【特許から見る】麻雀に関するテクノロジーの状況
イーパテントYoutubeチャンネルのエンタメ企画「スナックのざき」に続いて、来月4/18(日)21時から「雀荘のざき」がスタートします(ライブ配信限定なので、4/19以降に本記事をご覧になっている方はYouTubeアーカイブ動画をご覧いただけないのでご了承ください)。
雀荘のざきオープンを記念して、麻雀関連のテクノロジーについて特許出願動向から確認してみました。
1. 麻雀関連特許といえば
麻雀関連特許といえば、有名なのは菅直人元首相の出願です。
J-PlatPat特許・実用新案検索メニューで発明者を 菅,1C,直人 と指定して検索します。
ヒット件数は104件(2021年3月20日現在)ですが、菅直人元首相の特許は一番下にありました。
特開昭50-025150/特公昭58-017632
麻雀の点計算表示装置
【特許請求の範囲】
1 親の位置情報入力手段と、和家の位置情報入力手段と、放銃者(自模の場合を含む)の位置情報入力手段と、符の情報人力手段と、翻の情報入力手段と、これらの入力手段の全てと電気的に接続された中央処理手段と、該中央処理手段に連結された少くとも1つの表示手段とを備え、上記入力手段の入力情報に応じて競技者各人の得点及び失点を該表示手段に表示することを特徴とする麻雀の点計算表示装置(注:OCRでテキスト化していたため、一部私の方で修正)。
私も麻雀は好きなのですが、麻雀の得点計算についてはしっかりと覚えていないため(全自動雀卓やオンライン麻雀ゲームであれば自分で点数計算しなくて良いのですが)、こういう技術はありがたいですね。
2. 麻雀関連の特許分類はあるのか?-母集団検索式の作成-
それでは麻雀関連の特許について確認していきましょう。
まずはJ-PlatPat特許・実用新案検索メニューで[発明の名称]で 麻雀 マージャン とキーワードで予備検索を行います。
期間限定はしていませんが、1,000件以上がヒットします。
[分類コードランキング]でFIメイングループをチェックしてみます。
A63Fのゲーム関連のところに集中しており、さらにA63F9(他に分類されないゲーム)が付与されている特許が多そうです。
実際にヒットした一覧を眺めてみると、
A63F9の中でもA63F9/20が多そうなので、特許・実用新案分類照会(PMGS)で定義を確認していきます。
A63F9/20 ・ドミノゲームまたはそれに類似するゲーム;麻雀ゲーム[2006.01]
A63F9/20,501 ・・ドミノゲ-ム
A63F9/20,501@A ドミノ牌
A63F9/20,501@B ・構造
A63F9/20,501@C ・・表示に特徴
A63F9/20,501@Z その他のもの
A63F9/20,511 ・・麻雀ゲ-ム
A63F9/20,511@A ゲ-ム管理、料金計算
A63F9/20,511@B 付属具
A63F9/20,511@C ・パイ立て具
A63F9/20,511@D ・容器、ケ-ス
A63F9/20,511@E 麻雀の練習
A63F9/20,511@Z その他
A63F9/20,512 ・・・卓台またはマツト
A63F9/20,512@A 組み立て式
A63F9/20,512@B 折り畳み式
A63F9/20,512@C 天板
A63F9/20,512@D 脚、折り畳み脚
A63F9/20,512@E 他ゲ-ムとの組み合せ、兼用
A63F9/20,512@F 他装置との組み合せ、兼用
A63F9/20,512@G 付属手段の設置
A63F9/20,512@H ・牌整列手段付、保持手段付
A63F9/20,512@J ・加熱手段付、送風手段付
A63F9/20,512@K ・照明手段付
A63F9/20,512@L ・収納部付
A63F9/20,512@M ・灰皿等の置台付
A63F9/20,512@Z その他のもの
A63F9/20,513 ・・・表示具または表示具付卓台
A63F9/20,513@A 場風、親、リ-チの表示
A63F9/20,513@B 点数の表示
A63F9/20,513@C ・点棒、計算尺によるもの
A63F9/20,513@D ・点棒を読取り自動的に表示するもの
A63F9/20,513@E ・計算機を用いるもの
A63F9/20,513@F ・早見表
