0404_5000円
5000円が一瞬で消えた。
パチンコでもスロットでも、競馬でもボートレースでもない。電子コミックの課金。単行本コミックを買えばそんなに値段はいかないはずなのに、電子コミックで課金して積み上げていくとびっくりするほど高くなって、私は思わず、また課金した。
こんなになんにも考えずにどんどんお金がなくなる。もちろん漫画は楽しいし、この作者は天才だと思って読んでいる。
それと同時に、私が今日、残業した2時間があっという間に消えているとも感じている。2時間が、秒だ。
そんなはずはないのだけど、課金して、無心でコミックを読み進めて行くことで、私の残業が無くなった気になる。残業がなくなったと思うと、まだ大丈夫だと言う気になる。大丈夫なわけないのに。
子どもとの2時間やパートナーとの2時間が消えているのに。それも、楽しく前向きな残業ではなく、ただ神経をすり減らすような、悲しい残業なのに。認めたくなくて、私は課金する。
課金して、読んで、課金する。
残業して、とかして、残業する。
気づいたらあっという間に5000円となっているのだ。
別にいいけど。
残業代をとかしても、私と大切な人たちとの時間が戻るわけがないのに、私は5000円をとかしている。
「おかえりなさーい!」
家につき、子どもたちが出迎えてくれた。
彼らとの2時間は5000円じゃきかないことを痛感する。
私は子どもたちを抱きしめて、今度は課金ではなくチャージする。
すぐに5000円を超えた。
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★著者:あにぃ