キャリアコンサルタントの資格で食べていけるのか?
キャリアコンサルタント国家資格の勉強中によくテーマに上がるのが、
この資格で食べていけるのか?という話。
今回は公的なデータや私の私見も交えて考えて行こうと思います。
平均年収は200万~400万円以下が最も多い
労働政策研究・研修機構が2018年に発表した「キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」によるとキャリアコンサルタント国家資格保持者の収入は「200万~400万円以下」が最も多い33%でした。
この数字を見てどのように感じますか?
「意外に少ないんだな」と感じる方が多いと思います。私もそうでした。
もともと日本国内に国家資格は沢山ありますね。
医師、弁護士、建築士、社労士、美容師、ファイナンシャルプランナー(FP技能士)、教員免許もそうですね。
これらと比較するとキャリアコンサルタントは非常に新しい資格であるといえます(2016年に国家資格になりました)。
キャリコンは認知度が低い
キャリアコンサルタント資格の認知度はまだまだ低いです。私が勉強を始めたときも、周りの友人たちはほとんど資格のことを知りませんでした。
また知名度が低いだけでなく、誤った認識がされているのも実情。
求人情報データベースのIndeedで検索してみると、「キャリアコンサルタント」で検索して出てくる職種は「人材派遣会社のコーディネーター」や「求人広告の提案営業」がほとんどでした。
職種名が「キャリアコンサルタント」となっているのに派遣会社のコーディネーターや求人広告営業の職種として掲載され、しかも「必要資格」の欄にはキャリアコンサルタント資格の記載がありません。これは問題です。
キャリアコンサルタントは名称独占資格ですから、本来資格がない人は名乗れない職種です。おそらく求人を出す企業側が、
「ウチの会社は人材採用に困っている会社を助ける、いわばコンサルタントみたいな仕事だから職種名はカッコよく『キャリアコンサルタント』にしよう」というような安易な発想で出している感が否めません。
これは法律違反です。
「おじいちゃんの肩を揉んであげたら肩こりが治ったので今日から僕は医者を名乗ろう」とか「私の妹は髪を切るのが上手だから美容師です」というのと同じくらい馬鹿げた話です。
職業能力開発促進法に規定されたキャリアコンサルタントでない方は、「キャリアコンサルタント」又はこれに紛らわしい名称(※1)(※2)を用いることができません。これに違反した者は、 30 万円以下の罰金に処せられます。
(※1) 紛らわしい名称としては、「キャリア・コンサルタント」、「キャリアコンサルタント○○(キャリアコンサルタント専門士等)」、「キャリア○○コンサルタント(キャリア形成コンサルタント等)」、「○○キャリアコンサルタント(職業キャリアコンサルタント等)」、「○○キャリコン(標準キャリコン等)」、「キャリアコンサル」等があげられます。
(※2) いわゆる標準レベルのキャリア・コンサルタントであった方についても、キャリアコンサルタント名簿に登録しなければ、「キャリアコンサルタント」と名乗ることができませんのでご留意ください。(厚生労働省HPより)
しかしこれは当然ながら悪意を持って「キャリアコンサルタント」の資格を名乗っているわけではありません。今の国内での認知度がまだその程度なのです。
キャリアコンサルタントには値段がついていない状態
私が思うに、キャリアコンサルタントは現状として値段がついていないといえます。
なぜなら資格がないと出来ない仕事がほとんど無いからです。大学のキャリアセンターの仕事や人材紹介会社のキャリアアドバイザー、キャリアカウンセリングの仕事などはすべて資格が無くてもできます。
私が知る限り資格必須の求人はハローワークの相談員くらいです。
つい先日見かけた私の地元、岐阜県のハローワークの相談員のパート募集求人では時給が2,110円でした。
やはり資格が必須という仕事に関してはかなり条件がいいですね。
ちなみに企業内で「職業能力開発推進者」を選任する際にもキャリアコンサルタント資格保持者が求められますが、こうしたケースは社内で資格を持っている人に任せるか、場合によっては人事部の社員に資格取得させるので、求人情報として表に出てくることは非常に少ないです。
またそうした制度を整えようとする企業はやはり大企業が多いため、資格を取得したからといってすぐにそのような企業に転職するのは至難の業といえます。
「労働政策研究報告書2018キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査より」
「キャリコンの資格を取ったからキャリコンの仕事を探そう」は難しい
私もキャリアコンサルタント養成講習に通いながら「将来どんな仕事が出来るかな」と考えていましたが、情報収集をするうちに一つのことに気づきました。
それは、
キャリアコンサルタントの求人はほぼ無いに等しいということです。
これはあくまで新たに資格を取得して仕事を探そうという人の場合です。
美容師なら美容院の求人が、建築士なら建設会社の求人が沢山出ていますが、キャリアコンサルタントにはキャリアコンサルタントの求人が無いのが現状です。
ではキャリアコンサルタントとして食べていくにはどうすればいいのか?
