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堆肥考 その4 元堆肥製造業者のおっちゃんにインタビュー

元堆肥製造業者のおっちゃん登場


 というわけで、またまた畑の片隅にあるトタン板で仕切ったゴミ捨て場で作業をしながら堆肥について考えてみましたの続きです。今日は私が以前に知り合いの元堆肥製造業者のおっちゃんにインタビューして、直接アドバイスをいただいた時の会話を思い返して書いてみます。

私「おっちゃん、今日はありがと。早速やけど実際に雑草堆肥作るときは、      どんな手順でやるんやろ?」

お「先ず機械で2㎝くらいに草をカットして、水まきながら積むわけや。」

私「え、2㎝?そんなに短こうせんならんの?」

お「そうや。草は繊維が長いほど分解に時間がかかるでな。」

私「じゃ、草の種類によっても発酵具合は変わるんかな?」

お「もちろんや。丸い葉っぱのマメ科の植物や、イネ科でも柔らかい草は速
 い。せやけどマメ科でも葛のツルは時間がかかって手強かったな。」

私「なるほど。で、積むのは屋根のあるところ?」

お「おう。乾燥させすぎてもあかんし、雨で水分量が多くなってもあかんの
 よ。温度も下がるしな。時々ホースで水まいて水分調整したり、場合によ
 ってはビニルシートかけたりはしたな。」

私「水分量の目安は大体60%らしいけど、どうやって見極めるんやろか?」

お「そりゃ、手ざわりよ。しっとりしててちょうどええ具合ちゅうもんが、
 長いことやってると何となくわかるようになる。」

私「ほー、熟練の技やな。じゃ、切り返しはどうしてたん?」

お「切り返しはホイルローダーで毎日やるで。とにかく量が多いし、混ぜん
 ことには発酵が均等に進まん。」

私「毎日切り返し?そりゃ大変やなあ。発酵促進剤とか菌資材とか米ぬかと 
 か油かすとか撒いたりはせんの?」

お「あはは、そんなもん入れたことことないがな。菌なんか目に見えんだけ
 で草についとるし、空気中にもいっぱいおるんや。アイツらは強いでえ。
 毎日切り返してるだけで勝手に発酵して、温度上がってすごい湯気や。そ
 れにな、余計なもん入れると全体の成分の中で窒素分だけが上がったりし
 て堆肥の成分バランスが崩れるやろ?検品の時に成分分析で引っかかるん
 や。そっちのほうがかなわんて。」

私「じゃ、土かけたりもせんのか?ネットには土着菌の力を借りるために畑
 の土かけるとええてあちこちに書いたるんやけど。」

お「あほらし。なんで土なんか混ぜるんや?土でかさ増しするんか?世間の
 人はようわからんことしよるな。」

私「いやいや、かさ増しやないんやけどな。それで完熟するのにざっと何日 
 くらいかかるんやろ?」

お「さっきも言うたように材料にする草の種類にもよるけどよ、夏場の気温
 の高い時期やとほぼ45日で完熟するな。」

 おっちゃんは大規模に雑草堆肥を作る工場を経営されていた方なので、このインタビューでおっしゃっていることが畑の片隅の堆肥枠で小規模な雑草堆肥を積む際にすべて当てはまるとも思えません。そこで、私なりに参考になりそうなことだけをチョイスしてをまとめてみると、発酵の3つのステージ『糖分解期』『セルロース分解期』『リグニン分解期』(前エントリ参照)を通して人間ができる手助けは順に次の通りでしょうか。

  1. 『雑草の繊維をできるだけ短く切って細胞壁を壊す』

  2. 『好気性菌が活躍できるようにふんわりと積む』

  3. 『水をかけて水分量を60%前後に調整する』

  4. 『ビニルシートで覆って保温と保湿をし、雨水の流入と直射日光(紫外線)による菌の死滅を防ぐ』

  5. 『こまめに切り返す』

 つまりこれ以外のことは全て好気発酵のじゃまになるということです。例えばネットに書いてあった「枠内に積んだ草を足で踏み固める」ことは、空気と触れる隙間を少なくして嫌気発酵を促してしまう可能性があります。好気発酵を促するなら、できるだけふんわりと積んで切り返し、材料をできるだけ空気に触れさせねばなりません。

 また、ネットで集めた様々な情報は、積んだ雑草を最後にビニルシートで「覆う派」と「覆わない派」に大きく分かれていました。私的には雨水の流入を防いで適正な湿度を保つとともに保温効果もあるのでビニルシートで覆うことは大切だと考えます。SNSの書き込みには「雨水が流入し、水分過多になって雑草が腐敗してヘドロのようになった」という失敗例が散見されますし、糖分解期やセルロース分解期に温度が下がると発酵がうまく進みません。そして、他ではあまり語られていませんが、何より紫外線の滅菌効果から菌を守るということが大切なのではないでしょうか?

 それから、「土中の微生物の力を借りるために積んだ草を畑の土で覆う」ことは空気を遮断して糖分解期における好気細菌の活動を阻害し、嫌気発酵を促してしまいます。もし土中の微生物の力を借りたいなら、そのタイミングはリグニン分解期に入ってからですが、微生物やミミズなどは餌の匂いを嗅ぎつけて勝手に寄ってきますので、わざわざ土をかけることもないでしょう。
  蛇足ついでに言うなら、多くの方が「ミミズがたくさんいる畑はよい畑」 と信じておられます。たぶんそれもあながち間違いではないでしょう。しかし、ミミズがたくさんいるということはリグニン分解期の未完熟な状態の有機物が土中にたくさんあるということです。したがって作物にとってはあまりよい状態とは言えないのではないでしょうか?

 さて、雑草堆肥作りの手順や注意点について書いてきましたが、ここで思い出すのが近在のばあちゃんたち。ばあちゃんたちはとにかく畑が生きがい。毎日天気さえよければ早朝から畑へ出て、削り鍬でそれこそ舐めるように雑草を取っています。で、ばあちゃんたちは集めた雑草を肥料の空き袋に入れて、一杯になったら口を開けたままでポンッと上下をひっくり返して畑のあちこちに立てて置いていましたっけ。今思うとあの方法は実に理にかなった雑草堆肥の作り方だったわけですね。(^^)

本日の教訓:
発酵させるために人間がよかれと思ってすることは大抵じゃま。

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