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変態的美術館 第六話


皆がワインを一口飲みグラスを置いた
タイミングで私は


「次は私の番ね」
と言って自己紹介を始めた。


「吉田香織です。30歳です。
仕事はアートギャラリーに勤めてます。
趣味は読書と美術館巡りです。よろしく」


と簡単に自分という人間を紹介した。


健一はそんな事知っていると言わんばかりの
我が物顔でワインを飲みながら私の自己紹介を聞いていた。


テオは両肘をテーブルに付け前のめり風な姿勢でいた。


麗華はどうでもいいという様な態度だった。




「仕事もそっち系なんだ。香織さん本当にアートが好きなんだね。」
とテオは微笑んで言った。

美しい顔立ちをしているテオの笑った顔に思わず
見惚れてしまい、
私は心ここに在らずで「ええ」とだけ返事をした。




そして次は健一の番になった。



「中村健一です。26歳です。外資系証券マンです。趣味はゴルフとゲームです。よろしく。」


私は健一の自己紹介などどうでもよかった。
趣味も話も何一つ合わないこの男は
言い方は悪いが、私にとって都合の良い時
様々な欲を満たしてくれる、飲み過ぎた時に連絡をすれば迎えに来てくれる
都合のいい人だった。
今日もそれで来てくれたのだ。

それを知りながらも健一の方は私が好きだと言うがモテる彼の事だからいろんな女性に言っているだろうというのが健一の性格だ。


  健一の自己紹介が終わると麗華が

「まあ、ゴルなさるのね。スコアはどのくらいで周るのかしら?」
と香織の自己紹介のときとはうって変わり興味を持った。


「大体100前後で周ります。」

「充分だわ。今度ご一緒にいかが?貴方は会社の同僚、私はお友達を
   連れて行くわ。」

とワインを飲みながら言った。

「麗華ちゃんはどのくらい?」と健一は話を広げた。




テオはゴルフをしないらしく、話に入ろうとしなかった。
私もゴルフをしないので話に入らないでいると、
その間テオは私の方みて微笑んでくれたので私はドキッとして思わずワインをガブリと飲んだ。

そんな動揺した香織からもテオは目を離さなかった。


私の動揺が収まると私達は
今日の美術館での出来事と絵の感想を述べ合った

「あの時、何でオペラグラスを貸してくれたの?」
と私は聞いた。


「今日美術館に入った時、香織さんを見て
“なんて綺麗な人なんだ”と思ったんだよ。
そして絵の順番的に香織さんの後ろから
付いて行くという形になったわけだけど、
絵より香織さんに目がいってしまって、、」


私は嬉し恥ずかしで顔を赤らめ、またワインを
口に近付けた。

「そしてね、香織さんあまりにも絵と顔が近過ぎて、
もしかして目が悪いのかと思い
“これは話しかけるチャンスだ”
と思って思い切って声をかけてみたんだ。」


私は以前からテオを見かけた事がある事を伝えて
「貴方もその事に気付いてた?」
と聞いてみると、


「え!そうなの!?
僕たち同じ展覧会に行くなんて趣味が合うね。
しかもやってる期間も長いのに同じ日に行くなんて凄い偶然がいくつもあったんだね、
今日思い切って声を掛けてよかった。
しかも行きつけのレストランまで同じで
いまこうやってワインを飲んでるのが不思議で嬉しいよ。」


とチラッと佐々木さんにウィンクをした。
佐々木さんは親指でグッドポーズを見せた。


私は「私も不思議で嬉しい」
と答えて、今度は四人ではなく二人の出会いに乾杯をした。


麗華と健一は二人で話ながらも香織とテオが気になるらしく、
横目でチラチラと見ているのが香織にはわかった。







「差し支えなければ、二人はどういう関係なの?」

飲んでいたワインを置いてテオが聞いた。

その一言にカウンターに居た佐々木さんもチラッとこちらを見た。

「あ〜っっと、、、、、」



私は返事に困った。
なんと言おうか、

 
テオに健一との関係を知られたくなかった。


そんな隠したがる私をみて健一は少しムッとした表情を見せて

「大人の関係です」
と答えた。

「ヘェ〜、それってどんな関係かな?」
とテオは笑みを浮かべ意地悪そうに聞いた。

馬鹿にされてると思った健一は
次の様な、なんとも馬鹿らしく幼稚な発言をした。




「sexをする関係って事。」



一瞬皆少し驚いて目を丸くしたが
すぐに表情を戻した。

佐々木さんも笑いながら次の予約確認の
作業に戻った。

私は呆れて天を仰ぎ長い髪をかきあげた。

他にお客が居なくて良かったと心から思った。


何て馬鹿らしい発言なのだろう。
こんなオブラートに包まず堂々と言う者がいるだろうか。
まるでティーンエイジャーの子供の様な発言だ。

私はこんな子供が連れというのが心底恥ずかしかった。

それを聞いてもテオは
「そう」
と笑ってワイン飲みながら
言った。


テオの態度に、健一とは違った大人な余裕が私はまた惹かれてしまった。
まるでそんな事は分かっているがどうでもいいといった態度だった。


それと真逆に
嫉妬心から発言してしまう健一の幼稚な行動は
一層私を健一から遠ざけた。


健一は思いがけないテオの態度に腑におちず
残りのワインを飲み干して自分でワインを注いだ。



そして自分で言っておいたにもかかわらず
「sex」と言う言葉に誰よりも動揺した。


 



麗華はこの一連の流れを見て鼻で笑いながら
ワインを飲んでいた。




二人がそういう関係ならテオも
香織には行かないだろうと言わんばかりの余裕の顔だった。




だがテオは違った。



この二人の関係を聞いてさらに香織の事を
魅力的的に思うのだった。





To be Continued....




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