セトラ―企画展vol.3『アナザー・上越』~酒屋の孫娘が伝える豪雪地帯上越~
みなさん、はじめまして!アナザー・ジャパン3期生の木村日菜です。
アナザー・上越特集を9月24日~10月13日で開催いたします。
今回、3期生トップバッタ―として、3週間の「郷土愛特集」を組みました。
アナザー・ジャパンに入る前から地元が大好きで月に1回は必ず帰省していた私ですが、好きだからこそ色んなことに悩みました。
これを読んでいただき私のことから上越のことまで、
まるっと知っていただければと思います!
①自己紹介と上越ってどこ?
みなさん、上越はご存知ですか?
新潟は思った以上に大きいので位置が掴みづらいところはあると思いますが、だいたいここらへんに位置します。
簡単に新潟をご紹介すると、下から上越地方、中越地方、下越地方に
区別されます。
“上”越なのに新潟の下の方にある。なんともややこしいですね。
もう1つややこしいポイントをお伝えすると、新幹線は上越新幹線ではなく、北陸新幹線が通っています。
②郷土愛特集とは?
上越の小話はここまでにして、企画展の道のりをお伝えしようと思います。
3期からは、2期での郷土愛・偏愛企画をパワーアップさせ、より深く、
狭く地域の魅力を特集することになりました。
3期についてはこちらの記事をご覧ください▼
上越への愛が深められるとワクワクする一方で、
「実際、何が好きなんだろう?」
とはっきりと答えられない自分がいました。
もやもやを抱えつつも、仕入れ出張に2回、合計15日滞在し、じっくり自分の地元を見つめなおしました。
これは雁木というものです。
昔は今よりも雪が多く、雪から人々の生活を守るために庇が設けられました。ここ上越・高田の雁木は総延長が約16km。日本一なのです。
(雁木について詳しく知りたい方はこちら!
上越市ホームページ:雁木の話あれこれ)
この地で生まれ育った私にとっても雁木は日常の一部。近所を歩いていると「おまんちょっと入ってきない」(ちょっと寄っていきなよ)と呼び止められ、お茶をするなんてこともしばしば。そんな雁木がつくりだす、あったかい雰囲気が大好きで、最初は雁木が偏愛対象でした。
企画の社内発表の日。
1回目の出張にも無事行き、上越・高田の雁木は日本一というデータもあり事前準備はし尽くしました。そして何よりも、上越の愛・雁木への愛が絶頂に高まっていました。
そしていざプレゼンをしましたが、予想外の展開です。
雁木から発酵文化というのが繋がらない。発酵文化ってどこにでもあるし、それなら地域のあたたかさなんてどこでも言えるよね。
上越らしさがあんまり感じられないのでは?という意見をいただきました。
負けず嫌いな性格なのでフィードバックをいただいている最中に悔しい
気持ちがこみ上げ、涙がこぼれそうでした。
休学していたので時間は十分にありましたし、おそらく当時のリサーチの
段階では誰よりも地元を調べて考えていた自信があります。
(ドキュメントに情報をすべてまとめていたのですが、
軽く10ページ以上ありました。)
「これ以外に私が上越で好きなものってなんだろう」
「そもそも好きってなんだろう」
「私が上越でやる意味とは?」
恋愛のような感情がこみ上げてきたのを今でも覚えています。
ですが冷静になってよく考えると雁木自体をもってくることはできません。愛の方へ偏りすぎていてアナザー・ジャパンのもう一つの本質部分の
商売であることを忘れていました。そう考えると実際に持ってくることの
できるもの(=売ることが可能なもの)の方が良さそうです。
そんな感情の変化がありました。
数日間立ち直れず現実逃避をしましたが、少しずつ歩き始めデスクトップでのリサーチも再度行いました。ときには上越出身の友達と話して新たな
気づきを得たり、アンテナショップに行ってリサーチをしたり。
私が上越にもう一度真剣に向きあう期間を過ごしました。
そこで最終的に行きついたのが、アナザー・上越の偏愛対象である
川上善兵衛という人物です。
③偏愛対象の川上善兵衛に迫る
一言で表すと、日本のワイン葡萄の父です。
新潟と聞けば雪を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
最近は雪がたくさん降る年と降らない年で差がありますが、昔は毎年の
ように大雪でした。
そんな地域で地主の長男として生まれたのが川上善兵衛。
幼いころから苦労する小作人たちを間近で見てきました。というのも今や
新潟は米所という認識がありますが、当時は豪雪や洪水の影響で米作りも
