大人けん玉専科 (@KendamaTasken) August 10, 2022
ちなみにけん玉は
大正8年5月14日に「日月ボール」として実用新案登録されていて、それとは別に、けん玉協会の認定けん玉(F16-2型)は昭和50年代に実用新案・意匠登録されてる。
トンデモ設定の映画だけど、知的財産についてもっと知りたくなるキッカケになりました。#知的財産剣 https://t.co/eA0bCAg6vI
昨日劇場で映画をご覧になった方のツイートで、けん玉の知的財産について触れていました。
どんな実用新案・意匠なんだろうか?と気になったので、けん玉の特許・実用新案および意匠について調べてみました。
1 J-PlatPatで最古のけん玉の特許・実用新案を探す
J-PlatPatには明治時代以来の日本特許・実用新案情報がすべて収録されています。しかし、明治時代や大正時代など古い時代の特許はキーワード検索することができません。
その際、どのように古い特許・実用新案を探すのか?というと、FIまたはFタームです。特許・実用新案分類照会(PMGS)で探すよりも、キーワード検索から関連特許分類を特定した方が効率的なので、その方法について説明します。
まずは【発明の名称】=けん玉で検索します。
![](https://assets.st-note.com/img/1660187478991-pgPFxbWx5K.png?width=1200)
29件ヒットしますので、FIをざっと眺めます。
![](https://assets.st-note.com/img/1660187497402-HlYUFgkM96.png?width=1200)
すると A63B67/08@G がほぼ全件に付与されていることに気づきますので、このFIの定義を確認すると
![](https://assets.st-note.com/img/1660187621206-7iU3lC3OtX.png?width=1200)
まさにけん玉(剣玉)に関するFIでした(対応Fタームのテーマコードとして2C077がありますが、こちらはクリックしていただくとわかるように、FI型Fタームなので細分化されていないため利用できません)。
けん玉関連FIが特定できたので、FI=A63B67/08@Gで検索します。
![](https://assets.st-note.com/img/1660187734627-I1J1x1BI3P.png?width=1200)
すると153件がヒットしました。明治時代以降で153件ですから少ないですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1660187749519-ZucRsHXRWD.png?width=1200)
さて、一番下までスクロールすると一番古い特許または実用新案になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1660187808628-JepAoYdzqH.png?width=1200)
さて、上述したツイートには
![](https://assets.st-note.com/img/1660200049316-M3XWRcFPPV.png)
とあったのですが、実はけん玉関連特許分類であるA63B67/08@Gが付与されている最古の出願は実明38834の「玉受羽子板」でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1660200081316-jOOWTUcFSq.png)
図面を見てみると
![](https://assets.st-note.com/img/1660200152638-7zt0v5EzCQ.png?width=1200)
なるほど、確かにけん玉っぽいですが、ちょっと違いますね。確かに名称にある通り羽子板です。そこで2番目に古い出願実明48672を見てみると、
![](https://assets.st-note.com/img/1660200209021-J5v9L3Vhcz.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1660200245832-Dn0qVXMAJp.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1660200261950-rqGO7FpZro.png)
のように、まさに現在も利用されているけん玉でした。名称もツイートに会った通り「日月ボール」でした。この実用新案の考案者である江草濱次氏の名前で検索したところ
江草氏がけん玉製造をお願いした廿日市のページが見つかりました。また「けん玉100周年でバトル勃発!? 発祥の秘話が明らかに!」という動画もありましたのでご興味あればぜひ。
このように、古い特許・実用新案を調べたい場合は、FIやFタームベースで調べていくことになります。
2 J-PlatPatでけん玉協会認定けん玉の特許・実用新案を探す
最古のけん玉関連実用新案は特定できましたが、けん玉協会認定の実用新案はどう探すのか?
