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イカキングの経済効果を6億円と算出し地域の救世主に/町への批判を称賛へ

石川県能登町で、今や町のシンボルになっている巨大スルメイカ像のイカキング。完成当初は 2,700万円の建設費のほとんどをコロナ対策のための交付金で賄ったこともあり、「税金の無駄遣い」と賛否両論の声が上がりました。しかし、建設費を大きく上回る6億円もの経済効果があったと発表され、批判の声が称賛の声へと変わりました。 

今回はその経済効果を能登町と一緒に算出した、複業アドバイザーの白尾さんにお話を聞きました。批判の声をプラスに変えたことで地域の観光業に大きく貢献された白尾さんに、能登町で複業に挑戦した経緯やプロジェクトを通して得たものについて伺いました。 

*プロフィール 
白尾 敏朗 氏/国内大手コンサルティング会社 勤務 
石川県能登町:経済効果算出アドバイザー 

2018年3月早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手コンサルティングファームに新卒入社。システム開発案件を2年経験した後、業務改善案件(BPR/BPO)を1年経験。現在はWebサービ ス事業会社にて経営企画部の支援(経営の意思決定の材料となる市場・競合の調査業務や管理会計のサポート業務、など)を担当。 

複業という形で第二の故郷・石川に貢献する

イカキングと白尾さん(プロジェクトの中盤で訪問した時の写真)

ーー複業に挑戦しようと思ったきっかけを教えてください 。

私が複業に挑戦した理由は大きく分けて2つあります。1つ目は社会に何か貢献したいと思ったからです。私の祖父母が石川県に住んでいて、幼い頃から年に数回石川県を訪れており、思い出も多くあります。そんな第二の故郷である石川県に自分のスキルを活かして貢献できる仕事に魅力を感じ応募しました。 

2つ目は個の力を試したかったからです。プロジェクトに参加した27歳のとき、若手ながらに出来ることが少しずつ増えてきた反面、自分一人の力で何かを成し遂げるということがありませんでした。そこで個の力を試す上で良い機会だと思い複業に挑戦することにしました。 

ーー具体的にはどのような内容のプロジェクトだったのですか? 

コロナ対策の交付金およそ2,500万円をイカキングの建設費として使ったことへマイナスの意見を持つ人は多くいました。彼らを説得するためには実際の経済効果を提示することが必要だったので、私がその役を担いました。 

その算出方法には簡単に言えば2つのステップがあります。まず最初にイカキングが設置されている道の駅を訪れた人に何を目的として来たのかを調査する。次に道の駅やその周辺地域での観光客の食費や宿泊費などの支出額を集計する。このようにして経済効果を算出したところ建設費の約24倍の6億円もの経済効果があったことが分かりました。

加えてテレビや新聞で取り上げられたことによる宣伝効果は18億円にも上りました。 

ーー実際に現地にも足を運んだとお伺いしましたが、いかがでしたか? 

想像以上に観光資源があった事に驚きました。マリンアクティビティや川遊びなど都会ではなかなかできないアクティビティを体験する事が出来るそうです。あまり観光業においてメジャーな地域ではないけれど魅力がたくさんあるなと感じました。

実際に行政と関わったからこそ分かった職員の方の熱意 

町民説明会前に実施した役場職員さん向けの資料作成研修時の写真

ーープロジェクトを通して感じた行政と民間企業の違いって何かありますか? 

色んな場面で違いを感じましたが、一番の違いは業務の目的が大きく異なっている点です。民間企業は利益を最大化することを、行政は町民の方々の幸せを最大化することを目的としています。目指すべきゴールが民間企業と行政とでは全然違うなと思いました。

職員の方はいかに儲けるかという視点ではなく、町民の方が幸せに生活するためにはどんなことができるだろうかという視点で業務にあたっています。

その業務の中では、観光を盛り上げて経済を活性化させたいという意見もあれば、静かで暮らしやすい町がよいという意見もあるでしょう。町役場の方々はこういったケースにおいてどのような施策・ルールがあれば両者の意見を満たせるのかという事を考えて日々尽力されています。誰一人取り残されないために努力する職員の方を見て私も刺激を受けました。

ーー職員の方と一緒に働いた感想についてお聞きしたいです! 

何よりも職員の方が町民のことを大事にしている様子をたくさん見ることができ、素敵だなと思いました。能登町は複数の町が統合して出来た町なので、住んでいる場所によって住民の特性があるんです。

それぞれの特性に合わせた対応は難しいと思うのですが、愛を持って臨機応変に対応している様子を見て職員の方の熱い気持ちが伝わってきました。 

ーープロジェクトを通して一番嬉しかったことは何でしたか?

プロジェクトが終わってしばらく時間が経ってから、能登の方で大きな地震があり、心配になったので職員の方にメールを送りました。「無事です」という返事と一緒に、GWにたくさんの人がイカキングを見に訪れていた事を教えてくださいました。

さらに職員の方に「白尾さんが経済効果を算出して下さったからこそ多くの人に来てもらえています」と仰っていただき、とても嬉しかったです。 プロジェクトが終わった後も自分の仕事が世のためになっていることを実感しました。 

ーー今回の経験を通して何か得たものはありますか? 

新しくスキルが得られたというよりは、自信がついたことが大きな成果だと感じています。

会社という大きなバックがなくても、自分の力だけで最初から最後まで成し遂げ、その成果が世の中に出たという「経験」は自信や度胸を身に付けることに繋がり自分にとってプラスになったと思います。

”イカ”様にも出来る地方の未来 

町民説明会の時の空き時間で白尾さんが職員さんに真脇遺跡連れていってもらった時の写真

ーー第二の故郷で複業に挑戦してみて、周囲からの方の反応はいかがでしたか?

そうですね。特に石川に住んでいる親戚は喜んでくれました。私が出演したテレビを録画してくれたり、プロジェクトに関する新聞の記事をスクラップしてくれたり…。

あとは友人が「あれって白尾が関わったんでしょう?」と連絡をくれて嬉しかったですね。これは世に自分の成果が出たからこその経験だと思うので、プロジェクトに参加して良かったなと感じました。 

ーー能登町の今後に期待する事はありますか? 

最初は賛否両論あったイカキングは、今ではたくさんの人が訪れる人気観光スポットへと進化しているところです。

今は能登町の観光業に追い風が吹いていると思うので、この人気を一過性な ものにせず、ブランド化していって欲しいと思います。

そしてイカキングをきっかけに能登町の魅力が全国に広がって、より発展していけば嬉しいなと思います。 

ーー最後に今後の展望をお願いします! 

実は最近本業の方でコンサル職から営業職にジョブチェンジしました。その理由は能登町での複業を経験して、個人の力を高めることがより必要であると感じたからです。

しばらくは営業という仕事でビジネスマンとしての足腰を鍛え一歩ずつ成長していきたいと思います。そしていつか大きく成長することが出来たと自信を持って言えるようになった時にまた複業に挑戦したいと思います。

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取材:犛山 創一
執筆:井原 沙樹


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