ビジネス的思考が求められる
はっきり言ってキャリアコンサルタントとして食べていくのは難しいです。これまでに述べたように最初から「キャリアコンサルタント募集 月給○○円」と値段がついた求人案件が少ないからです。
資格の立ち位置が曖昧だからこそ、他のスキルと掛け合わせて自分独自のポジションを築き上げるなどして仕事を作っていくしかないのです。
例えば私の先輩は「組織人材開発コンサルタント」を名乗り、企業内での教育研修全般と人事制度をコンサルティングしています。
新入社員やマネージャーなどの階層別研修に始まり、給与制度構築やキャリアデザイン研修など多岐に渡ります。
こうしたコンサルティングは企業側のニーズが高い(離職率低下、社員のモチベーションUPに繋がりやすいため)こともあり、企業からかなりの予算が捻出されます。「キャリアコンサルタント」という肩書は1つのエッセンス程度で使っているようです。
個人ではなく企業相手に仕事をする理由を尋ねると「企業の方がお金を持っているから」というシンプルなものでした。確かに個人からキャリアコンサルティングでお金を取るのはかなり難しいです。
別のキャリアコンサルタントの先輩はフリーランスとして活動されていて、キャリアコンサルタントが集まるNPO法人が受注した案件(例えば企業向けのキャリア研修や高校へ出向いてキャリア教育の授業をするなど)に単発で参加して報酬を得たり、民間のキャリアカウンセリング会社でカウンセラーとしてお仕事をするなど、複数の仕事をしながら生計を立てています。
安定的に収入が入り続けるわけではないので、案件を探す努力も必要ですし、何よりオファーの声がかかるように日々の自己研鑽が求められます。
いつでも学ぶ姿勢を持ち続けている、私が尊敬する先輩です。
キャリアコンサルタント×○○の掛け合わせによるセルフブランディング
キャリコンの資格と他の要素をかけ合わせるのもオススメです。
カウンセリング、面談系の仕事との親和性もあるため、例えばファイナンシャルプランナーや占い師、結婚相談所の相談員と掛け合わせる方もいます。
私自身も海外留学カウンセラーとしてお客様の将来のお話をしていく中で、キャリアに関するサポートもしたいと思い資格取得を決意しました。
こうした掛け合わせによって独自性を持つだけでなく、それを広く認知してもらうためにセルフブランディングも必要です。
TwitterやInstagramなどSNSでの発信や、50代以上の年配の方でもTikTokを活用される努力家もみえるようです。
また書籍を出版される方も多いです。
2016年に国家資格になったことや、企業のセルフ・キャリアドックに国から助成金が出されたことを契機にキャリコン関連の本が多数出版されました。
今後は資格の地位向上と受け皿の確保が求められる
キャリアコンサルタント資格の展望として、私は地位・知名度の向上と資格保持者の受け皿の確保が必要になると考えています。またそのためには国による支援も必要でしょう。
キャリアコンサルティングそのものの啓発も必要ですし、名称独占資格であれば紛らわしい使い方をするケースを厳しく摘発すべきです。
2021年3月末時点でキャリアコンサルタント国家資格保持者は約6万人となっていますが、国は2024年末に10万人養成しようと考えているようです。
10万人にはまだまだ足りていません。
しかし前述の「キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」を見ると、そもそも資格保持者でキャリアコンサルタントの仕事を毎日、あるいは週に2,3回出来ている人は全体の半分にも満たず、2割の人は活動もしていません。
また養成講習に通いだしてから知りましたが、さほど目的もなく資格を取る人が非常に多いのです。
専門実践教育訓練給付金制度を使えば数万円で国家資格がとれるから、という理由だそうです。
国が本気で10万人養成するならその分の仕事を作る必要があります。
例えば公立の中学校や高校ではいまだに進路指導は教科担任の先生が受け持つことが多く、特にキャリアに関する専門知識があるわけでもありません。最近は部活動などを外部の機関に委託する動きなどもありますが、同様にキャリアコンサルタントを専任で置くことで子ども達に将来のキャリアを考えさせるキッカケが生まれます。
まとめ
「キャリアコンサルタントの資格で食べていけるのか?」という冒頭の問いに対して結論を出すなら、
「ほとんどの人が資格だけでは食べていけない」ということになります。
いずれにせよ現在のようにビジネスセンスのある人やセルフブランディングの出来る人だけが独立して十分に稼いでいけるというのでは不十分ですし、人のキャリアを支援する立場であるならばキャリアコンサルタントの仕事自体が生計を立てていけるだけの職業にならなくてはいけないと思います。