A63F9/20,513@G さいころ振出装置の卓台への設置
A63F9/20,513@Z その他のもの
A63F9/20,514 ・・・牌の構造または製造方法
A63F9/20,514@A 牌の構造
A63F9/20,514@C ・特殊なものを有するもの
A63F9/20,514@D ・・重りが入つているもの
A63F9/20,514@E ・・磁石等をもつもの
A63F9/20,514@F 形状に特徴
A63F9/20,514@G ・丸形、正方形等
A63F9/20,514@H 表示に特徴
A63F9/20,514@J 製造方法
A63F9/20,514@Z その他のもの
A63F9/20,515 ・・・牌の清掃,研磨
A63F9/20,515@A かきまぜて行うもの
A63F9/20,515@B 並べて清掃、研磨するもの
A63F9/20,515@Z その他のもの
A63F9/20,516 ・・・自動装置(例.卓の上で行なう自動化)
A63F9/20,516@A 天板の上において行うもの
A63F9/20,516@B 天板と別体に行うもの
A63F9/20,516@Z その他のもの
A63F9/20,517 ・・・・全自動装置
A63F9/20,517@A 牌の投入口装置
A63F9/20,517@B 牌の洗牌
A63F9/20,517@C 搬送手段
A63F9/20,517@D 整列装置
A63F9/20,517@E 牌の積重ね
A63F9/20,517@F 整列牌の押し出し装置
A63F9/20,517@G ・手牌に関するもの
A63F9/20,517@H 異物排除
A63F9/20,517@J 三人麻雀用
A63F9/20,517@Z その他のもの
となりました。麻雀関連でかなり細分化されていますね。。。(ここまで細分化されているとは予想外でした)。
よって、A63F9/20,511 ・・麻雀ゲ-ムを下位分類であるA63F9/20,512、A63F9/20,513、A63F9/20,514、A63F9/20,515、A63F9/20,516、A63F9/20,517を含めて選択すれば麻雀関連特許を抽出できそうです(J-PlatPatではA63F9/20,511で検索すれば自動的に下位分類も含めて検索します)。
対応するFタームテーマコードが2C084ですが、2C084をクリックしてもFタームが細分化されていません(このようなFタームをFI型といいます)。そのためFタームの追加検討はしません。
一応、念のために特許・実用新案分類照会(PMGS)のキーワード検索でも補足しておきます。
すると、
1 A63F1/04@A 麻雀カ-ド
2 A63F9/20 ・ドミノゲームまたはそれに類似するゲーム;麻雀ゲーム[2006.01]
3 A63F9/20,511 ・・麻雀ゲ-ム
4 A63F9/20,511@E 麻雀の練習
5 A63F9/20,517@J 三人麻雀用
6 A63F13/80@A 盤上ゲーム,例.囲碁,将棋,双六,麻雀
7 B42D15/00,331@P ・囲碁,将棋またはマージャン
8 G06C3/00,321@L ・麻雀
が見つかります。
A63F1/04@A 麻雀カ-ド
A63F9/20,517@J 三人麻雀用
G06C3/00,321@L ・麻雀
の3つは定義が麻雀に限定されているので、特許分類のまま利用しますが、
A63F13/80@A 盤上ゲーム,例.囲碁,将棋,双六,麻雀
B42D15/00,331@P ・囲碁,将棋またはマージャン
は麻雀以外のものも含んでいますので、特許分類のまま利用するのではなく、キーワードをAND演算していきます(FIの分冊記号=@レベルの分類になりますので、キーワード範囲は全文とします)。
これで特許分類の検討が終わりましたので、検索式(論理式)を作成します。
パターン1:キーワードのみ(発明の名称・要約)
[麻雀/TI+マージャン/TI+麻雀/AB+マージャン/AB]
パターン2:特許分類のみ(今回はFIのみ)
[A63F9/20,511/FI+A63F1/04@A/FI+A63F9/20,517@J/FI+G06C3/00,321@L/FI]
パターン3:キーワード AND 特許分類(全文)
[A63F13/80@A/FI+B42D15/00,331@P/FI]*[麻雀/TX+マージャン/TX]
