【特許とマーケティング】マーケティング戦略と知財情報【前編】
以前に投稿した【特許とマーケティング】IPランドスケープを用いた新規事業創出の考え方と事例研究-マーケティング・ツールとしての知的財産研究会
において、取り上げたテクノプロデューサー楠浦さんの論文(特許情報を用いた技術マーケティング, テクノロジーマネジメント 2008/02)を紹介しました。
楠浦さんの論文にはマーケティング(特に技術マーケティング)において、どのようなフレームワークを用いるのか、またどのような特許情報を用いるのかについてまとめてあります。
公報(公開特許公報、特許公報)には、番号や日付といった基本的なデータの他に、
-出願人・権利者(企業・スタートアップや研究機関など)
-発明者(研究者や開発者・技術者)
-課題
-課題に対する解決手段
などが記載されていますので、これらの情報を整理することでマーケティング戦略立案に活用することが可能です。
また楠浦さん以外の論文では、株式会社知財デザインの川上氏が知財学会で発表された「事業戦略向け特許情報データベースの構築及び活用方法」の中で、マーケティング戦略立案において利用するフレームワークに沿った特許情報の種類が整理されています。
もちろんマーケティング戦略立案時には特許情報以外にも、
-マーケット情報(市場規模、今後の市場性・成長性)
-企業情報(顕在化している競合、潜在的な競合)
-業界情報(業界構造、バリューチェーン、サプライチェーンなど)
や、PEST(政治、経済、社会、技術)のPESに関する
-法規制
-国ごとの政治・経済情勢
といった情報も必要です。
マーケティングに知財情報(特許情報だけではなく意匠情報や商標情報)を活用する際に、必要な情報とその種類・特徴について、私なりの考え方をまとめていきたいと思います。
何かモノゴトを整理する際によく言われるのがMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)です。簡単にいえば、もれなくダブりなく、となります。
そのため、まずマーケティング戦略を立案する上で必要となる情報を分ける上での第一分岐点として、
-(直接)人から得られる情報
-人以外から得られる情報
の2つに分けて考えてみます。これが1つ目の軸です。
例えば特許は人が書いていますので、強引ですが「特許も人から得られる情報だろう」と言われる可能性もありますので、あえてかっこ書きで(直接)と書きました。直接人から得られるというのはF2Fで得られるという意味です(テレビ会議や電話会議、メールなども一応直接やり取りしているので、直接人から得られると解します)。
もう1つは会社などの組織の中か外か、社内か社外かという軸を取ってみます。そうすると、
のようなマトリックスができます。
特許情報はどこに位置づけられるか?というと3と4になります(3は自社出願、4は他社出願です)。マーケティング戦略やマーケティングリサーチの本を読むと、よく出てくるのは2や4になります。
2の代表的な例としては、
-アンケート
-グループインタビュー
-デプスインタビュー
などがあります(最近出た本でコンパクトにまとまっている本としては「マーケティングリサーチとデータ分析の基本」があります)。他にも
-行動観察・エスノグラフィー
のように、人の行動を観察することで隠れたニーズを抽出しようという手法もあります(参考書籍:ビジネスマンのための「行動観察」入門)。
マーケティング戦略では、
Who - 誰に
What - どのような製品・サービスを
Where - どこで(チャネル)
How much - いくらで
How - どのように
販売するのかが重要になります。既存製品・サービスを対象にすることもあるでしょうし、新規製品・サービスを創出することが目的となることもあると思います。
その際に必要となるのが「ニーズ情報」と「シーズ情報」です。
-顧客は誰で、どのようなニーズを持っているのか、そのような顧客に対してどのような製品・サービスを提供すれば購入してもらえるのか?
-またその製品・サービスを提供するための資源(技術的リソースに限りません)を自社は持ち合わせているのか、また持ち合わせていないのであればどの会社がその資源を持っているのか?
この「ニーズ情報」と「シーズ情報」を、上記のマトリックスのどのエリアから収集するのが適切かつ効果的なのか、という点については今後解説していきたいと思います。