【商工中金×アナザー・ジャパン商品開発プロジェクト】甲府のジュエリー産業を知ってほしい!アイデアの組み合わせで誕生した「お香立ての指輪」
こんにちは!
連載としてお届けしている「商工中金×アナザージャパンの商品開発プロジェクト」
今回は、山梨県甲府市でジュエリーをつくる株式会社石友さんと服飾学生である2期生上田声美が共同で開発した「お香立ての指輪」について、その誕生秘話をお届けします。
商工中金×アナザー・ジャパン共同商品開発プロジェクト
今回の商品開発は、アナザー・ジャパンのサポーター企業である株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)との共同プロジェクトとして進めてきました。
「アナザー・ジャパンとの出会いをきっかけに、新しい挑戦に踏み出す地方の中小企業を増やしたい」という想いから始動した本プロジェクト。商工中金がクライアントから商品開発に挑戦したい企業を募り、中川政七商店が商品開発講座を提供することで、商品開発に向けた準備を行いました。
2023年10月から11月にかけて行われた全3回の講座を経て、チュウゴクシコクエリアから1社、チュウブエリアから3社、計4社の地域メーカーがそれぞれセトラーとタッグを組み、商品開発に取り組んでいます。
株式会社石友さんをご紹介!
山梨県甲府市が「ジュエリーのまち」だということを皆さんはご存知でしょうか?
もともとは、甲府市近郊の金峰山から水晶が多く産出されたことに始まります。そこに、京都から伝えられた研磨の技術が広がり、地場産業として宝飾産業が栄えてきました。
株式会社石友は、甲府で50年以上に渡りその宝飾づくりを続けてきた会社です。ファインジュエリーやブライダル、アパレルメーカーさんの製品を長年手掛けてきた実績は370,500点を超えており、職人さんの手仕事で美しいジュエリーが日々生み出されています。
石友さん×上田で語る商品開発の裏側
ここからは、今回の商品開発に取り組んだ株式会社石友の髙木さんと2期生の上田声美が語る、商品開発の裏側をお届けしていきます!
(インタビュアー:1期生山口)
ー商品開発プロジェクトに参画したきっかけを教えてください。
髙木さん:「個人的な話ですが、石友に勤める前は、10年くらい福井県の鯖江でメガネフレームの製造メーカーで働いていました。働き始めたころがリーマンショックの翌年でその頃はMADE IN JAPANからMADE IN CHINAとかKOREAとか日本製の製品が減って、生産拠点が海外に移っていった時期ということもあり、良いモノづくりのメーカーさんがメガネ業界の中でも減っていったんです。日本のモノづくりが衰退するのが嫌で、そこに携われる仕事がしたいとずっと考えていました。石友は、現在OEMが中心の会社なんですけど、僕が入社する少し前からD2Cの小売事業の展開を始めて、ECでの販売や百貨店さんをメインとしたPOPUPなどに挑戦してきました。そんなときに社長の向山から今回の中川政七商店さんと商工中金さんのプロジェクトのことを伺って、商品開発を学ぶことで、さらにこの自社商品の事業を発展させられたらと思い、受講しました。」
上田:「私自身は服飾学生で、大学ではブランディングなどについても学んできました。日本のものづくりが昔から好きなので、そういうところで髙木さんの想いと共感する部分もすごくあって、今回ご一緒させていただけて嬉しいです。」
ー中川政七商店の商品開発講座はいかがでしたか?
髙木さん:「普段はお客様からこういう商品をつくりたいとか、営業陣からこういう商品どうだろうみたいな状態からつくり始めていたので、これまで僕らがやれていなかった商品政策のやり方や企画の練り方、他社さんの商品をリサーチしてとか、そういったところもすごく勉強になりました。それをちゃんと今後も実践していかないと自社に落とし込まれないので、頑張っていきたいなと思っています。」
上田:「たしか、宿題があったんですよね?石友さんがたくさん記入してくださっているのを拝見しました。印象的な宿題とかってありますか?」
髙木さん:「最初の宿題は、お箸の商品政策・企画をしましょうというところでした。今までやったことがないことで、いろいろとリサーチをしたりしたんですけど、その型をジュエリーにはめ込むのが意外と難しくて。みんなでアイデアを出して絞っていったんですけど、最終的にふわっとした形での発表になってしまったかなというのは悔しかったです。ジュエリーに落とし込んだときの、ものづくりの背景だったり、ブランディングだったりなぜこのアイテムなのか、何故この商品のスペックなのか、何故このデザインなのかっていうところを考えて商品化するのがどれだけ難しいんだろうというのは身に染みて感じました。」
ー講座が終わり、協業していく中で印象的だったことを教えてください。
上田:「初めてお会いしたときに山梨から商品を持ってきて見せてくださったんですけど、どれも見たことないくらい綺麗で輝いていて。値段ももちろんびっくりするほど高価なもので、触っていいですよ、と言われてもほんとにいいんですか??って恐る恐る触ったのを覚えています(笑)お話を伺うと、加工研磨技術がこれまで大切にしてきた技術で、それを生かせる商品をつくりたいというお話をしてくださいました。」
髙木さん:「初めてお会いした時から熱心にたくさん質問をしてくださって、山梨に来てくださったときもいろんなところに興味を示していただいたので、説明しがいがありました。モノづくりの現場を見ていただけるとその製品が出来上がって店頭で販売するときにもすごくスムーズにお客様に伝えられるかな、というのがあったので現場を見ていただけたのは良かったです。開発の過程では、どちらかというと僕らが自発的に考えられなくて上田さんの方から、僕らにはない良いアイデアをご提案してくださったので、スムーズに進めていくことができて感謝しています。」
上田:「ありがとうございます。私にとってはそのアイデアを出すところが一番苦しんだポイントでした。石友さんはプラチナや18金を使って高品質・高価格のハイジュエリーとよばれるものをつくっていらっしゃいます。数十万~数百万のものになってくるので、どうしてもそれをアナザー・ジャパンで売るのは現実的ではなく、それを乗り越える新しいアイデアが必要でした。過去の大学の授業資料すべて引っ張り出して読み漁ったのですが、そこでアイデアをひねり出すという授業の資料に「アイデアは既にある者同士の組み合わせ」という言葉を見つけて、これだ!と。
「ジュエリー」と「ジュエリーじゃないけれど石友さんが大切にしている技術が生かせるもの」をかけあわせて何かできないかと考え始めました。
それでSNS等で「指輪形状」「リング画像」とかで調べまくって出てきたのが、普通のリングをお香立てとして使っているインスタグラマーさんの画像で、これしかない!!となって、「お香立て×指輪」というご提案を山梨に出張に行った際にさせていただきました。」
髙木さん:「はじめてアイデアを聞いたときは、単純に面白そう!と感じました。リングにも出来る点もいいなと。ただどう商品化しようかというところは、職人さんやデザイナーさんと相談をしました。
ある程度リングの形状も維持しつつお香立てにもできる、2つの機能があるからこそバランスよく見せられるものにしたいなと考えていました。」
ーアイデアを形にするまででどんなことが大変でしたか?