ままならず、「三年一作」という状況でした。農民救済をすべく川上は、
雪に負けず土地を選ばずつぶさずできるものを探し、親交があった勝海舟
から葡萄栽培やワイン製造を教えてもらったのです。
それから自宅に鍬を入れ始め「岩の原葡萄園」を創立させました。
幼少期からの環境に問題意識をもち、自らの手で変えようとする力にまず
私は感銘を受けました。
ですが、そう簡単にうまくはいきません。ワイン造りに命を懸けすぎて周りからは大批判をされたそうです。
しかし、ここで諦めずに自分の軸と可能性を信じ続けたところで私は心を
鷲掴みにされました。めっちゃくちゃかっこいいし私もこうなりたい、と。
ここで出てきたのが、「なんでこんなに惹かれるんだろう?」という疑問。
それは「祖父を尊敬していること」でした。
自己紹介の部分でも書きましたが、私は酒屋の孫娘です。私の祖父は酒屋を営んでいました。
祖父の兄からお店を任せられたそうですが赤字で仲間もいなく、最初は本当に苦しかったそうです。しかし、家族に何を言われようと、お客様にお酒を届ける、地域の人たちのためにという想いでお店をたて直しました。そんな祖父の尊敬している部分と川上がぴったりと重なりました。
実際に2回目の出張に行ったことで、
上越には現代の川上善兵衛と呼べる人がたくさんいて、文化としてこの地域に根付いていることがわかりました。
④商品紹介
今回のアナザー・上越では、川上善兵衛のようなマインドをもつ事業者様の商品をお取り扱いをしています。
🍷岩の原葡萄園
川上が見つけ出したマスカット・ベーリーAなど厳選中の厳選の葡萄をつかって醸造したワイン。知られざる努力の結晶がつまっています。
🍶頚城酒造
「妥協しない酒づくり」を行っている頚城酒造。訪問した際、最初は蔵ではなく山奥に案内されました。そこには酒造りだけではない目的も。
🌸猪俣建具美術店
三大夜桜の一つの高田公園のソメイヨシノ材を使った組子コースター。
上越を感じられるもので1mmのズレも許されない繊細な技術からできている。
🍴テーエム
こちらは金属の町で有名な三条から。珍しい黒染めがされているカトラリーです。温度時間などを考慮しながらつくられています。
🌾その他商品
私自身、東京に出てアナザー・ジャパンの活動のなかで新潟の「すごさ」を実感しました。上越に日本のワイン葡萄の父がいたように、三条の金属加工技術の発展や五泉が日本一のニット産地であること。新潟には私が知らなかっただけでたくさんの魅力がつまっていました。そんな過程もあり、上越だけでなく三条や五泉の地域商品もお取り扱いしています。
⑤最後に
今回の企画展では上越、雪国は暗いところではなく明るくて力強いところであることを皆様にお伝えしたいです。雪がたくさん降って大変だよね。と言われることが多いです。もちろん、朝早く起きて雪かきをしなければならなかったり、1時間に1本程度の電車が止まることで学校に行けなくなったり。さらに、冬は雲が厚くどんよりとした空になります。雪が降らない・少ない地域と比べると困ることはたくさんあります。
しかし、雪がたくさん降るため雪室と呼ばれる雪の天然冷蔵庫が今でもあります。また雁木が形成されてそこから生まれる地域の結束力やあたたかさもあります。
先人たちが残してきたものが今でもあるということ、それはおそらく今も昔も雪が降るからといって「環境を言い訳にしない」ところが共通しているのではないかと思います。そんなあつい人たちを知ってもらい、上越を知らなかった人はもちろんですが、上越に住んでいる・住んでいた人たちにも「明るいところ、強いところ」であることをお届けしたいと思っています。そして9月27日は上越や力強さが感じられるイベントを開催させていただきます。そこでも上越のあつさについてお伝えしたいので足を運んでいただければ嬉しいです。
そして酒屋の孫娘として、飲める人も飲めない人も楽しめる空間が私の日常にありました。みんなでワイワイしている空間が好き。そういった食卓の楽しみ方もお届けしたいです。
3期トップバッターとしてアナザー・ジャパンメンバーにはめちゃくちゃ支えてもらいました。3期はもちろん、1.2期生の方々にもたくさん力を貸していただきました。
今回このような活動に賛同してくださり快く商品を出してくださった事業者様、そして事業者さんつながりでもご紹介いただいたり。本当に感謝しかありません。
3期の走り出しとして、3週間全力で駆け抜けたいと思います!
みなさん、店舗でお待ちしております!!!
ライター:Hina Kimura