ツイートには昭和50年代と書いてありますので、再びFIでの検索結果一覧に戻って、昭和50年代に検索結果を見てみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1660202326018-BDCUUdpuwG.png?width=1200)
実は、検索結果一覧を見ても出願人=けん玉協会は見つかりません。となると個人名義で出願していて、その後けん玉協会に権利譲渡した可能性がありますので、いわゆゆるスタンダードなけん玉関連の名称であって個人名義の出願を探していくと。。。。
見つかりました、藤原一生氏の実全昭53-149699です。
![](https://assets.st-note.com/img/1660202508447-HUWcxB2SRs.png)
どうやって見つけたかというと、まずは実用新案の図面をざっと確認していく、実全昭53-149699が一番スタンダード(=けん玉協会認定になりそうな)けん玉の図面だなということで、出願人である藤原一生氏の名前で検索したら
のような本も出版されていますし、けん玉協会創設者であることも分かりました。
これであれば実全昭53-149699がけん玉協会認定のけん玉関連実用新案であると言ってよいでしょう。
3 J-PlatPatで最古のけん玉の意匠を探す
次に意匠はどうすれば良いのでしょうか?
実は意匠も同じように、まずキーワード検索でけん玉関連の日本意匠分類(Ðターム)を特定して、分類ベースで探していきます。
もともと意匠を検索する際は、キーワード検索だけでは危険で、意匠分類ベースで検索するので、古い意匠を探す際も最近の意匠を探す際もそれほど大きな違いはありません。
さて、J-PlatPat意匠検索メニューで「けん玉」で調べてみると、
![](https://assets.st-note.com/img/1660200674744-JUlbjl8RBl.png?width=1200)
23件がヒットしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1660200775387-c1MtA89XK7.png?width=1200)
意匠分類を確認すると、E2-404が多く付与されており
![](https://assets.st-note.com/img/1660200814664-Syg2hBrG1w.png?width=1200)
分類定義からも剣玉であることが分かりました。この意匠分類を使って分類ベースで検索をします(E2-404のハイフンは除いて、E2404で検索します)。
![](https://assets.st-note.com/img/1660201008059-BIUyIOVhRl.png?width=1200)
このまま検索すると28件ヒットしますが、実は古い意匠がヒットしません。古い意匠を検索する場合[旧分類変換]をクリックして、
![](https://assets.st-note.com/img/1660200990590-Zkyu8LzbL0.png)
[旧日本意匠分類]に変換してから検索します。すると、旧日本意匠分類時代の89件の意匠がヒットします。
![](https://assets.st-note.com/img/1660201082093-0Ihbwab9hX.png?width=1200)
古い方の意匠を見てみると、
![](https://assets.st-note.com/img/1660201186910-3HBcGvhfpe.png?width=1200)
画像がありません。意匠番号をクリックすると、
![](https://assets.st-note.com/img/1660201217859-piJiNSTuqY.png)
こちらの意匠登録0003570がけん玉関連の最古意匠になるのですが図面がないので分かりません。。。
4 J-PlatPatでけん玉協会認定けん玉の意匠を探す
さてツイートにあったけん玉協会の認定けん玉(F16-2型)の意匠ですが、まず認定けん玉は
のようになっています。意匠の一覧を見ても
![](https://assets.st-note.com/img/1660201437261-cariff8zLM.png?width=1200)
古い意匠には、【意匠に係る物品】や【意匠権者】がリスト表示されていないので1件1件見ていくしかありません。
ちなみに上記のリストにも掲載されていますが、意匠登録1193238は特定非営利活動法人日本けん玉協会の意匠です。
![](https://assets.st-note.com/img/1660201550933-9xaIAZbvIn.png?width=1200)
ツイートにあった昭和50年代の認定けん玉(F16-2型)の意匠を探したのですが。。。。残念ながら見つかりませんでした(上述の藤原一生氏が創作者の意匠があるかなと思いましたがありませんでした)。
ひょっとすると特定非営利活動法人日本けん玉協会の意匠登録1193238が認定けん玉(F16-2型)の意匠なのかもしれません。
今度機会があればけん玉協会に問い合わせしてみようかと思います。
おわりに
というわけで、現在映画公開中の「知的財産村の財宝」に登場するけん玉をテーマに取り上げてみました。
「知的財産村の財宝」は2022年8月14日まで池袋HUMAXシネマの地下2階シアター5で公開されていますので、ご興味あればぜひ映画館まで足を運んでいただければと思います。地下2階の受付にて当日券を購入することも可能です。
あと、私も映画にエキストラとして出演しているので、どこに登場しているのか、ぜひ探してみてください。
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