髙木さん:「今回、自社の技術を活かしつつ、山梨らしい商品にしたいという思いがありました。山梨のシンボルといえば、やはり富士山だよねといったところで富士山のデザインが上がってきて。縁起物系でいくのか、デザイン性を重視するのかターゲットとのバランスを考えながら決めて行きました。宝飾を扱っているので、石を入れたいというデザイナーの意向もあったんですけど、そうすると男性のお客様には手に取りづらくなってしまうかなと、上田さんからもアドバイスをいただいたりしましたね。そしてデザイナーが思い描く2Dのモノを3Dに実現するという段階でもまた難しさがありました。モノづくりに移行したときに商品の強度が弱くなる部分もあったので、職人さんやデザイナーさんも含めてみんなが納得する形に仕上げていくのは大変だったなと思います。」
上田:「私は、石友さんからデザイン画をいただいてからセトラーにアンケートを取りました。色はシルバーかゴールドか、インバウンドか地元向けかなどいろいろな視点から意見をもらってすごく参考になりました。もともとは富士山のところに石が入っているデザインだったんですけど、お香立てにしたときにそこが隠れるのがもったいないという意見をもらって、それが商品に生かされたりもしています。アイデアを形にするという点では、サンプルができた時にお香が自立しないものもあって、指輪とお香立てという2つの機能をうまく実現させるのが難しかったです。」
ーそんな苦労を経て完成した商品。改めてこだわりを教えてください!
髙木さん:「富士山の上の部分だけが雪をかぶったようなデザインになっていて、その上の部分だけにテクスチャーをつけています。すごく繊細な作業で、うちの研磨技術が生かされている点でもあるので、ぜひ注目してみていただきたいです。細部までにこだわっているのでギリギリまで試行錯誤を繰り返しました。」
上田:「やはり、私も石友さんの技術力に注目していただきたいです!
山梨に伺って現場を拝見したときに、ジュエリーを磨いている職人さんともお話をしました。すごい高速で回転しているところに押し当ててけずるので摩擦ですごく熱いということを知って。
他にも刻印がちょっとでも薄かったら検品ではじかれたり、石をはめ込むときも少しでも斜めだったらはじかれたり、すごく小さい石も傷がついていないか肉眼で確認していて、人が手作業で全て確認していて、ものづくりへの熱いこだわりを感じました。
その技術と自分自身の服飾学生らしいアイデアが合わさった商品になっているので、その面白さを感じていただけたら嬉しいです。」
最後に
髙木さん:「ジュエリーって、綺麗なお店で売られているのは見ても、どこで作られているかってあまり知られていませんよね。今回の商品をアナザー・ジャパンさんで販売することで、より地域にフォーカスして山梨の産業としてのジュエリーを知っていただける機会になったら嬉しいです。
そして、素材の質はもちろんですが、そこに職人の技術が合わさるからこそ、美しい宝飾がつくられることもお伝えしていきたいです。まずはアナザー・ジャパンさんでの販売を頑張りつつ、たとえば、ふるさと納税とか、そういったところにもアイテムとして取り込めないかなということも考えています。せっかく作ったので色々な販路も展開していきたいですね。」
上田:「お香立ての指輪は数量限定の販売なので、まずは完売を目指して頑張ります。その勢い次第で、石友さんに引き続き展開したいと思ってもらえるくらいになったらいいなと思っています。
また、お香立てを置く器やお香そのものも一緒に提案していくので、これまでアナザー・ジャパンでご紹介してきた商品と組み合わせて楽しんでもらえるように工夫して販売していきたいです。」
発売期間は6月5日~8月4日。アナザー・チュウブ展開催期間です。ぜひ店頭に足をお運びいただき、石友さんの技術を実際にご覧いただけたら嬉しいです!
アナザー・ジャパンのオンラインショップからもご購入いただけます。
ぜひご覧ください!
今回のライター:Sei Yamaguchi