8月26日 パパフロの日
ママじゃなきゃイヤ!
そう言われる日々である。
朝起きて、顔を見る度に「やめて」と言われる。別に俺はまだなにもしていないし、何かをするつもりもない。ただ見ているだけでも怒られるのだ。その上で、おはようと言おうものなら泣かれるのだから、もう為すすべなどない。
「でも、お風呂は一緒に入ってくれるんでしょう?」
同僚が聞く。
「そうなんだよね、どういう訳かお風呂は僕でいいって言うんだよ。まあ、もちろん楽しんでもらえるように頑張ってはいるんだけどね」
そうなのだ、我が家の4歳児の娘、なぜかお風呂だけはパパがいいと言う。
「娘ちゃんには聞いてみたの?パパとお風呂がいい理由」
「いや、そう言えば聞いたことないな」
「じゃあ聞いてみなよ。案外、パパが好きって理由かもよ」
そう言われると期待してしまうのが、娘大好きパパである。
よし、と今日も今日とて仕事を切り上げて退社した。できる限り夕食とお風呂は家族で同じ時間を過ごしたいと思い、娘が生まれてからはほとんど定時で帰宅する。ありがたいことにそれでもちゃんと仕事の評価をしてくれるのだから、この会社に勤めていて良かったと思う。
帰り道。妙に緊張していることが自分でもおかしい。軽く聞けばいいだけなのに、どんな風に聞こうかとか、もしこんなことを言われたら、と頭の中でぐるぐる考えているのだ。振り回されすぎである。
念のため、と思いドラッグストアで彼女の好きなバスボールを買っておく。
こういうとこ、弱いんだよなぁ。
「ただいま!」
「あ、おかえりなさい。ちょうど今お風呂沸いたところよ」
妻が出迎えてくれるが、娘の姿はない。リビングに入ると、お気に入りのテレビ番組を見ているようだ。うーん、これではお風呂に誘っても今は入らない可能性が高いなぁ。少し時間をずらすか。などと極力彼女の機嫌のいい時に入りたい(と、言うか聞きたい)のだ。
「楓、パパとお風呂は入っちゃってー」
妻からの先制パンチが入り、私はどうもギクリとする。怒るかな、泣くかなと思いつつおそるおそる彼女を見る。
「はーい!パパお風呂入ろう」
「え、いいの」
娘はテレビを消してこちらに向かってきた。上機嫌なわけでも不機嫌なわけでもなく、普通の表情である。
「ねえ、なんで楓はパパとお風呂に入ってくれるの?」
しまった!思わずここで聞いてしまった。気づいたときはすでに遅い。答えが怖いが、早く聞きたい気持ちもある。娘の表情は、変わらず。
「お風呂はパパと楓の時間だからよ」
「そ、そうなの」
「うん、パパと楓が仲良く遊ぶ時間なの」
良かったのか、どうなのだ。パパが好きだからなどではなく、『そう言う時間だから』と言う回答はいかがなものなのか。
「だから、大事な時間なのよ。早く入ろう」
娘はそう言うと私の手を強く引いた。
お風呂は娘と私の大事な時間らしい。
そうか、それはとても嬉しい。
今はただその大事な時間を堪能できるだけで十分幸せだと思えば良い。
ただ願わくば、その大事な時間を増やしていきたいものである。
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【今日の記念日】
8月26日 パパフロの日
父親の育児参加の促進を図ることを目的に、パパと子供が一緒にお風呂に入ることを応援しようと、ファミリー向けのシャンプーなども手がける日本を代表する化粧品メーカーの株式会社資生堂が制定。日付は8と26でパパとお風呂に入る「パパ(8)フ(2)ロ(6)」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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