ワークディテールの効能とは
洋服というものは合わせる物によって大きくそのイメージを変えます。
わたしのブランドではアメリカを意識したモノも多いですが、着てみるとそのテイストが出過ぎないようにデザイン、提案をしています。
例えば、ザ・アメリカ的存在のシャンブレーワークシャツをどんなデザインに落とし込み、どんなパンツに合わせてもらうのか?
単にデニムやチノなどのアメリカンテイストのパンツを外せば良いというものでもありません、かといって綺麗めな素材を合わせれば良いというものでもない。
そう、そこはイメージしてもらうこと。
ブランドにはイメージさせる世界観やコンセプトがなくてはなりません。
逆を言えば、シャンブレーにデニムというド直球な取り合せをいかに成立させられるのかということなのです。
わたしはコレクションなどとは謳いませんし、あくまでも単品での提案をしています。ただ、それでも自分自身の作る世界感には統一性があり、線としては常に繋がっていると自負しています。
狭い中でのデザインの足し算引き算はとても難しく、どの時代のどのディテールを加え、何を外していくのか、そんな一つ一つを毎回意識しています。
another20thcenturyのワークシャツには3本針の環縫仕上げや*カラカンと呼ばれる仕様があります。
ガシガシ使うワークウェアを作っているわけではないし、現在の縫製技術を持ってすれば丈夫さを損なうこともないのであまり必要がないとも言えます。ただ、素材やデザインによってはこのワーク感が生きてくるのです。
清潔感のあるリネンやタイプライターも、洗いによって生地や糸の縮みによるパッカリングを生みます。このカジュアルデザインと素材のギャップが洗い晒しで羽織ることへの説得力にも繋がっている訳です。
waltersの特徴でもあるポケットや襟のダブルステッチの幅は、一般的になものに比べてかなり細く仕上げています。これも洗った後のシワ感に繊細さを出すために一番こだわっているディテール。
その他にももちろんこだわりはありますが、どの仕様にも心がけているのは基本主張しすぎないこと。全てはさりげなく、着ると少しずつわかってくる程度。
ワークシャツだってシルエット一つ、ディテール一つ、素材一つで着こなしの可能性は無限に広がっていくのです。
「これにこれを合わせてはいけない」なんて雑誌でも見かけますが、そんなことは決してありません。「スニーカーで足元を外して…」というレベルのような単純なことではないのです。
アイテムでくくってしまうことは幅を狭くするだけでしかありません。
やっぱり正解はそのモノにしかなく、そのとき、そこにしかないのです。