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出雲にっき
2021年3月30日 19:45
桜ずっと眠っています。眠ったふりをしています。あっ。ひかった、パチっと何かが光りました。瞼の内側が眩しい。暗いけど、なんだか外は眩しい、というやつなのかもしれない。多分今は夜です。わたしはずっと眠っています。眠っているけどわかります。朝になると瞼が少しずつピンクになって、白くなって、白い時間がずーと続いたあとに、だんだんオレンジ色というやつになって、紫が来て、また、暗くなります。眠っていま
2021年3月23日 20:07
#4 「ここちゃんもういない」僕の部屋にパンジーみたいな青色のソファが来た日、ここちゃんは不思議な形の目をキョロキョロさせながら、異物を飲み込んでしまった時みたいなバツの悪い顔をしていた。荷解きを済ませてテーブル前に置いた青いソファはやっぱり少し派手だけれど、ここちゃんが並ぶとその色調は丁度良く思えた。でも何故か、ここちゃんの表情はすこしも変わらなかった。「ここちゃん専用のソファが出来たよ」
2021年3月20日 21:04
#3 「ソファを買って、ここをわたしの住処にするから」ここちゃんは高いところと床が異様に好きだ。初めて家についてきた日、クッションの幾つか敷かれたテーブルへ案内しようとすると、キッチンとリビングのちょうど真ん中らへんで、ぺたんと座り込んでしまった。まるで陣地を確保した獣のように。それからは、そこが定位置になっている。ここちゃんが居ない時も、ここちゃんがいつも座るところだけほの暖かいような気がして
2021年3月19日 21:28
#2 「おいしくないから置いとくね」ここちゃんは本当によくわからないし、気難しい。僕の家の本棚を片っ端から引っ張り出しては、ちぐはぐに場所を変えたりする。いつも使っているマグカップのひとつが急に消えて、どこを探しても見つからず、次の朝ベランダに出たら植木鉢になっていた事もあった。そこには小さな青いパンジーが植えられていた。こんなの、ここちゃんしかやらないよ。それと、「あったかいぎゅうにゅう」が好
2021年3月18日 20:42
#1 「ここちゃん」ここちゃんはよくわからないし、気難しい。名前をこころと名乗る彼女は、近所の行きつけの喫茶にいつも居て、気がつくと僕の傍らに居た。「血液型は」「しらない」「何座ですか」「蟹座か乙女座」「蟹座と乙女座はとっても離れているけど」「そうだね」「じゃあ好きな食べ物は」「あったかいぎゅうにゅう」ここちゃんとのはじめての会話はこれだけだった。窓際の席でプリンをほじ