【セトラーがサポーター企業に学ぶ:八十二銀行・八十二Link Nagano】
長野県で貸出金シェア5割を超える地方銀行、八十二銀行。「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を経営理念に掲げ、長野県のトップバンクとして地域経済の発展やお客さま満足度向上に向けて業務を展開しています。
そんな八十二銀行が2022年、長野県の地域産品を海外に展開する地域商社事業を行う子会社を設立しました。地方銀行が手掛ける商社事業とは…?
2期チュウブ展担当、長野県出身の松澤がお話を伺ってきました。
お話を伺ったのは、長野の地場産品の海外進出を手掛ける「八十二Link Nagano株式会社」。
地域商社という新しい取り組みをされていることが、アナザー・ジャパンの活動と重なり、どんな想いで事業を展開されているのか非常に興味を持っていたことから、今回インタビューが叶いました。
地域商社×電力?!
八十二Link Nagano株式会社は、アナザー・ジャパンのサポーター企業である八十二銀行の出資のもと、2022年10月に設立されました。
地域商社事業と電力事業という2つの事業を行っています。
一つ目は、地域商社事業。主に海外向けの輸出商社として、地域の生産者やメーカーに対して販路開拓支援・コンサルティングを行っています。
一方、電力事業では、脱炭素化・ゼロカーボンの実現のため、地域の事業者や自治体に対して発電・電力供給を行っています。
一見、この二つの事業には繋がりが無いように思えます。
しかし実は地域内経済循環の拡大に貢献するうえで必要な二つの軸がそろっているのです。
「地域内経済循環」の拡大に必要な要素として、以下の二つがポイントとされています。
一つが、地域のお金を稼ぐ力を強くすること。
すなわち、地域内で効果的に稼ぐ産業を育てることを指します。
そしてもう一つが、地域でお金を循環させること。
お金の地域外への流出を抑制し、地域内で循環する仕組みを作ることを指します。
これを言い換えれば、地域のお金を稼ぐ力を強くすることは地産外商と言え、地域でお金を循環させることは地産地消と言えます。この両輪が回るような仕組みを作り出すことこそが、地域内経済循環を生み出すためには必要なのです。
この前提に基づくと、八十二Link Naganoの事業はその両輪を兼ね備えている、ということがお判りいただけると思います。
高品質な長野県産品の海外販路開拓により、海外(地域外)から収益を獲得する「地域商社事業」。そして、再生可能エネルギーの発電と地域への供給による再エネの地産地消を通じて、地域外に流出している収益を県内に留める「電力事業」。
地方銀行のリレーションや信頼を土台に、この二つの両輪が回る仕組みを構築しているのが八十二Link Naganoなのです。
なぜこの取り組みが始まったのか
「銀行法」の改正と八十二銀行さまの中期経営ビジョン2021の策定の2つが重なったことをきっかけに、新たな新事業を手掛ける子会社として八十二link Naganoさまは設立されました。
まず一つ目に、2021年に銀行法が改正され、業務範囲規制などが緩和され、業務領域の拡大が可能になりました。
そんな中、2021年6月に作成された八十二銀行の「中期経営ビジョン2021」。その中の「『金融×非金融×リレーション』でお客さまと地域を支援する」というビジョンを具現化する形で、八十二Link Naganoが設立されたのです。
地方銀行の何を強みとして「地域商社事業」を手掛けているか?
地方銀行としてどのような強みを活かし、「地域商社事業」に取り組まれているのでしょうか?
1つ目は、八十二銀行がこれまで100年近く経営する中で築いてきた信用・信頼、
2つ目は、八十二銀行が持つ幅広いお客様のネットワーク、
3つ目は、経営基盤の健全性が挙げられます。
前述の通り、地域商社事業では、主に海外向けの輸出商社として、地域の生産者やメーカーに対して販路開拓支援・コンサルティングを行っているため、これらの強みを最大限生かし、長野県と世界をつなぐという想いを込めて地域商社事業を行っています。
長野の地域産品の魅力を世界に
皆さんは長野と聞くとどんなものをイメージされますか?
連なる山々、スキー場、フルーツ、、
清水さん:「外国人の方に、意外なものが刺さったりするんです。」
例えば、アメリカへの日本酒販路開拓の際、飲み口がやさしくフルーティな日本酒よりも、辛口でクラシックな日本酒の方がウケが良かったとのこと。
清水さん:「実際に販売をしてみないとどれが売れ筋なのかは見込みが付かないことが多いです。そのため、マーケティング調査はしますが、それだけに頼りすぎないようにしています。」
海外に向けた地域商社事業を行う上で、「海外販路開拓」と「物流」の2つが主な課題として挙げられます。それぞれ具体的に、海外販路開拓とは、海外で商品を買ってくれる方を探すこと。物流とは、各地域産品の効率的な輸送方法を模索することを指します。
これらに対し、地域に長年寄り添い多角的な事業を手がけてきた八十二銀行のネットワークを活かしながら、Link Naganoさんは現在どちらにも注力されています。
加えて、実際に販売する長野の魅力的な地域産品を見つける際にも、銀行のネットワークが活きたそう。
私自身、アナザー・ジャパンの活動でお取り扱いする地域産品を探す際、「地元においてもこんなに自分が知らない魅力を持った商品がたくさんあるのか」と、自分のネットワークやリサーチ力の限界を感じたことがありました。
一方でLink Naganoさんは、地域を支える銀行としてのお客様との広くて深い繋がりを活かし、長野の魅力的な商品を多数発掘し、海外に発信されています。
今後の展望
神谷さん:「銀行はお客さまに対してお金を融資することで事業を側面から支援したり、夢の実現を後押しする仕事です。一方、当社の事業では、当社が販路開拓した取引は直接長野県事業者さんの売り上げに繋がります。だから我々が収益を得るというよりは、その先にある事業者さまの売上を上げる事が主目的になるんです。」
松澤:「なるほど、直接地域のお客様に貢献している実感が得られるのはすごくやりがいにつながりますし、魅力的な構図ですね。」
松澤:「そのうえで、今後お二人が目指していきたい未来や会社としてのビジョンはありますか?」
神谷さん:「我々は長野県を地盤とする輸出メインの地域商社として、地域産品の海外市場へのアクセスをより身近に、より簡単にすることで長野と世界をつなぐためにやっているんですが、日本全体で考えた時には各県に輸出の地域商社というものはまだまだ少ない状況で。
しかし、長野県の企業が有している海外進出の課題はきっと他の地域も例外ではないはず。
地域商社には、小口取引を集約することでボリュームを確保したり取引コストを低減させる機能があると考えています。そういう意味で、将来的には長野県以外の他の地域においても共通して運用可能なビジネスモデルを構築できたら、と思っています。
こちらとしても、販路開拓や物流の観点から、長野県産品以外のものも商材の選択肢としてあれば、より多くのお客様に手に取っていただけるようになる。だからこそ、地銀の商社としても海外をメインにしている我々が先駆者となりこの事業を拡大させていきたいと思っています。」
最後に
八十二銀行は「健全経営を堅持し、もって地域社会の発展に寄与する」を経営理念として掲げ、それを実際に金融以外のソリューション提供のチャレンジもしながら体現されています。
そんな地方銀行が手掛ける地域商社事業。
地域の人たちの想いが込められた産品が繋ぐ未来に、ワクワクが止まりません。