これら3つの式をOR演算(+)して、麻雀関連日本特許・実用新案の母集団ができあがります。
[麻雀/TI+マージャン/TI+麻雀/AB+マージャン/AB]+[A63F9/20,511/FI+A63F1/04@A/FI+A63F9/20,517@J/FI+G06C3/00,321@L/FI]+[A63F13/80@A/FI+B42D15/00,331@P/FI]*[麻雀/TX+マージャン/TX]
こちらで検索すると、日付限定なしで2,413件(2021年3月20日現在)でした。2001年1月1日以降の出願に限定すると491件でしたので、こちらの491件をベースに出願状況を分析していきます。
3. 日本の麻雀関連出願状況
2001年以降で特許443件、実用新案48件の計491件となります。まずは件数推移です(2019-2021年出願は未確定値)。
2003-2004年に出願のピークがありますが、その後減少傾向です。2003~2004年に麻雀関連で注目を浴びるようなイベントがあったのか確認してみましたが、コレといったイベントはありませんでした。
次に麻雀関連出願を積極的に行っている企業(出願人・権利者)です(出願人・権利者名は私の方で名寄せしています)。
ユニバーサルエンターテインメント、コナミやセガサミーなどのアミューズメント企業やコロプラのようなスマホゲーム企業のランクインしています。1名個人発明家がランクインしていますが、この方は2004年にオンライン麻雀ゲームをスタートした株式会社シグナルトークの代表取締役でした。
麻雀というと、構造的な発明・考案のイメージが強いので実用新案でも結構出願しているのかなと思いましたが、2001年以降に限定すると上位企業はほとんどが特許出願ですね(実用新案法の改正によって1990年代半ばから、日本の実用新案出願件数が減少しているのも影響していると思います)。
さて上位企業の出願件数推移を見てみます。
累積件数が多い上位企業といっても出願のほとんどが2000年代に集中しており、2010年代以降も積極的に出願を行っているのはコロプラぐらいです。
コロプラがマージャン卓のようなハードウェア系の出願をしているとは考えにくいので、上位企業のFIメイングループ別件数分布を見てみましょう(FIの説明は私の方で作成しています、またFIは筆頭FIとなります)。
麻雀卓や牌などに注力しているのはマツオカグループやジョイスなどの全自動雀卓を手掛けている企業で、トップのユニバーサルエンターテインメントやコナミグループ、コロプラはゲームへの出願が多く、セガサミーは以下のようなパチンコ・パチスロでした(私はパチンコやパチスロはやらないので詳しくないのですが・・・)。
4. コロプラはどんなテクノロジーに注力しているのか?
さらに最近出願を強化しているコロプラに焦点を当てて、詳細なFIを見ていきたいと思います(FIの説明は私の方で作成しています、またFIは筆頭FIだけではなくJ-PlatPatで表示されているすべてのFIを用いています。しかしJ-PlatPatは最大3つまでしかFIが表示されないので、完全にすべてのFIを網羅しているわけではありません)。
本当は発明の名称のテキストマイニングで傾向が見れないかとも思ったのですが、コロプラ出願のほとんどの発明の名称が「ゲームプログラム、ゲーム方法、および情報処理装置」なので断念しました。。。
スマホの麻雀ゲームに特徴があるA63F13/80@A(盤上ゲーム)が最も多いですが、次いで多いのがA63F13/69(アップデート)系でした。
より詳細な出願概況を把握するのであれば、有料データベースを用いて【要約】などをダウンロードしてテキストマイニングを行えば良いでしょう。
まとめ
以上、雀荘のざき開店オープン記念に先立ち麻雀関連の出願状況について確認してみました。
私自身、最近練習も兼ねて(あと仕事の合間の息抜きに)スマホで麻雀ゲームをすることがありますが、麻雀卓や牌などから、コロプラのようなスマホゲームメーカーが中心となった特許出願へ移行しているのが分かりました。
なお、雀荘のざきは4月以降も2~3か月に1回程度の頻度で開催しく予定ですので、参加希望の方はTwitterやFacebookのDMでご連絡いただければと思います。