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製品染めの糸と意図

製品に仕上げてから染める。
この工程にはもちろんコストと手間がかかる。

元からその色の生地を使えばと思う方もいるかもしれない。
ただ、そこはやはり製品染めでなければ出ない色や雰囲気というものがある。
例えば、はっきりとした色ではなく、何となく微妙なムラ感。
ぱっと見はわからなくても、じんわり見えてくるようなムラ、このムラは先染めや生地染めでは出せない。
染める工程でふっくらとする仕上がりやあたり感も魅力の一つ。
またそんな中で出てくる僅かな個体差も良かったりする。
今回はそんなふっくら感とハリ感を兼ね添えた仕上がりにするため、コットンナイロンの素材をベースにしました。

そして、今回の染めにはそれ以上に意図があった。

製品を染めるとなると縫製したステッチ糸も染めることになります。
綿糸はほぼ染まってしまうので生地と同色系に仕上がり、ポリエステル糸を使うと色はほとんど染まらずに白っぽく浮いてくる。
古着で軍物パジャマなどを製品染めしたものを見かけるけど、正にそんなイメージがよぎる。古着屋さんだとステッチが染まっているものと染まっていないものが混在していたりするけど、言っても軍物は年代が少し違えば糸の質も変わったり、そもそもが縫製や工場がバラバラだったりもするから意図するものではもちろんない。
この糸か浮いて見えるのと、馴染んでいるのは一概にどちらが良いということではない。

ただ、見え方は大きく変わるのでそこをどう計算するかなのです。

今回、新型で仕上げたパフューマーをイメージしたワークジャケットは、染め感に加え、そんなステッチ糸の見え方を意識しました。
ダブルステッチで仕上げられた二本の糸は綿糸とポリエステル糸の混合で縫製しています。
そうすることで、コバステッチに見える部分も内側に隠れるようにステッチが入っており、その間にあらわれるパッカリングが良い効果に繋がっています。

その裏に隠されたストーリーと合わせて見ていただけると、それは必然にも思えてくるかもしれません。
以前にも書いたように色出しへのこだわりは言うまでもありません。
それはポプリのように植物やお花、果実を彷彿させる1着です。

Hi STORY
‟ 1975年、シティオブロンドンの取引所が長い歴史に幕を下ろします。
そして、400年続いたこの場所に老舗百貨店のロイヤルデパートメントが移設されることになります。景観を守ることからも建物の外観は補修のみで格式ある佇まいは昔のままです。1979年のグランドオープンには王室も招かれ、盛大なオープンニングセレモニーとなりました。様々なテントの天幕はタータンチェック柄に統一され、伝統の中にも遊び心ある演出が話題になります。グランドフロアには女王陛下らが愛用する数々の老舗メーカーが招致されました。香水メーカーの調香師たちは白のジャケットを原料となる花の色に染め上げ華やかに装いました。新たにリニューアルされたROYAL DEPARTMENT のシンボルマークが随所にみられます。”
*Hi STORYに登場する人物や団体名等はすべて架空のものです。

Royal Department Perfumer jacket / by another 20th century


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