【002】息子
もうすぐ21歳になる。
東京に行ってからはもうすぐ2年が経つ。
引っ越しの時も、
息子の部屋に掃除しに行った時も、
帰省してまた東京へ行ってしまった時も、
私の心には穴が空いた。
がらんとした息子の部屋に
半年以上入ることが出来なかった。
時折、息子の気配を感じた様な気がして
胸を押さえて堪えたことも、
駅まで送った帰りの車の中で、
我慢するのは辞めにして、
おいおいと泣いたこともあった。
ついこの間、
息子がふらりと帰ってきて、
「もう帰って来ようかな…」
なんて弱音を吐いた。
2日ほどして「もう帰るわ。」と言う。
それは「東京に帰る」だった。
私は「そっか。」と言って、
いつものように車で駅に送った。
息子の乗ったバスが静かに動き出した。
ひとりで帰る車の中で、
やっぱり泣いた。
「なんでこんに寂しいんやろ。」
そう呟いたら、
勝手に言葉が飛び出した。
「だってこんに好きなんやもん。」
ハンドルを握る手も大笑い。
私は何度も
「なんやー好きやでかー!」と叫んだ。
そしたらやっと、
やっとやっと、
心から笑えた気がした。