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ふしん道楽 vol.8 テーブル

人生で使うダイニングテーブル数って平均すると何台なのだろうか。
というかダイニングテーブルの単位って台で良いのかしら。
脚だとイスになってしまうのか。
それほどまでに数えることになじみのない家具、それがダイニングテーブルだと思う。

自分のダイニングテーブル歴を思い返してみると、幼少期の実家で使っていた物が当然ながらファーストダイニングテーブルだ。
置いただけでキッチキチになるような狭い台所に鎮座していたが、私が小学校に上がって間もなく調味料や炊飯器置き場と変化し始め、気がつけば食事のスペースが無くなっていた。
家族の食卓はこたつへと移動し、昭和の実家によくある「ダイニングテーブル物置化現象」が起きてそのまま使われるようになる事はなかった。

そんなわけで私自身ダイニングテーブルのない少女時代を送ったのだが、特に不便も感じず成長。

その結果何が起きたかというと、大人になって一人、乃至はニ人で暮らすようになっても、ダイニングテーブルを買わずに生活する人間になってしまった。

初めての一人暮らしの部屋は1DK。
とはいえダイニングというより太めの廊下、ぐらいのスペースだったので
テーブルとイスを置く余裕は無い。
このときは部屋にあるちゃぶ台で食事をしていた。
寝る時は畳んで布団を敷き、日中はアシスタントさんの作業机となる多機能さ。
ダイニングテーブル欲しいな、とはつゆほども考えなかった。

その後、何度か引越しをするのだが、その度にソファとソファ用テーブルは買い替えても、一向にダイニングテーブルを買わないまま35歳になってしまった。

ソファに対しては実家になかったこともあり長年の憧れがあった。
そして当時、自分の財力で借りられる部屋には、大きめのソファとダイニングテーブルを両方置くようなスペースがなかった。

どちらか二択となればそれはもう当然ソファしかいらない。
自宅にいる時は大体ゴロゴロしていたいし、仕事場を別にしてからは家で食事をとることがほとんどなかったのでテーブルは不要である。

たまの休日に家で食事をするときは、床に座ってソファ用テーブルをちゃぶ台のように使っていた。
三つ子の魂百までとはよく言ったもので、私はやっと増えてきた収入でおしゃれインテリアをそろえても、暮らし方は実家のままなのであった(かわいそうな話)。

結婚したときにはさすがにソファ以外で食事したいと思ったのだが、そのとき住んでいた家でもダイニングテーブルを置く余裕はない。

一応リビング&ダイニングはあったのだが、その広さにふさわしくないほどの大きなソファを買ってしまったために、またしてもソファ部屋、みたいなことになっていたのだ。
仕方ないので丸いテーブルとイス2脚、というカフェみたいなセットでなんとかすることにした。
それでもソファ用テーブルでする食事と比べると雲泥の差である。
ソファに座らないで背もたれとして使用し、低いコーヒーテーブルに丼を置いてうどんを食べるようなこと、もうしない。
そう思った。

ここにきて初めてダイニングテーブルの快適さ、というものにやっと気がついたのだ。

こう考えると幼少期の家庭環境とは大事なものだと改めて考えさせられる。
ダイニングテーブルなく育った者は、ダイニングテーブルのない暮らしに不自由を感じない。
ソファがなく育った者はソファへの憧れが収まらず、引越しのたびに置き場がないのにもかかわらず、どんどんソファを買ってしまう。
どちらも私のことだけど。

そんなわけで「買うべき家具リスト」にダイニングテーブルがないまま大人になってしまったのだが、35歳で鎌倉に引っ越したとき初めて椅子が4脚あるダイニングセットを購入した。
このときは家に合わせて素朴な木製のものにした。
家が古く、ほかの家具もアンティークが多い。
それでソファやテーブルもアンティークにしてしまうと全体的に古色蒼然としてしまうので、その二つはあっさりとした今風のものにすることでバランスをとることにしたのだ。

そして部屋とのバランスや広さを考えてぴったりのものを選んだのだけど、時にはニ人して資料を広げテーブルで仕事をすることもある自分たちには小さすぎてしまった。
部屋とのバランスだけでなく、生活スタイルに合わせることも重要なのだと気がついた。

次に買うものは大きくしたい。
そう考えて鎌倉から都内に戻ったときは大きめなものを探した。
日本製だと小さいものが多いのでイタリア製にした。
デザインは気に入ってすぐに決まったのだが、そのテーブルは天板と脚がそれぞれ5種類以上あり自分の好みでカスタマイズできるものだった。
悩みに悩んでアイアンの天板と大理石の脚の組み合わせに決めた。
サイズも特注で既存のものより20〜30センチ長くしてもらって大満足。

ただし特注であるために、でき上がって船便で届くのは3〜4ヶ月後とのことであった。
良いですよ、待ちます!待ちますとも。
40歳半ばにして初めて自分たちにぴったりのダイニングテーブルを迎えるのだから!

そこから3ヶ月、テーブルのないリビングで床に座りソファ用テーブルをちゃぶ台のようにしてうどんを食べていたが、なんら問題はなかった。

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