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オペアンプ以外に華を持たせる。PH-A1J向けプリアンプ用オペアンプ選定講座。

 ディスクリート回路を活かせるオペアンプ選び。
 その実例と解説。

 結論を書くと、FXAUDIO製アナログヘッドホンアンプPH-A1Jの、オペアンプでは実現できないディスクリートパワー段の強みを活かすことに成功した。これだけだと猿でも書けるので補足していく。
 まずオーディオアンプとは簡単に言えば段階的に入力信号を増幅する回路を組む。
 物凄く大雑把に言えば、前段と後段に分けられる。前段で信号を均して、後段でヘッドホンやスピーカーを駆動できる出力信号をグイーンっと引っ張り上げる感じだ。
 この前段に当たる部分を別電源化しているのがプリアンプであり、後段に当たる部分を別電源化しているのがパワーアンプである。2つを同一電源から駆動すればプリメインアンプだ。これは信号経路は一筆書きできるが、信号を表現するのはそれぞれ独立した電源ということだ。一種の電源間の伝言ゲームである。
 ヘッドホンアンプの場合は、敢えて前段後段を異なる機器として分割するニーズに乏しいため、大抵は前段後段を同一基板上に配置している。つまり同一電源なのでプリメインアンプと見なせる。
 この記事では前段=プリ回路、後段=パワー回路と定義する。

 皆大好きオーディオ用オペアンプは、1970年代に登場した比較的新しい工業製品である。当然それ以前のオーディオアンプでは、オペアンプを使わずに前述の前段と後段を製品として実装していたわけだ。
 このオペアンプを用いずに、前段もしくは後段の信号増幅を行う回路を、一般的にディスクリート回路と呼ぶ。
 ここで補足しておくが、オペアンプとは集積回路である。別名ICチップだ。集積回路の圧倒的な利点は、平均化、省面積化、省電力化、量産効果である。つまり安くて安定してて安くて安定してて安くて安定しててそして安いのである。
 工業製品は道楽ではないので、ディスクリート回路とは桁違いに小さく軽く故障も少なく、何より比べるのも烏滸がましいほど安価なオペアンプを使わない理由はなかったということだ。例えばNE5532は一般的には安価なオペアンプの代名詞であるが、販売当時から工業的にはオーディオ用高級オペアンプである。これが集積回路に作用する圧倒的な量産効果だ。集積回路は量産設備さえ整えば著しく安価になるのだ。さらにディスクリート回路は組み上がった個々の回路に性能のバラツキが出やすい。対してオペアンプではこのバラツキが少ないのだ。それも圧倒的に。
 オペアンプ(集積回路)の利点は何を取っても省スペース、そして安価である点だ。掌サイズのヘッドホンアンプを、欧米の老舗オーディオメーカーが真顔で販売できるのはオペアンプあってこそである。

 話をPH-A1Jに戻そう。
 FX-AUDIOが何を思ったのかはともかく、僅か6000円程度(購入当時)の価格設定で、ディスクリートパワートランジスタを搭載したアナログアンプである。つまりパワー段の一部が敢えてディスクリート回路なのだ。
 ディスクリート回路にもメリットが存在する。分かりやすいものは、回路実装面積に余裕を持てることに起因する大出力化である。とはいえこれだけでは何も語れていない。
 オーディオにおける「音が出る」は非常にあやふやな概念である。スマホ直差しでも据え置き機器直差しでも音は出るからだ。それでも聴けば己の無知を恥じ入ることになる。
 PH-A1Jのディスクリートパワートランジスタ構成は呪文ではなく、れっきとした「聴けば恥じ入る」類のものであった。そう、筆者は恥を偲んでいるのである。
 あえて記述するならディスクリート回路は「色が出やすい」のだろう。ディスクリートパワートランジスタ構成には、個々のオペアンプと同じ様に、強烈な色が付いていた。どちらももただの回路なのだから考えてみれば当たり前である。どうやら回路を通ると色が付くのは避けられないらしい。
 つまり、漸くだ。漸く、これまで聴き比べてきたオペアンプと同じ様に、アンプ本体の回路が持つ「個」を指させるようになってきた。そういうことだろう。

 PH-A1Jをプリメインアンプと見なしてみよう。
 アンプの回路全体のうち、プリアンプ部分をオペアンプが担当する。そしてパワーアンプ部分を担うのは、ディスクリート回路化されたパワートランジスタである。
 筆者の勘違いはここにある。差し替え可能なオペアンプにばかり瞳が向いてしまい、唯一の試聴感に色を付ける要因だと錯覚していたのだ……経験の浅さがモロに出た形だろうか。
 アンプの回路全体からすれば、前段も後段も重要度は大差ないだろう。なぜなら、オーディオとは信号の伝言ゲームだからだ。途中で変なことをする輩が一人でもいれば、伝わるものも伝わらないのである。
 差し替え可能な集積回路ばかりに気を取られて、デカデカと自己主張しているパワートランジスタの群れが、なぜそこに在るのか考えもしなかった。本当に恥じ入る次第だ。

 分かり難くて申し訳ない。
  つまりPH-A1Jの本体は、プリ回路の一部としてのオペアンプではなく、パワー回路としてのディスクリート回路にあるわけだ(厳密には一部ディスクリート回路)。敢えて集積回路を用いた回路実装を避けているわけであるから、それを珍重しないのであれば、PH-A1Jを選んだ意味がないだろう。恥じ入る次第()

 長々と書いたが、この考察の実装に当たってやることはシンプルである。
 それはプリアンプ部はパワーアンプ部に華を持たせることに徹することだ。
 あとはこの新しい公理である「プリアンプ部はパワーアンプ部に華を持たせることに徹する」が司る公理系の中で、いい感じに重心を整えるだけである。
 もちろんずっと前の記事から一貫して「GRADOで遊びたい!」もいい感じに守る。いいかんじ〜

 上記の公理は理想論ではなく、筆者の既に通った道である。通った道を記事として記述するに当たって、別の見方をしてみただけだ。
 公理があるのでGRADOは動かせない。そしてPH-A1Jも動かせない。なら何が動かせるの?そうオペアンプである。GRADO、PH-A1J、それぞれに華を持たせるオペアンプを選定すればいいのだ。


 や り ま し た


 では講座を始めまーす。
 前提条件(公理)。
 ①GRADOで遊ぶ。
 ②PH-A1Jに華を持たせる。

 まず①のGRADOで遊ぶから!
 はい!NJM4558直系のオペアンプを使いましょう!合います!なんならGRADO公式が純正ヘッドホンアンプに4558直系モデルのNJM4556を採用してるくらいですから!

 次、②のPH-A1Jに華を持たせましょう!
 はい!プリ回路部のオペアンプを差し替えるということですよね?
 では4558直系のプリアンプ向け最高グレード品であるNJM2043DDはどうでしょうか!4558シリーズで最も低雑音!価格もシリーズ最高価格です!よほど量産されているのか4個入りパックが1つ250円です!凄いですね!

 終了でーす。
 おつかれさまでしたー。


 ちなみに4558直系への愛を熱く語ったラブレター地味た怪文書はコチラ【バチクソに楽しいGRADOサウンドとNJM4558直系オペアンプの相性について】(1つ前の記事)

 そしてGRADOで遊ぶ!ためにPH-A1Jの穴がガバガバになるまでオペアンプを差し替えた格闘の記録はコチラ【オーディオは順番であり自己紹介である。】(2つ前の記事、一部筆者のつぶやきからレビューを抜粋してるので口語だったり文体にブレがあります)


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