もう随分前にリリースされた曲だけど、未だに聴き続けている。僕はもともとフレシノのファンで、今年リリースされた楽曲は全て聴いている。その中でもこの曲が一番好きだ。フレシノの楽曲に込められたジリジリとした緊迫感が、僕の心を突き動かすのだ。
今回の曲はハナレグミとタッグを組んでいる。楽曲の前半部分ではハナレグミの歌唱の良さが存分に発揮されている。ゆったりとしたテンポでうたわれるほのぼのとした歌詞、山下達郎を彷彿とさせるコーラスも心地よい。全体的に多幸感溢れる音像で、海辺でバカンスを過ごしているような、濃密な時間の流れを感じる楽曲だ。ヒップホップとは思えないほど脱力感ある曲なのだが、かといって締まりがないわけではなく、石若駿が叩く小気味良いドラムが楽曲に躍動感を与えている。
そんな「ヒップホップらしくない」楽曲だが、フレシノのラップが入ることで様相が変わってくる。楽曲のムードが一変するというより、独特の緊迫感が楽曲を徐々に襲うのだ。安穏とした日々を送っていても、覆い隠せない切迫した感情があることを、フレシノのラップは思い出させる。
アルバル『20, Stop it.』収録曲『No Sun』を聞いていても感じたが、フレシノの日常や生活の描写には、何か思い詰めた、張り詰めたものを感じる。どこか生き急いでいるような焦燥感を。
例えばこのあたり。
じわじわと真綿で首を締めるような焦燥感がフレシノのリリックにはある。放っておくとどこか遠いところに旅立ってしまいそうな危ない速さがあるのだ。
今回、『that place is burning 』を聞いていても、やはり独特の危うさを感じた。彼のラップは速い。速すぎる。それは単に早口でラップしているからではない。身を焦がすような焦燥感を曲から感じるからだ。
この曲を聴いていると、宮沢賢治『よだかの星』に出てくるよだかを思い出す。
後半ますます加速していくラップは、夜空に向かって身体を燃やしながら飛んでいくよだかのようだ。
ハナレグミが甘美な声で最後の歌詞を歌い上げたとき、フレシノのリリックは星になったのだ。
(この曲の和訳は音さんのこの記事を参考にしました。是非こちらの記事も読みながら、この曲を聴いてもらえたらと思います。)